森 大翔、20歳の誕生日に刻んだ最初の集大成 初ワンマンライブは表現者としての新たなストーリーの幕開けに

森 大翔、初ワンマンライブレポ

 6月9日、森 大翔が初めてのワンマンライブ『69 Jewel Beetle』をShibuya eggmanで開催した。

 2019年に16歳以下によるエレキギターの世界大会『Young Guitarist of the Year 2019 powered by Ernie Ball』で優勝した経歴を持ち、Ichika Nitoやマテウス・アサトに憧れるSNS発のギタリストだった森が自ら詞曲を書いて歌うようになってからまだ決して長い時間が経ったわけではないが、この日は記念すべき20歳の誕生日であると同時に、2021年9月のデビューからここまでの最初の集大成にして、音楽家としての新たな始まりを刻んだ一夜となった。

 開演時刻を過ぎるとまずはサポートのメンバーが登場し、最後に地元である北海道産の木を使ったShikagawaのテレキャスターを持って森がステージに姿を現す。初々しい語り口でこの日を迎えることができた喜びを伝えると、まずは挨拶替わりにアルバムでも一曲目を飾っているインストナンバー「Prologue〜drift ice〜」でアコースティックギターによる流麗なプレイを披露。盛大な拍手が贈られると、イントロのテクニカルなフレーズが印象的な「台風の目」、さらには「すれ違ってしまった人達へ」をバンドとともに演奏し、場内からは手拍子も起こり始める。森はバッキングしながら歌を届けたかと思えば、忙しくカポをつけ替え、間奏では速弾きのソロを弾き倒し、そのときの満面の笑みがギターキッズとしての出自を強く感じさせる。

 テレキャスからTaylorのエレアコに持ち替えて披露されたのは「去年の春に北海道から上京してきたときに書いた曲」という「明日で待ってて」。ボーカリストとしての成長が確かに伝わると同時に、唐突なリズムチェンジや間奏での変拍子からは彼がもともとPolyphiaやChonの影響を受けてギターインストを作っていたことも伝わってきて面白い。再びテレキャスに持ち替えてブルースナンバーの「オテテツナイデ」を届け、サビではフロアから一斉に手が上がる盛り上がりを見せると、場内の熱気もあって森はここでTシャツ姿に。嬉しそうに「ニューギターです」と話して赤のストラトキャスターに持ち替えると、ライブ映え抜群の「最初で最後の素敵な恋だから」をエネルギッシュに演奏。フロントピックアップの丸みを帯びたトーンがこの曲の単音フレーズにマッチしていて、こうしたギターによる音色やプレイの違いも彼のライブの楽しさのひとつだと言える。

 「この曲を書くまではずっと自分自身の葛藤や気持ちを歌にしてきたけど、この曲は初めて自分以外の誰かに届けたいという想いで書きました」と話し、1番を丸々弾き語りで届けた「歌になりたい」は、表現者としての森の現在地を明確に示すもの。〈何時でもここにおいでよ/僕は君の傍にいるから〉〈君の元で溢れる手紙のような/そんな歌を僕は歌いたい〉と綴ったこの曲を、終始アットホームな雰囲気だった満員のオーディエンスの前で歌ったことは、シンガーソングライターとしての成長という意味において、非常に大きな経験になったに違いない。

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