eillの楽曲が『ラブ トランジット』で注目度急上昇 デビュー以降スマッシュヒット連発、躍進続く理由とは?

eill『ラブ トランジット』で注目度急上昇

 6月22日に5周年ワンマンライブ『MAKUAKE』を終えたばかりのシンガーソングライター・eill。セットリストにはTVアニメ『東京リベンジャーズ』エンディング主題歌「ここで息をして」や昨年『アクエリアス』CMソングに起用された「palette」、映画『夏へのトンネル、さよならの出口』主題歌「フィナーレ。」をはじめとするさまざまなタイアップ楽曲が含まれ、いずれもストリーミング再生回数が好調だ。

 eillの直近の活躍でまず注目したいのが、6月29日の配信分で完結を迎えた恋愛リアリティ番組『ラブ トランジット』(Prime Video)への楽曲起用。ワンマンライブのMCでも「(番組中に)すごい流れるの。びっくりするくらい!」とeill自身が驚きを交えて話していた通り、主題歌「happy ending」やオープニング曲「FAKE LOVE/」を含むeillの楽曲がふんだんに使われている。

『ラブ トランジット』ハイライトムービー ♪eill「happy ending」| プライムビデオ

 『ラブ トランジット』は、韓国のエンターテインメント企業・CJ ENMが製作し、世界中で人気を集める恋愛リアリティ番組『乗り換え恋愛』を元に日本で製作された新番組。参加するのは男性5人・女性5人からなる5組の元カップルだ。1カ月の共同生活の中で動き出す過去の恋/新たな恋模様が映し出されるなか、参加者の思いが元パートナーへ届かなかったシーンでeillの楽曲「片っぽ」が流れた。〈叶わない未来予想図〉〈あぁ 願わくば 気づかなきゃよかった/片っぽな恋に 心が破てるまえに〉という歌詞と、eillの切実な歌声は番組を飛び越え見ている人自身の叶わなかった記憶までも思い出させる。「スキ」が流れるデートシーンも可愛く微笑ましいのだが、元パートナーとの関係が曖昧なまま別の人とデートをする複雑な感情と、〈誰かを想うことがこんなに辛いなんて〉という歌詞がリンクして聞こえた。多くの人が経験したことがあるであろう恋特有の悩みやややこしい気持ちを歌に落とし込んでいるeillの楽曲だからこそ、視聴者の感情を増幅させるような効果を生んでいるように感じた。事実、番組開始以降、各種ストリーミングサービスにおいてeillの楽曲再生数が急上昇しており、『ラブ トランジット』を入り口にeillの楽曲に興味を持ったリスナーは少なくないようだ。

eill | happy ending (Official Lyric Video)
eill | FAKE LOVE/ (Official Music Video)
eill | 片っぽ (Official Music Video)
eill | スキ (Official Lyric Video)

 また、2022年に公開され、6月にはフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭にて「ポール・グリモー賞」を受賞した映画『夏へのトンネル、さよならの出口』には、主題歌「フィナーレ。」と挿入歌「プレロマンス」が起用されたことも記憶に新しい。本受賞からもわかるように『夏へのトンネル、さよならの出口』は、日本のみならず海外でも評価されている作品である。たとえば、K-POPグループ・Billlieのハラムが以前「フィナーレ。」のカバー動画をアップしており、インタビューでも「アニメ映画『夏へのトンネル、さよならの出口』は、日本ならではの雰囲気が感じられて大好き。eillさんが歌う主題歌『フィナーレ。』も毎日聴いています」(※1)と語っていた。eillの生み出した楽曲がeillのルーツの一つでもあるK-POPとの橋渡しとなっているのは実に喜ばしいことだ。

eill | フィナーレ。 (Official Music Video)
eill | プレロマンス(Official Lyric Video)

 eillとK-POPの繋がりはこれだけではない。2020年にリリースされたテヨン(少女時代)の「#GirlsSpkOut ft.ちゃんみな」では、テヨンパートの作詞をeillが担当している。最近では今年5月にリリースされたIVEのJAPAN 1st EP『WAVE』に参加。「After LIKE -Japanese ver.-」「Take It -Japanese ver.-」の2曲で日本語の歌詞を担当した。さらに、NEWS「STAY WITH ME」やジャニーズWEST「ブルームーン」、BE:FIRST「Betrayal Game」など日本のグループへの楽曲提供もたびたび行っている。自身の楽曲でも生かされているコンセプトを曲に落とし込むセンスが、作家としての才能も開花させているのだろう。

 2021年に「ここで息をして」でメジャーデビューして以降、躍進し続けているeill。ジャンルに縛られずどんな楽曲でも乗りこなせる彼女のスタイルも、活動の幅を広げている要因の一つではないだろうか。「踊らせないで」のようにポップで楽しい曲では高らかに真っ直ぐに歌を届ける。「片っぽ」ではハスキーな声と鬼気迫る歌唱で、誰かを、何かを失う苦しさを痛いほど表現する。Calakuli作曲の「Succubus」やDJ/プロデューサーユニット・YOSA & TAARの楽曲にフィーチャリング参加した「Red」といったメロウな楽曲では、余裕のある歌い方とまるで歌詞以上の何かを潜ませていそうな深みのある歌声が癖になる。

eill | ここで息をして 【TVアニメ『東京リベンジャーズ』 エンディング主題歌】
eill | 踊らせないで (Official Music Video)
eill | Succubus (Official Music Video)
eill | palette (Official Music Video)
eill | hikari (Official Music Video)
eill | SPOTLIGHT (Official Music Video)

 先日行われたワンマンライブを観ながら、こうした歌唱力は言わずもがな、eillのステージでの佇まいには説得力があると感じた。その場にいるだけでパワーやメッセージを伝えられるような存在感があるのだ。加えて、辛いときに励ましてくれる親しい友人のような身近さが楽曲やeill自身から感じられるのも同世代の支持につながっているように思う。

 感情やコンセプトを音楽に落とし込む力と、歌や佇まいでの表現力。人生のなかで蓄えてきたものがeillをますます輝かせていく予感がする。eillは5周年を経た新たな幕開けの先で、私たちにどんな楽曲を届けてくれるのだろうか。

※1:https://nonno.hpplus.jp/article/107874

eill、ライブ会場全体を引っ張っていくポジティブなパワー デビュー5周年ワンマンで飾った新たな“幕開け”

6月22日、シンガーソングライター・eillのデビュー5周年ワンマンライブ『eill 5th Anniversary Live …

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