エイプリルフールの嘘企画から目指すはお茶の間へ 90年代ビジュアル系リバイバルバンド・色々な十字架のオリジナリティ
嘘から始まったのに、現実とクロスしていくのが面白い
ーーでは、1stアルバム『少し大きい声』についてお聞きしたいんですが、楽曲自体は、チケットが即完になった2021年12月の初ワンマン『良い雰囲気の場所』に向けて作られた曲も多いみたいですね。
dagaki:そうですね。初ライブの前にリリースされてたのは3曲だけなので、あのライブの時は7曲が新曲でした。
ーーカバーを1曲もやられてないって、驚きでした。
tacato:ライブでは同じ曲、2回やったりしたけどね(笑)。
tink:なんか、謎のプライドがあった。
dagaki:そう。カバーをやるって発想がなかった。
tink:新曲の方がかっこいいと思ってたから。そこだけオルタナマインド(笑)。
misuji:音楽活動自体は長いことやってきてるからか、プライドだったね。
ーーgroup_inouのimaiさんやスーパーカーのナカコー(中村弘二)さんなどが注目してくれて知名度が上がったというのも、曲作りやワンマンに対する、いい意味でのプレッシャーになってたのかなとも思います。
tacato:引いたよね、チケットがすぐソールドアウトしたって聞いた時は。それぞれ頑張って友達呼ぼうねぐらいに思ってたのに、純粋なお客さんだけで、5分ぐらいでソールドアウトしたっていう。
dagaki:うん。だから友達を呼べなかった(笑)。
misuji:即完って聞いた時、ドッキリかと思いましたから。
tink:やっぱりそれもあって、下手なことはできないっていうね。
misuji:それだけ期待してくれてるっていうのがあったから。
tacato:プレッシャーは確かにそこで出てきたね。
tink:根が真面目なとこが出ちゃった(笑)。
ーーそのプレッシャー、今はどうですか?
tink:私は運営もやってるんで、てんやわんやでそれどころじゃないみたいなところもあったりします(笑)。でもせっかく期待もしてもらってるし、お金もそれなりに落としてもらってるし(笑)、クチコミもしてもらってる分、大きくはしていかなきゃなっていうのはありますね。プレッシャーってほどじゃないんですが、使命感みたいなのは。
dagaki:応えたい気持ちというか。
misuji:そうですね。応えたい気持ちはもちろんある。
tacato:プレッシャーとかはあんまり感じてないんだよね。なんかそういう状況を客観的に見てウケてるっていう自分がいるから。外側から自分見て、「何やってんのこいつ」みたいなのがあるから(笑)。
tink:そう。たまに客観的に見れるからいいよね。ちゃんと俯瞰で。それはたぶん、嘘で始まったからだと思うんだけど。
ーーへんな聞き方ですが、やめようと思えばいつでもやめられるみたいな気持ちもどこかにはあるんですか?
tink:どこかにはありますよね。
misuji:たぶん全員そうだと思うんですけど、やらされてる気持ちが全くないんですよ。だから、たとえば「これを成功させるためにやらなきゃいけないこと」みたいなのは意識しますけど、一生やんなきゃいけないっていう、それこそそういう“十字架”は背負ってないっていうか。
tink:……それ、考えてきた(笑)?
misuji:考えてきた(笑)。恥ずかしい!
ーーいいバンド名つけたじゃないですか。
tink:ですね。逆にこんな意味を持っちゃって、どうしよう(笑)。
ーーでもこうして1stアルバムもリリースするわけですから、色々な十字架を知るきっかけとしての入口が広がりそうですよね。
tink:嘘から始まったのに、現実の者たちとクロスしていくのが面白いっすね。
misuji :クロス!
