栗本斉の「温故知新 聴き倒しの旅」
EPICソニー黄金時代を担ったBARBEE BOYS 今なお色褪せないサウンドを聴く
80年代に多感な時期を過ごした僕と同世代の方ならおわかりでしょうが、当時の〈EPICソニー〉というレーベルはとても特別な存在でした。佐野元春、大沢誉志幸、渡辺美里、大江千里、岡村靖幸、TM NETWORKといったスターたちが次々とヒットを飛ばし、安藤秀樹や松岡英明、くじらや詩人の血といった通好みのアーティストもEPIC所属ということで興味を持つきっかけになりました。
その当時は、『eZ』なんていうテレビ番組まで作られ、プロモーション・ビデオが盛んになってきた時期だけに、ビジュアル・イメージと合わせて多くの音楽に触れることができました。もう少し若い世代にとっては、90年代エイベックスがそういう存在だったのかもしれませんね。今の音楽シーンを見回してみると、そこまで牽引力のあるレコード会社(レーベル)は、残念ながら見あたりません。時代が時代だけに仕方ないことなのかもしれませんが、ちょっとさびしい気分になります。
さて、そんなレーベル買いができたEPICソニーで、もっともインパクトを受けたのがBARBEE BOYSでした。確か、こちらもビデオクリップを流す番組『ミュージックトマトJAPAN』(テレビ神奈川)で、初めて彼らの音楽に触れたのだと思います。マイケル富岡のナレーションに乗せて流れてきたデビュー曲「暗闇でDANCE」の映像は、本当に衝撃的でした。顔の見えないOLが主人公で、お尻を触られたりして、なんていう映像でしたが、ビジュアル・センスがスタイリッシュだったこともあり不思議な感覚にさせられました。いろいろと調べてみたところ、このプロモーション・ビデオは海外で賞を獲ったらしいですね。
しかし、それ以上に男女のかけ合いのボーカル・スタイルに圧倒されました。激しくシャウトするKONTAと、色っぽいハスキー・ボイスを聴かせる杏子。大人の男女ならではのエロティックな歌の世界は、当時の中高生にはとても刺激的でした。その後、1985年に発表したデビュー・アルバム『1st OPTION』を入手するのですが、浮気、嫉妬、裏切り、駆け引き、嘘といったテーマに彩られた楽曲群は、恋愛が甘美なものだと信じていた10代の少年の心に大きなトラウマを植え付けたのです。