ボカロ楽曲の人気傾向、ニコニコ動画とYouTubeでの違いは? 再生数などから徹底検証

 加えてニコニコ動画との顕著な違いは、やはり再評価期以降の楽曲の多さだ。2020年以降のVOCALOID曲のトレンドは、YouTubeから生まれる機会が圧倒的に多いことがここからも如実に分かる。

 依然としてハチ、DECO*27両名の人気が強力な一方で、両名以外のボカロPに関してはニコニコ動画と比較するとがらりと一変する。ニコニコ動画では今もなお圧倒的な再生数を誇るwowaka楽曲すらも、YouTube再生数TOP50に入るのは「アンノウン・マザーグース」1曲のみ。ここからもニコニコ動画とYouTubeにおけるVOCALOIDカルチャーの傾向の違いを見ることができるだろう。

 このように各動画サイトのVOCALOID曲再生回数には明らかな傾向がそれぞれあるが、最後に触れておきたいのはプラットフォームごとに投稿方法を使い分けているボカロPについてだ。ニコニコ動画ではVOCALOID版を、YouTubeでは本人歌唱版を投稿するクリエイターが現在は増えており、その最たる例の一人がEveである。そのため今回のランキングでは本人歌唱であるので除外しているものの、「ドラマツルギー」「お気に召すまま」などをはじめ圧倒的にYouTubeの本人歌唱版が再生されており、彼の戦略が数字にも反映されているといえる。

 重ねて興味深い点として、ニコニコ動画TOP50にはryo(supercell)の作品をはじめYouTubeに未投稿の曲が散見される一方、YouTubeのTOP50にランクインする全曲がニコニコ動画にも投稿されている。圧倒的なYouTubeのリーチがあったとしてもやはりVOCALOIDはニコニコ動画発のカルチャーである。そんな原点への敬意も感じられる結果となった。

 同じ音楽ジャンルであっても二つのプラットフォームにおいて視聴傾向に大きな差が出る現象は、まさにこういったネットを発祥としたカルチャーであるVOCALOIDならではのものだ。加えてこの結果を鑑みるに、おそらく動画配信プラットフォームのみならず様々な楽曲配信サービスでの人気傾向を比較検討することで、また異なるカルチャーの一面を知ることもできるに違いない。一文化としてひとつの成熟期を迎えるVOCALOID。今もなお流動的に変化し続ける部分もまた、大勢のリスナーの興味を惹きつけてやまない魅力のひとつなのだろう。

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