GRAPEVINE、攻めと安定を組み合わせた絶妙なライブに 『Almost there』携えたツアー東京公演
「とまあ、こういうアルバムが出ております。『Almost there』絶賛発売中でございます。こないだは新宿、今日は渋谷。東京を満喫してますね。11月にも“空港の方”で何かあったり、12月にはまた何かこの街でやったりします。12月、違う? 何も把握してしてないね私」と観客に助けられたユルいMCで田中が言わんとしていたのは11月28日のZepp Haneda(Tokyo)でのマカロニえんぴつとの対バン、11月7日のSpotify O-EASTでのACIDMANとの対バン。どちらも興味をそそられる顔合わせだ。そして「宴もたけなわでございますが、膨大なレパートリーの中から7億曲やります、長丁場よろしく」と八百屋のおっちゃんのようなMCで後半に突入した。カントリー風味の「片側一車線の夢」にダイナミックな「I must be high」が続くと歓声や指笛も飛び、オーディエンスの熱気も高まっていく。
ほぐれた空気の中で田中が右を向き、両手を突き出すようなポーズをとると客席が騒めいた。そしてイントロに乗せて田中は「火事と喧嘩は……江戸の華」などとセリフめいた独白をして歌に入った。珍しい導入で始まったのは「実はもう熟れ」だ。80年代風のダンサブルなナンバーをGRAPEVINEがやるとこうなる、という曲だが、歌詞にはいろいろなギミックが仕掛けられている。それがどこまで伝わっているのか探るように歌っている田中は実に楽しそうだ。最後にまたポーズを決めると客席からは笑いが起こった。ということは田中の意図したことは伝わっているのだろう。
この曲に続いたのは「それは永遠」。前曲のバブルな夢から現実に戻った気分になったが、歌詞の〈未完成だった少年〉が〈油性マジックで塗り潰した〉のは「実はもう熟れ」で見た人だったのではなかろうか。アルバムと曲順が変わると違った景色が見えた気がした。そんな妄想を振り払ったのは「Glare」。どっしりしたドラムで始まりギターだけで歌い出す得意なスタイルで、攻めた曲と安心感を与える曲との振れ幅に翻弄されるのも小気味いい。と思っていたら「よっしゃ、今日も超えていくか!」と田中が声をかけたのは「超える」。この曲になったらアガるだけだ。
「どうもありがとう! あと1億曲だけやって帰るぜ! Are you ready? Are you ready to get started?」と曲名に絡めたMCで本編最後の曲に突入した。最初の一言からこの「Ready to get started?」まで繋がっていたのかと気づいた時には、もうパワフルな曲に引き込まれていた。軽快なロックナンバーは、結成30年を迎えても苔生さず新たなチャレンジを重ね転がる石であり続ける彼らを表しているかのようだ。間奏では田中と西川が向き合ってギターリフを重ね、後半ではそれぞれ前に進み出てオーディエンスの声援に応えた。「どうもありがとう、東京・渋谷! ありがとさーん!」と田中が叫んで最後を締め、5人が順次ステージを降りる中で、珍しく西川がピックを投げると客席が沸いた。
アンコールは「Era」「光について」「B.D.S.」とライブでは定番の3曲。新作の攻めた楽曲の面白さとGRAPEVINEらしい安定の曲をうまく組み合わせた絶妙のライブだった。9月のライブと似ているようで全く違うGRAPEVINEを見た思いがする。30年の歴史があればこその起伏に富んだ流れを生かしたライブに、このバンドの懐の深さを実感した夜だった。
※1:https://realsound.jp/2023/09/post-1446122.html
■公演情報
〈SOMETHING SPECIAL〉GRAPEVINE x ZION
12月6日(水)梅田クラブクアトロ DOOR 18:00 / SHOW 19:00
12月7日(木)名古屋クラブクアトロ DOOR 18:00 / SHOW19:00
一般発売 :11月11日(土)
チケット:スタンディング5,500円(税込)
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