山下達郎と中野サンプラザ、矢沢永吉・THE YELLOW MONKEYと武道館……アーティストにとっての“聖地”としてのライブ会場

 最後に日本武道館よりさらに長い歴史を持つライブ会場を取り上げたい。今年100周年を迎える日比谷野外大音楽堂である。「野音」として親しまれる、都内ではめずらしい野外ライブ会場だ。野音は、キャロルの解散コンサートやキャンディーズの解散宣言、日本のヒップホップシーンの歴史に残るイベント『さんピンCAMP』など、音楽ジャンルを超えて数々の伝説を刻んできた。そして、この野音を「聖地」とするアーティストとして取り上げたいのは、エレファントカシマシである。今年10月に開催されたライブをもって33回目の野音公演となった彼ら。1990年に初めて単独で野音のステージに立ってからほぼ毎年、同会場でライブを行ってきており、彼らにとってはまさにホームグラウンドであり「聖地」といえるだろう。エレファントカシマシによる野音ライブの伝説は多々あるものの、最も印象に残っているエピソードは、2012年のライブだ。同年、宮本浩次の急性感音難聴発症により、予定されていたエレファントカシマシの野音公演を中止することになった。しかし、本人の強い希望で、弾き語りライブという形で宮本はひとり、野音のステージに上がったのだ。宮本らしい、がむしゃらな姿を「聖地」野音で目にし、その熱量に心を打たれたオーディエンスも多いはずだ。

 このように「聖地」といわれるライブ会場。ライブ会場に染みついたさまざまな思い出が、また新たなライブの糧となり、記憶に焼きつくライブをこれからも生み出していくことだろう。

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