「もう一度みんなの近くに」SOPHIA、観客に“生まれ変わること”を宣言 4時間にわたる『獅子に翼V』に満ちた幸せな空気

SOPHIA、観客に宣言したベクトルの変化

 SOPHIAが10月9日に『SOPHIA LIVE 2023 獅子に翼V』を開催した。

 2022年の活動再開から1年。『獅子に翼』のタイトルを冠する公演が行われるのは長い活動休止期間を経て実に18年ぶり、かつ最後となることが予告されている。今公演の舞台は先日こけら落としが行われたばかりの神奈川・Kアリーナ横浜で、当日には最寄りである横浜駅の雑踏の中に鮮やかなヒマワリが咲き乱れていた。

 扇形に客席が並ぶ会場へと入ると、柔らかなシャンソンがライブの幕開けを待つ。やがて開演時間を過ぎ、幾度もSOPHIAのファンたちを包んできた「愛の賛歌」が降り注げば、2万人の観客からの拍手は雨音の如く深く響いた。

 甘やかな歌声が静かに舞台から去った後には、舞台中央のスクリーンへ若き日のSOPHIAの姿が映し出される。それは1999年、東京・国営昭和記念公園で行われた『獅子に翼』初回公演のステージへ向かう5人を記録したものだ。肩を叩き合い、ファンが待つ舞台へひとりずつ飛び出して行くメンバーたち。そんなかつての己の姿と重なるように、“今”の彼らもスクリーンの裏から姿を現す。最後に登場した松岡充(Vo)は映像の中の若い自分を見上げて少し照れ臭そうに目蓋を細め、20代の己を真似て両腕を広げた。

SOPHIA 松岡充ライブ写真
松岡充(写真=堀卓郎)

「ここに咲くヒマワリたちに贈ります」

 ステージ中央へと歩み出た松岡が放つその一言に観客たちがヒマワリを掲げ、会場は瞬く間に黄金色の花畑と化す。SOPHIAのライブでは定番となっている「ヒマワリ」でのこの光景は、SOPHIAという太陽を追いかけ揺れる花たちが一斉に笑顔を咲かせているようで、何よりも美しいものに映った。

 続けて「Early summer rain」「KURU KURU」を歌い終えると、ここで小さなハプニング。どうやら松岡が腰につけていた機材がメッシュのシャツの網目に引っかかってしまったらしく、外すに外せずシャツを切る破目に。松岡はハサミを入れて何度か調整していたものの、脇のすぐ下までスリットが入った状態では始末が悪く、終いには自らシャツを破り捨ててしまった。その直後、松岡は威勢良く曲名をコールしたものの即座に順番が違うことに気づき、メンバーたちに笑いながらツッコまれる。そんなハプニングもライブならではの楽しさだ。

 今回の公演で特筆すべき所といえば、なんといってもKアリーナ横浜という会場を生かした驚異的な演出力であろう。客席の半分近くの位置までせり出して設置されたライトは数えることを諦めるほどの数があり、360度回転するLEDは摩訶不思議な光景を作る。「せめて未来だけは…」でレーザービームが飛び出した際には、ほとんど拡散も減衰もしない光が視界へ網をかけるSF映画さながらの光景にどよめきが起こった。

SOPHIA ライブ写真
(写真=小松陽祐(ODD JOB LTD.))

 期待の通り音響も素晴らしい。どこかが響きすぎるということはなく、それでいて音色の輪郭がシャープに聞こえる設計は、SOPHIAの調和したグルーヴ感と密度あるサウンドによく似合う。赤松芳朋(Dr)の豊かなビートと黒柳能生(Ba)の躍動するベース、豊田和貴(Gt)の推進力に優れたプレイ、そして都啓一(Key)が作り出す変幻自在のサウンドは溶け合って固く結びつき、客席へ真っ直ぐに飛び出していく。

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