ラッパ我リヤ、6年ぶりアルバム『CHALLENGER』に至るまで キャリアを重ねた今、制作に向き合うスタンス
「Challenge」という言葉を掲げてもう一度戦いたい
ーーそれは客演との関係性もそうですね。今回だと、例えばR-指定さんは紛れもないニュースターだと思うし。
Mr.Q:「ヤバスギルスキル11」に参加してくた3人は、我リヤの曲のタイトルや歌詞を織り込んでくれて。我リヤが彼らに与えた影響を歌詞にしてくれたのはすごく嬉しかった。
山田マン:「SCREAM feat. 木村昴」に参加してくれた木村昴さんは、(ラッパ我リヤが楽曲提供で参加した)『ヒプノシスマイク』で知り合ったんですよね。
Mr.Q:「へ〜、ラッパーとして渋谷VUENOSでラップやってたんだ」とか彼のキャリアを知ったり、単純に彼と話すことも面白いし、人間としての魅力が大きいんですよね。だから一緒にやれたら素敵だなとずっと思ってて。彼は10代の頃から声優として活躍してるけど、同時にめちゃくちゃラップが好きだから、「今回は一番韻を踏んでる曲にしたい」という話をして。そうしたら本当に誰も踏んでない韻の踏み方やワードをチョイスしてきたから「いけるね〜昴! ありがとう!」って。
ーーフックでの歓声のSEも含め、ライブで盛り上がる一曲になるでしょうね。
Mr.Q:コロナ禍以降のライブは、「盛り上がる」という剣が抜けなかったと思うんだけど、抜けるようになったんなら抜いて、寸止めじゃなく盛り上がりましょうか! という感じですよね。昴くんとの曲はそういう曲になったと思う。
DJ TOSHI:お客さんからのレスポンスがないと、その場の空気感が変わっちゃうというか、ライブじゃなくてコンサートっぽい感じになってしまってたと思う。
Mr.Q:そこにフラストレーションも感じてたし、昴くんと一緒にその壁を壊していきたいなって。昴くんのファンにはもちろん、彼の実力を知らない人は「こんなにラップ上手いんだ!」と驚くような内容になったと思いますね。
ーー「情熱だけが燃料の蒸気機関車 feat. 般若」は般若さんとのコラボですが、2003年リリースの『RG A.I.R. 4th』収録の「Hardcore feat. 般若 & DJ Turbo」以来、20年ぶりの顔合わせになりますね。
Mr.Q:結局、熱いものが生き残るんだろうなと思うんですよね。分厚い氷の壁が眼の前にあるんだったら、それは情熱の熱さで溶かすしかない。それで、般若くんとも「情熱」をテーマにして。タイトル通り、俺たちには情熱だけしか燃料がないんですよ。そして、それは決してお金で買えないもの。だから、情熱という感情はとんでもないものなんだ、というのを形にしたかったんですよね。今回の客演陣はとにかく忙しい人達ばっかりだったけど、そんな4組をこのアルバムにコンパイルできたのは本当に嬉しい。
DJ TOSHI:どの客演曲も、客演の人たちのパワーと俺たちのパワーがプラスされることによって、すごく大きなモノになっていったと思う。今回はそれが特に感じられるんじゃないかと。
ーーこのインタビューでの発言もそうですが、アルバムでも「壁」という言葉が印象的に使われています。その意味でも「壁」を感じることがある?
Mr.Q:Dragon Ash「Deep Impact feat.Rappagariya」でラップした〈いよいよ壁は無くなるぞ〉という言葉を、今回の「SCREAM」でDJ ARTSにスクラッチしてもらったんですけど、ずっとそう言ってきたように壁は壊していきたいし、これまでにもたくさんの壁をぶっ壊してきたと思う。一方で壁なんて何百個もあるんだなと改めて感じることも少なくないし、その中でもいまは特に世代間の壁はぶっ壊さないとなって。やっぱり『POP YOURS』とか『colors』『THE HOPE』あたりを見ると、単純に「うわ、出てえな〜❣️」って思うんですよね。「CODE NAME」で〈踏ん反り帰ってるだけのパイセンなんてだせー〉とラップしてるように、俺たちはキャリアを重ねても汗かいて現場を盛り上げるほうがいいでしょ? って思うんですよね。(『ドラゴンボール』の)亀仙人みたいなもんで、還暦過ぎてるのにスケベでニヤニヤしてて、でも「天下一武道会」に出ても超強いみたいな。そういう存在でありたいんですよね。だからMCバトルも出てるし。鈍ってたらジジイだとか思われるのかもしれないけど、俺は普通に20代の奴らなんかとも話してるしね、意識的にw あのオッサン出て来たら強えしな、キッツイな〜とか、言われるぐらいなら熱いし、強くあり続けたい。
ーーその言葉は30年という積み重ねがあるからこそ、説得力が生まれると思います。
Mr.Q:これまで当たり前だと思ってたことは、全然当たり前じゃなかったし、打ちのめされていろんなことを考えながら、一人泣いた夜も、逆に超ブチ切れた夜もあるし、今作はそういう色んな感情が入ったと思いますね。強くないと人に優しくなれないし、自分が弱い時は不満も多い。そういう自分を知ったからこそ「こういう人は格好いいな」と思えるような存在に向かう道中なんだと思う。
ーー30年というキャリアを我リヤは重ねましたが、同時期に活躍していたアーティストも少なくなり、世代交代はこれまで以上に速いスピードで進んでいます。それでもラップを、DJを、トラックメイクを、作品を作り続けるモチベーションは言葉にするとどういった部分になるでしょうか?
