Deep Sea Diving Club、バンドの野心と観客の熱が交わるエモーショナルなライブ 『Mix Wave』携えたツアーファイナルを観て

DSDC『Mix Wave』携えたツアーファイナル

 街の喧騒や車のクラクションがサンプリングされたイントロから始まったのは「ゴースト」。粘っこいベースラインと抑制されたビート、そしてラップと歌のあいだを行ったり来たりするボーカル。グラデーションのように折り重なる音のレイヤーが少しずつズレたり合わさったりしながら、聴いている我々をトリップさせていく。「goodenough.」もこの「ゴースト」も『Mix Wave』からの楽曲。こうしてライブで過去曲と並ぶと、この新作がいかに実験的というか挑戦的なものだったのかということがはっきりとわかる。そして、音楽的なチャレンジをこれまでになくアグレッシブに実践しながらも、最終的にはポップに落とし込むというところに、今作の彼らが成功しているということも。実際、新しい曲たちが入ることで、彼らのライブのセットリストは間違いなく深みを増していた。

 もちろん、だからといってこれまでDSDCがやってきたことが霞むわけではない。地元・福岡の空を思いながら書いたという「CITY FLIGHT」から入っていった終盤はまさにそれを証明するものだった。手拍子を介してオーディエンスとひとつになりながら、続けてファンクやヒップホップの要素を強く感じさせる「フラッシュバック'82」。同郷のRin音をフィーチャーしたこの曲も、DSDCだけで演奏されると色合いを変えて響く。さらに「lostpeople」でグッとギアを上げると、まったりとしたインストナンバー「Interlude(for Early Summer)」をバンドは奏で始める。「改めまして、お越しいただいてありがとうございます」と谷。コロナ禍で思うようにライブができなかった時期を経てたどり着いたこのツアーへの感慨を言葉にし、「このままいけばまたみんなどこかで会えるかもしれないんで。そのときまでどうか元気で生きていきましょう!」と告げると、この日いちばんの拍手がステージを包む。そして本編ラストはキラーチューン「T.G.I.F.」。フロアから巻き起こるハンズクラップにシンガロング。生き物のようにテンポを帰るリズムの上で、谷が気持ち良さそうにファルセットを響かせた。アンコールではまたしてもゆるーいMCのあとに「ランデブー」を力強く披露。そして最後に「cinematiclove」をスケールでっかく響かせると、フロアからは嵐のような拍手と歓声が起きたのだった。

■セットリスト
1.フーリッシュサマー
2.Left Alone
3.SUNSET CHEEKS
4.おやすみDaydream
5.リユニオン
6.SARABA
7.Just Dance
8.bubbles
9.しじま
10.FLACTAL
11.Miragesong
12.goodenough.
13.ゴースト
14.CITY FLIGHT
15.フラッシュバック’82
16.lostpeople
17.Interlude(for Early Summer)
18.T.G.I.F.
19.ランデブー
2.cinematiclove

Deep Sea Diving Clubのシティポップにあるオリジナリティの背景 谷 颯太が語る、“東京三部作”に至るまでの歩み

福岡を拠点に、「TENJIN NEO CITY POP」を掲げて活動する4人組バンド・Deep Sea Diving Club。…

Deep Sea Diving Club、メジャーデビュー発表の記念すべきステージ 次なるフェーズへ踏み出した第一歩

福岡発&在住の4人組バンド・Deep Sea Diving Clubが、2月11日に下北沢・ADRIFTで行ったFIVE NEW…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる