陰陽座、アルバム『龍凰童子』の世界を完成させた全国ツアー『鬼神に横道なきものを』 バンドの再始動を鳴らす一夜に

陰陽座『鬼神に横道なきものを』レポ

 陰陽座が、15thアルバム『龍凰童子』を携えた全国ツアー『鬼神に横道なきものを』を開催した。

 『龍凰童子』は前作から約4年半ぶりにリリースされたアルバムであり、2020年より突発性難聴および声帯障害の療養で活動休止していた黒猫(Vo)の復帰作でもある。4月に開催された東名阪ツアー『捲土重来』にてバンドは約3年ぶりにライブ活動を再開させたが、今回は全国7カ所開催という前回より規模の大きいツアーで、心待ちにしていたファンも多かっただろう。

 しかし、今回のツアーでもバンドは思わぬ事態に直面する。初日の札幌、2日目の広島公演を終えた後、黒猫の体調不良によって名古屋・仙台・大阪公演が開催中止に。黒猫の体調が無事に回復し、ツアーが再開されたのがこの8月27日の東京・Zepp Haneda公演だった。

 アルバム1曲目に収録されたインスト曲「霓」が流れるなか、ステージに瞬火(Ba/Vo)、招鬼(Gt)、狩姦(Gt)とサポートメンバーが登場すると、再会を楽しみにしていたファンたちによる盛大な拍手が鳴り響く。少し遅れて黒猫が登場すると、彼女を迎え入れるように拍手は一段と大きくなった。

陰陽座 ライブ 全国ツアー『鬼神に横道なきものを』(撮影=YOSUKE KOMATSU)
黒猫

 「皆さん、ご心配をおかけしました」「こうやってまたステージに立てたのも皆さんのおかげです。今日は皆さんに魂いっぱいのお返しをしたいと思いますので、受け取ってください!」――深々とお辞儀をしながらそう語った黒猫は、「龍葬」「鳳凰の柩」で安定感のある歌声を披露する。伸びやかなハイトーンやビブラートに、不安な様子は一切感じさせない。

 「今日はアルバム『龍凰童子』の世界を余すところなく堪能していただきたいと思います!」(瞬火)、「ちょっとお待たせしてしまいましたが、ステージで新曲を披露できることを楽しみにしていました!」(招鬼)とメンバーが語る通り、セットリストは『龍凰童子』の収録曲が中心。アルバムを携えたツアーと言えば当然のことかもしれないが、陰陽座のライブが他のアーティストと少し違うのは、アルバム収録曲をすべて披露する点だ。『龍凰童子』は全15曲あるため、本編のほとんどはアルバムからの楽曲で構成される。「普通ならアルバムから4~5曲まぶして、あとは定番曲で固めるところですよね。僕もそんなライブが観たい(笑)」と後に瞬火は話していたが、丹精込めて作られた曲たちを漏らさず聴いてもらいたいという想いが、そこにはきっとあるのだろう。

 また、アルバムを全曲やるといっても、収録された順番通りにやるわけではない。この日も序盤はアルバムと同じ順番だったが、3曲目に披露されたのはトラックとしては5番目の収録となる「茨木童子」だった。力強いドラムに合わせ、瞬火のベースが重厚感のあるサウンドを作り上げる。そこに招鬼と狩姦のギターの音色が、それぞれ華を添えていく。曲順が異なると、また違ったアルバムの聴き方を提案されているようで、より『龍凰童子』の世界に惹き込まれていくように感じた。

 アルバムを聴き込んできたオーディエンスたちの合いの手やハンズアップも相まって、会場の一体感も凄まじい。MCでは、その様子を見た狩姦が「皆さんの魂、ピッチピチですね!」と観客の笑いを誘い、“ピッチピチ”のコール&レスポンスで盛り上がる場面も見られた。

陰陽座 ライブ 全国ツアー『鬼神に横道なきものを』(撮影=YOSUKE KOMATSU)
瞬火

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