緑仙、アーティストとしての飛躍を予感させるパフォーマンス メジャーデビュー発表した初ソロライブを観て

 指ハートを作りながら「ラブ〜! かわいい? みんなのほうが可愛いよ〜!」からはじまった2度目のMCでは、VTuberの生ライブについて言及。

 「今回のライブをやるにあたって、VTuberの業界はたくさんの試行錯誤をしているんだなとすごく感じてます。僕の活動を初期から見ている人、VTuberも初期から見ている人にとっては、また違う感動があるんじゃないかなって思います」「特にこういう生のライブシーンはこれからだと思うので、僕と、僕たちといっしょに作り上げていきましょう」

ぼっちぼろまる

 パンダ(の着ぐるみのダンサー)2体と一緒に披露した「ちゅ、多様性。」(ano)からは緑仙のバラエティ豊かな音楽性を実感できるコーナーへ。「この曲、すごく難しいから、みんなも一緒に盛り上がって!」という言葉に導かれた「聖槍爆裂ボーイ」(れるりり)では超高速のメロディ(ブレスのタイミングがほとんどない)をダイナミックに歌い上げる。さらにロックシンガーとしての強靭さを示した「モノノケ・イン・ザ・フィクション」(嘘とカメレオン)、「僕のテレパシー、受け取ってください!」と煽った「くらえ!テレパシー」(マハラージャン)も。観客としっかりコミュケーションを取り、生ライブならではの一体感を生み出そうとする姿も印象的だった。

 そして新曲「ジョークス」(緑仙)では、作詞・作曲を担当した“ぼっちぼろまる”がゲストとして登場。「イツライ」(2020年)の続編として制作されたこの曲は、歌うこと、アーティストとして活動していく決意をテーマにしたアッパーチューン。「退路も無用 イバラに塗れて/ちゃんと歩くから」というフレーズを手渡すように歌う場面は、このライブの大きなポイントだったと思う。

 濃密なエモーションを込めた「ミカヅキ」(さユり)からライブは後半へ。緑仙が所属するユニット・Rain Drops(現在は活動休止中)の人気曲「ラブヘイト」、儚く、愛おしい恋愛感情を描き出した「人魚」(ポルカドットスティングレイ)。多彩なボーカリゼーションを反映した楽曲によって、感動の度合いをさらに高めていく。

 ここで緑仙は、改めてオーディエンスに対して語りかけた。

「ここまでの人生、時代時代のいろんな音楽に支えられてきて、緑仙という人間が形成されていること。生まれてから21年の間に積み重ねてきた音楽をVTuberという立場で発信することによって、ファンとつながり、自分自身のステップアップにつながっていること。「ネガティブもポジティブもすべて、音楽に込めてきました。僕のことを応援してくださいとは言いません。みんなのことを応援したい。ちょっとでもみんなのエールになれるように、引き続き頑張っていきたいと思います」

 アーティストとしての根本的なスタンスを示す言葉とともに歌ったのは、「君になりたいから」。〈君になりたいから/明日も擬態して夜になる〉とアカペラで歌い出したこの曲に込めた切実な想いは、観客一人ひとりの胸に真っ直ぐ届いたはずだ。

 アンコールを求める強烈な声に導かれ、再びステージに登場した緑仙は、ソロメジャーデビューを発表。さらに新曲「WE ARE YOU」が「2023年 ベガルタ仙台応援ソング」になることを告知すると、オーディエンスからさらに大きな歓声と拍手が巻き起こった。

 この後、「WE ARE YOU」を初披露。アンセムと呼ぶにふさわしいスケール感、前向きな意志を解放するボーカルは緑仙の新機軸と言えそうだ。そして再び“ぼっちぼろまる”を呼び込み、「みなさんへのありがとうを言い足りませんが、僕らしく言葉ではなく歌でお届けしたいと思います!」というMCからラストの「イツライ」へ。ステージを降りた後、バックヤードから「今の気持ちを5周年という記念の日にみんなにお伝えできて、本当に気持ちよかったです。僕のことをずっと見てもらえるように、好きでいてもらえるようにがんばらせてください」という言葉を送り、記念すべき初ワンマンはエンディングを迎えた。

 10月4日にメジャー1stミニアルバム『パラグラム』のリリースを控えている緑仙は、2023年の後半に向けて、こちらの想像を超えるスピードで上昇していくはず。そのことを強く確信させられたライブだった。

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