中国で活動するラッパー 99 God、バイラル首位に TikTokのユニークな引用投稿から広がった“思考を刺激するリリック”

Viral Chart Focus

 Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感し共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの8月2日付のTOP10は以下の通り(※1)。

1位:99 God「Bodega」
2位:ミツキヨ「Unwelcome School」
3位:KISS OF LIFE「Shhh」
4位:崎山蒼志「燈」
5位:nyamura「you are my curse」
6位:シャイトープ「ランデヴー」
7位:シネイド・オコナー「Nothing Compares 2 U」
8位:KISS OF LIFE「Sugarcoat (NATTY Solo)」
9位:ZEROBASEONE「In Bloom」
10位:有馬かな(CV:潘めぐみ)「ピーマン体操」

 先週から、初登場で10位以内にランクインしてくるアーティストが複数現れ、大きな入れ替わりがあったバイラルチャート。今週も崎山蒼志、KISS OF LIFE(2曲同時にランクイン)、ZEROBASEONE、有馬かな(CV:潘めぐみ)など、国内外のアーティストが新たにトップ10圏内に名を連ねている。また、直近では、日本で上半期を代表するロングヒットナンバーとなったチョーキューメイ「貴方の恋人になりたい」が7月15日に韓国のバイラルチャートで首位を飾り、4日後の7月19日には日本の同チャートで韓国のバンド CHSが首位となっていたことも興味深い。国境や時代、ジャンルなどがシームレスになり、すべての楽曲を並列で聴くことができるのがサブスクリプション音楽配信サービスの大きな特徴だが、ここ数年で、各配信サービスが定期的に提供しているプレイリストの切り口が増えたことで、リスナーのお気に入りの曲が見つけやすくなり、それがニューカマーのチャートインに繋がっているパターンも見られるようになってきた。

 さて、今週のバイラルチャートのトップを飾った99 God「Bodega」も国境を越えてきた1曲だ。

 99 Godは中国で活動するラッパーで、年齢などの詳細は謎のままだ。Spotifyによれば初音源を発表したのが2020年である。「Bodega」は7月24日付の同チャート3位に初登場すると、翌日には2位にアップし、8月1日付で初の首位に。以降、8月5日まで首位をキープし続けている。TikTokでの引用投稿をきっかけにヒットに結びついた形だが、注目すべきは新しいパターンの動画アプローチで拡散されたことである。

 最初は“これからバズる洋楽”や“洋楽神曲”として注目され、和訳のリリック動画が数多く投稿された。ここまでは数多くの前例があるが、その後、著名人の過去の発言・名言、漫画などの鮮烈な台詞を紹介する動画に発展。投稿の中で目立つのはSNSとの親和性の高いHIKAKINだが、他にも松本人志(ダウンタウン)、ROLAND、Fukase(SEKAI NO OWARI)、大谷翔平、レオナルド・ディカプリオ、リバー・フェニックス、さらにはアルベルト・アインシュタインなど偉人にまで及んでいる。これは「Bodega」のリリックからインスパイアされたと言えるのではないだろうか。

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