くるり、バンドとしての充実を示したグルーヴ ライブハウスツアー・ホールツアーを締めくくる人見記念講堂公演レポ

くるり人見記念講堂公演レポ

 8月3日、くるりが『「愛の太陽EP」発売記念ホールツアー2023』のファイナルとなる東京公演を昭和女子大学人見記念講堂で開催した。『愛の太陽 EP』のリリースに伴う今回のツアーは、5月から「ライブハウスツアー」がスタートし、その後の「ホールツアー」と合わせ、計16本を開催(5月24日に開催予定だった横浜公演のみ、8月23日に延期)。充実のツアーを締め括る素晴らしい内容だった。

くるり

 ライブのオープニングを飾ったのは、『愛の太陽 EP』のラストナンバーであり、連日30℃超えの暑さが続く今の時期にぴったりの「真夏日」。くるりはいつだって、季節に敏感だ。この日『愛の太陽 EP』から披露された曲は「真夏日」含めて3曲。『愛の太陽 EP』がタイアップ曲を中心に、ウェルメイドなポップソングを並べた作品だったこともあり、今回のツアーも特別新しいモードのくるりが披露されたというよりは、昨年のツアーに引き続き、「ロックバンド」としての充実ぶりを見せつけるライブだったと言える。

 岸田繁がnoteで「佐藤(ベースの佐藤征史)さん以外のバンドメンバー、まっちゃん(ギターの松本大樹)、のっち(キーボードの野崎泰弘)とはもう10年くらい一緒に演奏してますし、石若(ドラムの石若駿)とも5年くらいになります」と書いているように(※1)、メンバーの入れ替わりが激しいくるりにおいて、これだけの期間メンバーが固定されていることは珍しい。それによってすっかりグルーヴマシンと化した現在のくるりを強く感じられたのが、「LV45」を挟み、同期とともに演奏された3曲だ。

 ブレイクビーツっぽいニュアンスで演奏された「WORLD’S END SUPERNOVA」、ヒップホップビートを基調に、石若が現代ジャズ以降のドラマーらしい「何連符?」なフィルインを聴かせた「琥珀色の街、上海蟹の朝」、エレポップなオリジナルではなく、カッティングとスラップを基調とするファンクバージョンにリアレンジされた「赤い電車(ver.追憶の赤い電車)」の3曲は、一昔前なら「一曲一曲全くジャンルが違うのがエクレクティックなくるりらしい」と評価されていたように思うが、今は「それぞれの曲のキャラクターは全然違うのに、バンドのグルーヴ感には通底したものが感じられる」ことが素晴らしい。

松本大樹
松本大樹

 岸田と松本によるツインハモが楽しい「THANK YOU MY GIRL」に続いて披露されたライブの定番曲で、クリックを聴かずに演奏するからこその生感やインプロ風味が最高に楽しい「Morning Paper」でも、やはり通底するグルーヴ感は変わらない。石若のプレイは相変わらず素晴らしいし、ブレイクから立ち上がる際のタイトなベースソロ、アウトロのレスポールによるギターソロなど、各プレイヤーの見せ場も多く、序盤のハイライトを作り出した。

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