ホロライブからの影響も　K-POPシーンにおけるバーチャルアイドル最新事情

　VTuber×アイドル的なグループとして、ISEGYE IDOLLほど配信・リアル寄りではないが、VTuber的なキャラクターで配信中心に活動しているバーチャルアイドルが、2022年9月15日に公式YouTubeとTwitchで生放送を通じて公開された5人組ボーイズグループのPLAVEだ。

　“コミックから出てきたアイドル”というコンセプトのメンバーたちはイェジュン・ノア・ウノ・バンビ・ハミンの全員が作曲可能な“作曲ドル”であり、それぞれボーカルとダンス、ラップ全てをこなす。韓国のTV局・MBCより独立したバーチャルIPスタートアップ企業であるVlastからシングルアルバム『ASTERUM』で3月12日にデビューしている。

　バーチャルワールドである“Caelum”に住んでいたキャラクターたちが地球の開発者から能力を与えられ、“Asterum”に来ることになり、地球（Terra）と疎通できるようになったという世界観だ。 Asterumは地球とCaelumの間に存在する神秘的な空間を意味しており、デビュー曲「Wait For Me」のMVでは、メンバーたちがCaelumからAsterumに来る姿が描かれている。

　PLAVEの特徴としては、動画プラットフォームを通じたライブ配信を中心とするバーチャルYouTuber的な活動に加え、K-POPアイドルのように楽曲リリースや番組出演、公式SNSを通じたコミュニケーションなど、アイドルグループとしての活動も行っているということだろう。Vlastが放送局であるMBCから生まれたスタジオということで、MBCの番組やラジオにも出演している。初期デザイン設定は人気イラストレーターのNAKDIが手がけており、2次元のイラストを3DCGに落とし込んだウェブトゥーンのようなビジュアルで音楽番組に出演し、YouTuberのように定期的なライブ配信をしてファンとコミュニケーションをとるなど（韓国のアイドルも生配信を行うことは今や日常ではある）、見た目はバーチャルのアバターではあるが、王道のK-POPアイドル的活動を行なっていると言っていいだろう。6月にリリースした新曲「Why?」のプロモーションで出演した『音楽中心』のステージ動画は、7月21日現在までで170万ビューを超えた。

　また、配信時に「中の人」の動きとリアルタイムでシンクロするアバターが全身であるというのも、K-POPシーンでは現状ではPLAVEのみと言える。一般的なVTuberのアバターは、配信中はほぼバストアップで胸から上のみが動くものだが、PLAVEのアバターは全身なので、生配信中にK-POPアイドルの代名詞でもあるダンスを見せることができる。動いている最中にメンバーのアバターが衝突して重なったり破れたりするのを防止するために、生配信では干渉防止用アルゴリズムを導入したという（※2）。

　7月9日にも、同じくVTuber系ボーイズグループ・IOZのデビューが発表された。こちらはより二次元的なアバターで、いわゆるVTuberVらしい動き方だ。韓国でも2021年あたりから、バーチャルアバターによる生配信文化は主にアニメやゲームなどを好む2次元界隈で人気が出始めており、日本の人気コンテンツであるホロライブやにじさんじなどはすでにある程度いわゆる2次元オタクの間では知られている（にじさんじが韓国に作ったKR支部は昨年本体に吸収されている）。

　また、YouTuber4人が集まって自主的に結成されたVTuberアイドル、Revolution Heart（レボリューションハート）は、昨年10月にバーチャルアイドルとして初めてオフラインでショーケースを開催し、チケット発売開始3分で1100席余りを完売させた（※3）。バーチャルアイドルには2次元界隈とアイドルを好む3次元界隈、それぞれのファンから注目を受けるポテンシャルがあり、モニターさえあれば遠隔で越境しやすいという点が、コロナ禍を経験した今となっては大きな強みと言えるかもしれない。

　PLAVEに関しては今年LAで開催される『KCON』への出演が決まっている。バーチャルヒューマンのルックスを持ちながら、VTuber特有の親しみやすさ、K-POPアイドルのような実力をあわせもつバーチャルアイドルはこれから発展していきそうだ。

※1：https://www.konest.com/contents/news_detail.html?id=49886
※2：https://www.hankooki.com/news/articleView.html?idxno=31728#_DYAD
※3：https://www.joongang.co.kr/article/25142149#home