Tani Yuuki、ポップアーティストとしての鮮やかな表情 観客と親密なコミュニケーションを交わした『多面態』ファイナル
6月1日、Tani Yuukiの全国ツアー『Tani Yuuki Zepp Tour 2023 “多面態”』のツアーファイナル公演が、神奈川・KT Zepp Yokohamaにて開催された。
このツアーは、3月にリリースされた2ndアルバム『多面態』を携えて開催されたもので、そのアルバム名が示唆しているように、この日のライブは、彼の表現者としての多様な側面が立体的に表現された公演となった。また何より、生粋の“ライブアーティスト”としての熱量が全編にみなぎっていたことも印象的だった。この記事では、Taniが秘めるポテンシャルを余すことなく見せつけてくれた一夜について振り返っていく。
ライブ開幕を告げるSEが鳴り響くと、ステージを覆う紗幕の裏側にTaniが現れ、左手の人差し指を高く上げたシルエットが大きく映し出される。そして、オープニングナンバー「生きる偉人たちよ」の幕開けと同時に紗幕が降り、「歌える?」という彼の問いかけを受けて、いきなりフロアから壮大なシンガロングが巻き起こった。また、力強いマーチングバンドのリズムを受けて歌うTaniの歌声には、ライブ冒頭とは思えないほどの熱量が満ちていた。まさに、圧巻のオープニングだ。
そして「Tani Yuukiのワンマンライブへようこそ! 横浜、準備はできてますか?」と観客に問いかけた後、Tani Yuuki流のEDMナンバー「We are free」「Night Butterfly」を間髪入れずに連発していく。各曲のドロップパートにおける高揚感が凄まじい。また、原曲よりも速いテンポで届けられた「Life goes on」では、音源よりもアグレッシブさを増幅させたロックサウンドが全面に出ていて、Taniの歌声もグッとエモーショナルに響いてくる。長いツアーを共にしてきたバンドメンバーとの息はバッチリ合っていて、この曲のドロップパートでメンバーと揃いの振り付けを披露する彼の表情からは、このライブの時間と空間を心から楽しんでいる様子が伝わってきた。
「俺たちの出会いに乾杯を!」という言葉を添えて披露した「Cheers」では、ステージの端から端まで移動しながら、一人ひとりの観客と親密なコミュニケーションを重ねる姿が印象的だった。ラストサビ前では、Taniが「歌える?」とフロアにマイクを託し、観客が〈乾杯〉と全力で応えてみせる一幕も。
その後も、ステージとフロアの熱烈なコミュニケーションは続いていく。「Myra」では、美麗なメロディを情熱的に歌い届けるTaniの想いに応えるように一人ひとりの観客が高く手を挙げ、また、アコースティックギターの弾き語りスタイルで披露された「愛言葉」「燦々たるや」においても、手拍子やコール&レスポンスが次々と巻き起こった。特に「何も考えたくないです」で、何度も声を昂らせながら感情を絞り尽くすように歌うTaniの歌に、観客の大合唱が重なっていく展開は感動的だった。この曲では、Tani自身の極めてパーソナルな心情が歌われているが、その上に一人ひとりの観客の心情が重なっていく展開は、まさにライブならではのもの。何度も観客と声を重ね合わせながら歌うTaniの充実感に満ちた表情が忘れられない。また、熱いコミュニケーションが続いた中盤の展開から一転して、壮大な楽曲世界へとグッと引き込む「マーメイド」「運命」のパフォーマンスも見事だった。