ももいろクローバーZ 高城れに、笑顔の裏には苦悩の連続「このまま続けても意味あるのかな」 自問自答の末に見つけた答え

「悩みを愛せるようになった」——アイドルとして強くなったきっかけ

 それでも高城は、一歩一歩、アイドルとして強くなっていった。それが活動を続ける自信にもなったのではないだろうか。その理由のひとつは、ももクロがこれまで体力的にも精神的にも「無理だ」と思えるような数々の出来事に直面したり(いや、飛び込まされたと言ってもいいかもしれない)、悔しい経験をしたりしたことだろう。

特報映像「ももいろクリスマス2013 ~美しき極寒の世界~」/ももいろクローバーZ
(WHITE HOT BLIZZARD MOMOIRO CHRISTMAS 2013)

 ライブに関しても、『NHK紅白歌合戦』への出場や国立競技場での公演などといった大きな目標だけではなく、公演中の最低気温4度を記録した極寒の西武ドームでのイベント『White Hot Blizzard MOMOIRO CHRISTMAS 2013 美しき極寒の世界』や、真冬の軽井沢のスキー場で開催された『ももいろクリスマス2015 ~Beautiful Survivors~』など、過酷な状況にも身を置いた。高城はそういったライブについて、「乗り越えてきた」と表現している。

 加えて、自分に向けられる意見や根拠のない噂について「今は人の話も全然気にならないし、いいことしか聞かない(笑)」「いろいろな人と会っていろいろな意見を聞いていくうちに、噂くらいで動じちゃいけない」(『ももクロ流』)と振り切って物事を考えられるようになったと語る(もちろんそれが、そういった心ない意見に対する正しい対処方法なのかは難しいが)。

 高城は「『がんばる』って言葉しか出てこないけど……どうがんばったらいいのか、自分の中で答えを見つけるまで、とことん悩もうって思ってるし、悩みを愛せるようになったかな」「悩みを持っているっていうのは、ちゃんと考えている証拠だから『まだ終わってない』って思えるじゃないですか?」(『Quick Japan vol.112』)と口にしている。果たして私たちは、悩みを前にしたときここまで強くなれるだろうか。「悩みを愛せるようになった」は、高城にしか言えない言葉だろう。

 語弊を恐れず言えば、かつての高城はももクロのなかでもっとも危うい存在だった。だからこそ、その成長はファンにもしっかり伝わり、感動させられる。

 アイドルとは、ファンはもちろんのこと、自分のことも幸せにするものである――。高城は「アイドルとは?」という自問自答を長年抱え、いろんな苦しみや迷いを覚えるなかで、そんな答えを見つけ出したのかもしれない。

 そのひとつが、2022年11月の結婚発表だろう。結婚も素晴らしいが、なによりアイドルを続けるという彼女の決断に心が揺さぶられた。高城は、女性週刊誌『週刊女性』(2022年11月29日号/主婦と生活社)で「自分のなかでいろいろな葛藤がありました。どう思われるのか、どんな声が返ってくるのか不安もあった」と素直な心境を口にしている。

 ただ、「モノノフ(ももいろクローバーZのファン)さんとの関係性も信頼していて、怖いなという思い半分、大丈夫だという思い半分でご報告させていただいたんです」と、どんなときも自分の支えになってくれたファンの存在に後押しされたと話す。そして「モノノフさんがこうして受け入れてくれて。改めてみなさんに、これから成長していく私も見届けていただきたいなと思います」とアイドルとしてより飛躍することを誓った。

 かつては「ももクロを続けたくない」とグループと向き合うことを避けたり、「辞めさせられるんじゃないか」と怯えたりした高城。そんな彼女が、結婚してもアイドルとして第一線で活動できるという大きな選択肢を切り拓いた。その存在の尊さは、この先さらに評価が高まっていくのではないだろうか。

ももいろクローバーZ、結成15周年とこれからのアイドル活動を語る 「できないことはないんだなって身をもって実感している」

ももいろクローバーZが結成15周年を記念したライブ『代々木無限大記念日 ももいろクローバーZ 15th Anniversary』…

ももいろクローバーZ 玉井詩織、アイドル戦国時代を煽動した“伝説の言葉” グループの未来を切り開く縁の下の力持ち

「バランスが良い」「安定感抜群」  玉井詩織を評する際、そういった言葉が真っ先に出るだろう。  書籍『ももクロ改』(20…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる