YOSHIKIが名曲を作り続けられるのはなぜか? X JAPANと歩んできた男が語る、アーティスト・プロデューサーとしての本当の才能

津田直士が語るYOSHIKIの本当の姿

 8年ぶりのリリースとなるX JAPANの新曲「Angel」のリリースや、同楽曲の『THE MUSIC DAY 2023』(日本テレビ系)での歌唱パフォーマンスが話題となっているYOSHIKI。近年では自身の音楽活動はもちろん、プロデューサーとしても手腕を発揮しており、ボーイズグループ・XYがメジャーデビューを果たし、8月4日からは“世界一豪華なディナーショー”として『EVENING / BREAKFAST with YOSHIKI 2023 in TOKYO JAPAN 世界一豪華なDINNER SHOW』の開催も控えている。

 なぜ、YOSHIKIはアーティスト・プロデューサーの双方で第一線で活躍できるのか。彼の持つ才能の正体を、音楽プロデューサーとしてX JAPANのメジャーデビューから東京ドーム公演までの間を共に歩き、トークショー『津田直士トークショー ~YOSHIKIの本当の姿~』の開催を控える津田直士に話を聞いた。(編集部)

「初めてXの5人と会った瞬間にとんでもない可能性を感じました」

ーー音楽プロデューサーとして長年活躍してきたと思うのですが、まず最初に、津田さんのこれまでのキャリアを教えてください。

津田直士(以下、津田):大学生の頃は音楽ばかりやっていました。ソニー・ミュージック所属アーティストのサポートミュージシャンをやっていた関係で、CBS・ソニー(現ソニー・ミュージックレコーズ)のスタッフにうちで働かないかと誘われました。当時僕は音楽業界を変えたいと思っていて、ビジネス優先ではない、本当に優れたアーティストと作品がもっと必要だと思っていました。だったら自分で音楽を作るだけではなく、レコード会社に入って優れたアーティストを見つけてプロデュースするのも良いなと思い、ディレクター、プロデューサーとしてのキャリアをスタートさせることにしました。その後菅野よう子が所属していたてつ100%やエレファントカシマシといったアーティストを発掘して世に送り出して、入社 3年目でX JAPAN(当時はX)と出会うことになります。

 初めてXの5人と会った瞬間にとんでもない可能性を感じました。彼らはすごくピュアでありながら、とてつもなく高い志を持って自分自身のことを見つめていたのです。間違いなく圧倒的なアーティストになると確信し、すぐに会社にプレゼンをしましたが、当時のリアクションは今ひとつ。というのも、どうも製作陣はXの可能性に気づいていなかったようで、ヘヴィメタルの得意なサウンドプロデューサーをつけてすぐにリリースすれば10万枚くらい売れるのではという意見ばかりでした。しかし、僕は全く正反対の意見で、Xはもっとジャンルにとらわれない普遍的でオリジナルなバンドだから、じっくり育てていけばものすごい進化ができるはず、そうすれば100万枚売れるアーティストになるはずだと考えていました。我慢できなくなってもう自分で全部やってしまおうと、メンバーとコミュニケーションを密にして、音楽合宿などを重ねてメジャーデビューアルバム『BLUE BLOOD』をリリースしました。

津田直士

ーー初めてXの5人と会った時に感じた可能性というのはどういったところから感じたのでしょうか。

津田:最初にメンバーと会ったのはCBS・ソニー社内だったのですが、エレベーターから降りた彼らは歩き方がペタペタしていたんですよ。ビジュアルはすごく洗練されているんですけど、全然カッコつけていなくて子供のようにペタペタ歩いているのにすごくかっこよくて。このギャップが面白いなと思いました。で、彼らの目を見つめて話していくと驚くほどピュアで、本気で音楽と向き合っているのがすぐにわかりました。僕は優れたアーティストを見分ける鍵は人間性だと考えていたのですが、そういう意味で彼らの人間性がとても優れていると気づきました。実は初めて会った時は彼らの曲をしっかり聴く前だったのですが、まずは人間としての可能性を感じました。

Xの中に眠っていた才能 ToshlのMCもバンド飛躍のカギに

ーー当時インディーバンドだったXには多くのメジャーレーベルが契約の話を持ちかけていたそうですね。その中でどのようにしてCBS・ソニーに所属することになったのでしょうか。

津田:確かに、当時Xにはメジャー契約のオファーが殺到していて、大金を用意したり車を用意したり、あの手この手で説得しようとしていたようです。そんな中で僕が彼らに持ちかけたのは「オーディションに出ないか」という誘いでした。でも彼らなりに考えがあったようで、結果的にオーディションに出る決断をして、僕はメンバーと時間を共にすることができました。嬉しいことです。

津田直士

ーーそうして、冒頭のお話にあった通り、じっくり育てるという形で『BLUE BLOOD』を制作することになるのですね。

津田:育てるというというか、僕が見守って制作するような形になりました。本人は自分たちの音楽を信じているし、自信もある。でも、それが外側の人に見えにくい部分もありました。CBS・ソニーレコード所属前に制作していたインディーアルバム『Vanishing Vision』はかなり音楽性の高い作品でしたが、それは轟音の中で聴くインディーズ時代のライブでは、なかなか気づかれない部分もあったと思います。それでも綺麗に録音された『Vanishing Vision』を聴くと、ハードロック、スラッシュメタルのジャンルではありますがオリジナルの要素も感じることができて、特にYOSHIKIの才能は目を見張るものがありました。今では考えられないですが、当時のXを派手なだけの歌謡バンドだと音楽性を否定する人達もいました。実際は真逆で、音楽性の高さこそがXの魅力なのに、その中に眠っている才能に見向きもしない。そこでYOSHIKIに「YOSHIKIはメロディをゼロから生み出している。その才能はなかなかないし、これからどんどん名曲を生み出していく存在だから、その名曲を日本中に届けたい」というような話もしましたね。

 あと、ToshlのMCについても話し合いました。当時のToshlのMCは「気合い入れろ」だけでしたし、広い会場ではそれすらもちゃんと聞こえませんでした。バンドは勢いもエネルギーもあるのですが、このエネルギーを日本中に届けるにはマイクを持つToshlが鍵だと思って、彼にREBECCAのライブを見せて、その後2人でToshlの人生や深層心理など深い話をしました。その数日後にXのライブがあったのですが、始まった瞬間にToshlの目も姿勢も全然違うんです。それから1カ月もすると「裸の付き合いしようぜ!」と叫び始めて。要するに自由になれとファンに伝えて、楽曲をぶつけるんです。ライブはものすごく盛り上がって、最後にToshlが「お前ら胸張れ、良い顔してるぞ!」って言うんです。こんなにMCが良くなるんだと。これであとは楽曲が届けば、このバンドはどこまでもいけるなと感じました。

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