DJ TOSHI:良くも悪くも諦めが悪いから。自分はそこですね。「こうなりたい」という願望だったり、「こうなれていない」という渇望感があるから続けてる。それにやっぱ根本的にはヒップホップが好きだから続けてると思いますね。
Mr.Q:俺らは今年『FUJI ROCK FESTIVAL '23』に出たんだけど、矢沢永吉さんのステージを見つけて、衝撃を受けたんですよね。矢沢さんは「今年74になるけど、(年上の)ミック・ジャガーにできて、矢沢にできないわけないんだから、俺はずっと歌い続ける、ロックし続ける」と話していて、改めてすごい存在がいるんだなと。俺たちも憧れがあるし、まだそこに到達してないという気持ちがあるから、もがき続けて、動き続けるしかない。ただ、俺たちは右肩上がりでキャリアを伸ばしたわけじゃなくて、波がすごくあるんですよ。調子のいい時期はすげえ盛り上がって、すげえモテたし、お金もいっぱい持ってた。でも、あれがピークでいいのかよ、昔はよかったなと思って死んでいくのはダセーなという、自分との戦いが音楽を続ける理由だし、そのさまが面白いと思いますね。そういう意味で、このカルチャーにすがりながら、しがみつきながら生きてるけど、そこで「Challenge」という言葉を掲げてもう一度戦いたい。
山田マン:俺はあんまりモチベーションとか気にしてなくて、MPCやDTMソフトを立ち上げて、ビートを作るのは日常だし、そこで「お! やべーのができた!」「すごいリリックが書けた!」という驚きだけがモチベーションというか。そういうものを作れれば自分の中で自信になるし、その繰り返しで進んでるんだと思います。
DJ TOSHI:その高揚感を感じたくて制作してる部分はあるよね。
山田マン:狙い通りになにかを作って、その通りに形にできたことはないし、狙いからズレたり、外れた部分がオリジナリティやパワーになると思うんですよね。「なんじゃこりゃ!」みたいな、自分でも驚くことを続けるのが、制作欲求だと思う。
Mr.Q:それは一貫してそうかもしれない。だからこそ長く続けられるんだろうなって。常に挑戦だと思うし、結局一生納得しない、満足しないままかもしれないけど、それでもこの道がどこに行き着いてるのかを、楽しみにしたい。こないだも『RUSH BALL』にDragon Ashとの「Deep Impact」でトリで出たんだけど、やっぱりあの光景を体感するとかなり熱くなるし、いまの自分たちでどこまで行けるのか、挑戦していきたい。過去最高に自分はラップがうまくなってると思うし、そこに自信はあるんだけど、それがどこまで届くのか、反応されるのか、売れるのか……「まだ続けるんだ」と思う人もいるかもしれないけど、そうやって舐めてたら足をすくわれるようなアルバムになったと思います。今回の俺たちは重心が低いですよ。だから、倒れないし、倒されない。
■リリース情報
New Album『CHALLENGER』
2023年10月18日OUT
<収録曲>
1. CODE NAME
2. やったもんガチ
3. TATSUJIN
4. 次は誰だ
5. SCREAM feat. 木村昴 ☆リードソング
6. ENERGY SONG
7. この道ひとすじ
8. 情熱だけが燃料の蒸気機関車 feat. 般若
9. ヤバスギルスキル11 feat. R-指定, KZ, KBD from 梅田サイファー
10. 挑む
11. 満塁ホーマー
12. 三銃士
13. Challenger feat. Spinna B-ILL
14. 糸トンボ
15. ARIGATO
品番: VCCM-2125
価格: 3,300円(税込)
■関連リンク
作品ページ:https://www.msrecord.co.jp/rappagariya/
楽曲視聴リンク:https://linkco.re/bzeV7F04
ラッパ我リヤ「SCREAM feat. 木村昴」【Music Video】:https://youtu.be/XKMjNt84rVw?feature=shared