King & Prince、5年の軌跡を背負ったふたりが伝えた覚悟と希望 再出発のツアーを観て

 レーザーが飛び交うなかでのDance Interを挟み、「CHASE IT DOWN」で上がった炎。ロックチューンに乗せて激しく踊るなか、永瀬の抜け感のあるダンスパフォーマンスが音楽に組み込まれた繊細な緩急をより明確にしていく。この曲の最後のサビを前にした一瞬、永瀬と髙橋はそれぞれの掌を低い位置で相手へと重ね合わせた。本当に一瞬だった。だけれど、力強さのある、そして何よりもふたりの強い友情を感じた一瞬だった。続けて「ichiban」へと繋げる。HIPHOPビートを背負いながら、髙橋は初っ端からアドリブを入れ込む。笑顔がどんどん弾けていく。

 ハードなパートを終えるとオルゴールの音色がバックに流れ、迎えた最後の挨拶。まずは髙橋がステージへと現われた。息はまだ少し上がっている様子だった。だが、そのまま今回のツアーに込めたメッセージを順番に紐解き、気持ちを伝えていく。「観終わったあとに、純粋に『楽しかったね!』って笑顔で、ピースな気持ちで帰れるように」、そう願いながら作り上げ、「笑顔でいてくれるのって全然当たり前じゃない」という気づきを経て、「いろいろな気持ちを抱えて、いっぱい戦ってくれたと思う」と語りかける。この日、同じ場所で同じ時間を共有するという選択をしてくれたことへの感謝を続け(「包容力のある女性たちだなって思いました」とその言葉選びは独特だったが)、「ここにいる覚悟と、これからもみんなといろいろな景色を見たいっていう気持ちと、廉とふたりでもっともっとキンプリというエンターテインメントを楽しんでもらいたいという気持ちは誰にも負けるつもりはない」――そう言い切ったのだった。

 永瀬もゆっくりと語り始める。この一年間の激動を通して与えた多くの不安を自覚し、それと向き合ってきた彼のまっすぐな姿勢が、その言葉からは伝わる。「5月からKing & Princeは新しい形として再出発したけれど、この5年の歴史もしっかり背負いつつ、僕たちふたりはKing & Princeとして活動していくと決断をした」のだと言う。その理由は、「どうしたらいいかわからなくなった時に、その道の先を照らす光になりたい」と彼が語った通りだと思う。そして、「自分には海人がおるし、海人には僕がいるし、そして僕たちには皆さんがいるので、これ以上に心強いものはない」とも。想いを伝え、長く深くお辞儀をしたふたり。その後の「Happy ever after」で、永瀬は〈百年先も「ありがとう」〉と長く歌い叫んだ。全身全霊の声だったと思う。

 本編最後は、「シンデレラガール」。この曲は、〈I wanna always be your sunshine〉〈Always makes me happy!!〉と、先ほどメンバーが口にしたのと同じ意味の言葉がメロディに乗って歌われ、〈I wanna always be your King & Prince〉――「ボクはいつでもキミのKing & Princeでありたい」という言葉で終わる。ファルセットで静かに、だけれどしっかりとした意志を宿した声。この歌は、この日、このツアーにおいて覚悟の一曲でもあった。

 アンコールを求める手拍子で、もう一度ステージに帰ってきたふたりは「なにもの」を歌った。いちばん感動的だったのは、「シンデレラガール」で歌われたメッセージの精度、その先の新たな出発の歌として「なにもの」という覚悟の結晶が歌われたということだ。このツアーを通して彼らが伝えたいこと、伝えなくてはいけなかったことは、ひとことで言うのであれば、きっとそれは「King & Princeとして歩いていく」という覚悟を見せることだったのだと思う。自分たちの軌跡すべてを肯定し、ラブソングたちを正しく意味が共有できるように配置し、歌い、汗を流しながらステージに立ち、一曲一曲を大事に歌い踊り届けること。それはつまり、ふたりにとって覚悟の2時間10分だったのだ。

 今だけを突き進むKing & Princeの姿と、永瀬廉と髙橋海人の覚悟を目撃できたことは、とても幸せなことなのだと思う。楽曲に込められたメッセージと積み重ねられてきた物語がツアーを通して何度も最大化され、重なっていくことに我々は慣れてしまいがちだけれど、King & Princeがこのツアーで駆けていく全24公演、そのすべてが本当に奇跡的な、非常に貴重な時間だ。きっと何年か経った時に、ふたりのあの目を思い出す気がする。強烈なドキュメントでもあり、ずっと近くで彼らの息遣いと心の温度が伝わってくる、何よりも愛おしいツアーなのだと、あらためて思う。これまでの道とこれからの希望が刻まれた、忘れがたい時間だった。

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