くるり、バンドとしての充実を示したグルーヴ ライブハウスツアー・ホールツアーを締めくくる人見記念講堂公演レポ

 「ここからは僕たちの趣味の曲」という岸田の紹介から披露されたのは「GUILTY」「ハイウェイ」「7月の夜」の3曲で、共通点は「サビらしいサビがない曲」と言える。映画『ジョゼと虎と魚たち』の主題歌としても人気の「ハイウェイ」は、むしろそれが映画のロードムービー的な雰囲気とマッチしていたことを思い出す。

 この後に『愛の太陽 EP』から2曲が続けて披露され、「八月は僕の名前」に続く「愛の太陽」はポリっぽいニュアンスのイントロに始まり、8分の6拍子のスタックスビートが珍しかったりと、リズム面で様々な仕掛けが施されつつ、〈途は続く/ただそれだけで 歩いて行ける〉と最終的に聴き手の背中を押し、旅へと誘うようなメッセージ性が「HOW TO GO」や「everybody feels the same」とも共通する部分。くるりらしいアンセム感を感じさせる一曲であり、とても印象的だった。

 岸田がパーカッションを叩いた「つらいことばかり」に続いて、ジャズやカントリーに東欧のクラシック的な音階を混ぜつつ、演奏はエレキシタールを用いるという「スラヴ  SLAV」はやはり何ともくるりらしい。ちなみに、この曲ほどのエキゾ感はないものの、ある種のプログレ感を引き継いで今のポップシーンでこっそり鳴らしているのがマカロニえんぴつ(「トマソン」とかね)。ライブでの楽器編成も、ハードロックを背景に持つギタリストがいることも共通しているマカロニえんぴつが、近年くるりと親交を深め、『京都音楽博覧会』に2年連続での出場が決まるというのも納得だ。

 この日のライブである意味『愛の太陽 EP』の収録曲以上に注目だったのが、「In Your Life」と「California coconuts」だろう。先日くるりはオリジナルメンバーであるドラムの森信行とともにレコーディングを行い、10月にオリジナルアルバム『感覚は道標』をリリースするとともに、そのレコーディングを記録したドキュメンタリー映画が公開されることをアナウンス。その収録曲がいち早くライブで披露されたわけだが、石若はここまでの奔放なプレイは影を潜め、正面ではなく内側を向いて演奏した佐藤とともに、音源に忠実に演奏していた印象。これらの曲はやはり森を迎えての演奏も聴いてみたいと思うが、どうなるだろうか。

 ライブ終盤では今年度から高校の音楽の教科書にも掲載されている「ばらの花」から「虹」へと続けると、アウトロでブルースのセッションに突入し、岸田のストラト、松本のレスポール、野崎のエレピがそれぞれソロを聴かせ、岸田がスキャットを披露する場面も。さらに「ロックンロール」から「Liberty&Gravity」へ続けると、〈POM POM POM POM POM POM〉の裏の石若のハイハットワークがひたすらに気持ちいい。

 ラストを近年ライブの終盤に演奏されることが増えた名曲「奇跡」で締め括ると、アンコールでは「東京」が演奏され、うっすらかかったフェイザーが夏のむわっとした熱気を連想させる。さらには「Tokyo OP」でグルーヴマシンとしてのバンドの充実ぶりをもう一度見せつけてライブが終了。『音博』含め、今後はフェス出演も続くので、歴代でもトップクラスに充実した現在のバンドの演奏をぜひともどこかで味わってほしい。

※1:https://note.com/quruli/n/nc20bc7115434

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