tink:あ(笑)。でも、曲の良さはマジで伝えたい。
dagaki:曲、こんなにかっこいいのに歌詞がこんなっていう。「なんで?」って気持ちになってほしい。
tink:そうだよね。どうしてこうなったの、みたいな(笑)。
dagaki:そのアンバランスさを楽しんでほしいなと思います。
tacato:余白がいっぱいあるから、楽しめると思うんですよね。想像できる余白。勝手に想像して勝手に意味づけして、自分の中で楽しんでもらえたりする。
tink:歌詞とか、勝手にみんな考察するよね。そんな考えてないんですけど。
dagaki:この時に出てきたこの人が、この曲のこの人ですか? とかね。
ーーそうやってみんな色々な十字架にハマって、しし者になっていくと。
misuji:増えてほしいですね(笑)。
tink:ビジュアル系の中でも一番いいアルバムを作ったと思ってるんで、ぜひ聴いてみてほしいです。曲の良さはもちろん、初回盤はスリーブケースや歌詞カードのほかに写真集ブックレットもつけたりして、パッケージにもこだわってるんで。
tacato:アイテムとして持つ意味のあるものになってます。そこも、昔のバンドさんたちをリスペクトしてやってますね。それも含めてバンドの表現のひとつだったと思うから。
tink:色々な十字架という、チームとして作ったんですよ。VJもいるし、カメラマンにデザインスタッフ、みんなの総力戦で出来上がった。そこも感じてほしいですね。
tacato:みんなで成長できてる感があるよね。全員が同じ方向を向いて、これは十字架っぽい、これは十字架ぽくないとかちゃんと言える。
ーーこれは完全にいい意味ですが、いい大人達がめちゃくちゃ真剣に遊んでる感じが伝わってきます。ライブの演出にしても、アルバム制作にしても。
tink:スタッフも含めて、完全にそうですね。そういうことをわかってくれる人が、しし者になってる。
dagaki:一緒に遊んでくれてる感覚に近いです。
tink:うん。今回のアルバムも、そういうしし者が増えるきっかけになったら嬉しいです。
ーー「しし者」って、ちょっとクセになりますね。無駄に言いたくなります(笑)。
dagaki:ビジュアル系のファン呼称も、やっぱり文化のひとつなので。LUNA SEAだったらSLAVEっていうふうに呼んだりね。
ーーでは最後に、今後の夢とか目標も聞いてみたいです。
tink:『ミュージックステーション』に出ることです。ビジュアル系といえばミュージックステーションだから。……そんなこと言って大丈夫かな(笑)。でもそう歴史もね、継いでいきたいですよね。
dagaki:めちゃめちゃ苦情が入るかもしれない(笑)。
tink:ビジュアル系でテレビに出てるって、ゴールデンボンバーさんくらいじゃないですか?
dagaki:他にもいると思うけど、やっぱり昔みたいには多くないからね。お茶の間に届けたいですよね。
misuji:ビジュアル系って、対バンした時にお話し聞かせてもらったりすると、ビジュアル系っていう枠に篭っちゃってるとこがあるというか。ビジュアル系の中で売れてる売れてない、人気がある人気がないみたいなのはあったりするみたいなんですけど、いわゆるメインストリームって言われるところには出にくいっていう状況がずっと続いてると。でも色々な十字架はそこを繋げられる可能性があるバンドだと思うんで、そういうことが実現できたら嬉しいよね。
tink:うん。昔好きだったジャンルに対する恩返しではないですが、貢献できたらって。
dagaki:僕らが中学高校ぐらいの時って、ビジュアル系を聴いてる人への風当たりがある程度強かったりもしたけど、今この色々な十字架というバンドをやってると、ビジュアル系が好きな人も、ビジュアル系はあんまり聴いたことがなかったんだけどって人も、ライブに来てくれてるんですね。いろんな垣根をとっぱらってやれてる感じも、僕はすごく嬉しいなって感じてます。
tacato:ビジュアル系だからこうでしょ、みたいな先入観を取っ払いたいなっていうのもありますよね。だって結局はロックだし、音楽だから。要素のひとつですからね、ビジュアル系は。
misuji :うん。僕はビジュアル系通らずに飛び込んだビジュアル系なんですけど(笑)、「6年生を送る会」とか、自分でもビジュアル系の曲を作るようになったりして。ビジュアル系全然知らんまま30年以上生きてきた人間が飛び込んでも入り込める世界だったりするから、今までビジュアル系の音楽を全然聴いてなかった人が聴いても楽しめると思うし、他のビジュアル系バンドに興味を持つきっかけになる可能性もあると思う。そういう役割にもなれたらいいなと思いますね。
takato:あとは、でかい会場でライブやりたいね。
tink:とりあえず9月にAshmaze. と渋谷WWWでやるから、そこが楽しみ。
misuji:Ashmaze.さんは、僕らが最初のワンマンやるちょっと前に、その何カ月後かにやるライブのオファーをくれたんですよ。ビジュアル系バンドやってる人が僕らを好きで誘ってくれた! っていうのがわかった状態で自分達のワンマンライブができたっていうのが嬉しかったりし、そこで誘われてなかったら、ワンマンの後、ライブ続けてなかったかもしれないんですよね。色々な十字架が活動続けていくっていうきっかけになった、個人的には心の繋がりが強いと思ってるバンドさんとのツーマンです。
tink:そして個人的には、月9。最終的にはそういうソロ活動とかも盛んになって、俳優とかもやっていきたい。
dagaki:バンドで主題歌、じゃないんだ(笑)。
ーー色々な十字架が嘘企画で始まってこうなってることを考えると、それも本当になりそうで怖いです(笑)。
misuji:M1の審査員とかやってるかもしれないね(笑)。だってあのimaiさんのツイートがきっかけで今があったりするから、確かにこの先もどうなっていくか。
tacato:いろんな人との繋がりがあって、今があるからね。
tink:自分たちだけの力ではないので、もう本当に感謝しかないです。
■リリース情報
『少し大きい声 』
発売:2023年7月12日(水)
初回限定盤
CD+24P写真集ブックレット+ 3方背特殊スリーブ+メンバービジュアル カード(全6種予定)をランダム封入
価格:¥4,500(税抜)
通常盤
価格:¥3,000(税抜)
詳細は以下
https://ultravybe.lnk.to/sukoshiookiikoe
色々な十字架 Twitter
https://twitter.com/kanari_tanbi