水樹奈々のワンマンライブツアー『animelo presents NANA MIZUKI LIVE PARADE 2023 supported by JOYSOUND』のファイナル公演が、9月3日に東京・有明アリーナにて開催された。7月から9月にかけて全国7会場12公演にわたって繰り広げられてきた本ツアーでは、水樹のワンマンライブとしては約4年ぶりに観客の声出しが解禁。この日、会場へ駆けつけた約1万2000人のファンは、積年の思いを込めた轟音のような大声援でアリーナを埋め尽くした。以下、本公演の模様をレポートする。

　ステージには中世ヨーロッパテイストの飛空艇をモチーフとしたファンタジックなセットが組まれ、舞台前方には開閉式の巨大なLEDが鎮座。これが中央に位置している時はメインスクリーンとして、左右に分割された際にはサブスクリーンとして機能する仕組みだ。開演時刻を迎え、まずこのスクリーンに壮大な世界観のオープニングムービーが映し出される。そしてLEDがモーゼの海割りのごとく開かれると、そこへブラックとピンクのゴシックなコートドレスを身にまとった水樹が颯爽と登場。「気合入れて行くぞ、有明！」の掛け声と共に勇猛果敢なデジタルメタル歌謡「Red Breeze」の演奏が勢いよく始まり、ライブの幕が切って落とされた。

　これを皮切りに、水樹本人が「ぶっ飛ばしてます。すーごいセットリスト」と語った通り「Bring it on！」「Poison Lily」といったヘヴィでアグレッシブな楽曲群がこれでもかと連発されていく。その勢いはとどまることを知らず、「ETERNAL BLAZE」で前半戦クライマックスを迎えるまで一切手を緩めることなく、ハードなアップテンポナンバーのみを畳みかける怒濤の選曲でオーディエンスを熱狂させた。

　なお、バックバンド・Cherry Boysのこの日の編成は、トリプルドラムおよびトリブルギターという、ほかではなかなか見られない布陣を軸とした分厚い10人編成となっており、バックダンサー・team YO-DAの8名も含めると、最大で総勢19名がステージにひしめく大所帯。いかにも水樹らしい“過剰であることの美学”が徹底された陣容で、メインステージ、花道、センターステージを所狭しと駆け巡りながら絢爛たるステージを展開した。

　ライブが中盤に差しかかると、ここでようやく比較的ゆったりとした楽曲のゾーンへ。日替わりの内容で展開されていたアコースティックコーナーでは、スウィングアレンジが施された「哀愁トワイライト」をピアノ、ウッドベース、ドラム、サックスというミニマルな4ピース編成でムーディに披露。MCの際には、“イタルビッチ”こと渡辺格（Gt）と水樹とのダジャレ合戦も勃発し、「有明だけに好投（江東）してくれました」という渡辺に対抗すべく繰り出された「有明に亞里亞見参なのー」のセリフで客席のボルテージを急上昇させる一幕も。さらに「Sweet Dealer」「恋想花火」といったミディアムチューンを立て続けに投下し、水樹いわく“一瞬だけのクールダウンパート”を締めくくった。

　続いて披露された「サーチライト」では、“お奈々の塔”と銘打たれた巨大衣装でステージに降臨して観客の度肝を抜いた水樹。衣装というより建造物と呼んだほうが適切にも思える全高約7メートルにおよぶステージ一体型のドレスは、かつて年末の歌番組で某演歌歌手が毎年披露していた規格外な衣装装置を彷彿とさせるマッシブな演出だ。そこから身軽なプリンセスドレス姿へと脱皮すると、「Higher Dimension」では小型飛空艇を思わせる飛行ゴンドラに乗り込みアリーナ上空を滑空しながらの歌唱を敢行する。かと思えば、その飛空艇型ゴンドラは次の瞬間にはフロートへとトランスフォーム。これに乗って「Astrogation」「VIRGIN CODE」を歌いながら場内を一周するなど、息をもつかせぬ情報量過多のクライマックスを形作っていった。