齊藤京子、山下美月……「アイドル×不倫ドラマ」の流行 “違反”を犯すギャップが魅力に

 日向坂46 齊藤京子が初の単独主演をつとめるドラマ『泥濘の食卓』(テレビ朝日系)への注目度がじわじわと上がってきている。

 同ドラマは、妻子のあるバイト先の店長・那須川夏生(吉沢悠)と不倫関係に陥る主人公・捻木深愛(齊藤京子)の姿を描く物語。しかも深愛は、単に不倫するだけにとどまらなくなる。店長の妻や息子にも接触を図る(それには深愛なりの理由があるのだが)など、想いあまって相手の家族に寄生=パラサイト不倫するのだ。

 齊藤は、自身が出演する番組『キョコロヒー』(9月4日放送回/テレビ朝日系)で「不倫ドラマというよりは、すごく純粋な純愛ドラマです」とアピールした。それでも現役のトップアイドルが、役設定とは言え不倫愛に溺れ、その愛がエスカレートして狂気性を帯びていく女性を演じることに、ファンを中心にさまざまな反応があった。

ルールに縛られたアイドルが不倫という“違反”を犯すおもしろさ

 2021年放送『サレタガワのブルー』(2021年/MBS)では元乃木坂46の堀未央奈が不倫する女性に扮した。両者ともグループ卒業から間もない時期で、まだまだアイドルとしてのイメージが強く残っているタイミングでの「不倫モノ」への出演とあって、ファンをはじめとする視聴者に新鮮さと驚きを与えた。

 ほかにも、2021年放送のドラマ『じゃない方の彼女』(テレビ東京)では乃木坂46の山下美月が劇中で既婚の大学教授を不倫沼へと引きずりこみ、行定勲監督がメガホンをとったオムニバス映画の一編『どこから来て、どこへ帰るの』(2022年)ではBiSH(当時)のセントチヒロ・チッチが物語のなかで許されない愛に浸った。

 アイドルが演技に挑戦する際の登竜門的作品は、これまでホラー映画が定番だった。なぜホラー映画が適当なのか。よく言われるのは、ステージではキラキラとしているアイドルが、可愛さをかなぐり捨てて恐怖に怯える表情を晒す新鮮さである。また、出演するアイドルに一定数のファンがいることから数字的にもある程度の見込みがつく、という話題性や集客力の影響ももちろんあるだろう。

 しかし、「アイドル×不倫モノ」の一番の狙いは、恋愛を遠ざけて活動しているアイドルの“実情”とのギャップであることに違いない。重要なのは、「恋愛を遠ざけて活動するアイドルが作中で不倫することへの衝撃」だけではなく、「さまざまなルールのもとで活動しているアイドルが、不倫という社会的に違反なことをする」という点である。

 恋愛関係はもちろん、SNSの運用、飲酒や喫煙など、事務所に所属してアイドル活動を行う上で一定の制限がかかることも少なくない。そういったアイドル活動におけるルールは、仕事に従事する者だけではなく、ファンや世間にも認知されているケースも多々あり、アイドルは恋愛から遠い存在というパブリックイメージはいまだに根強く残っているのではないか。だからこそ、役ではあるがアイドルが不倫という大きなルール違反を犯す様子がショッキングに映り、「普段は異性の影を感じさせないアイドルが恋愛をしている」というギャップも作品としての面白さに繋がるのだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる