櫻坂46、3度目のツアーで感じた変化 シングル『桜月』や三期生の加入がグループにもたらしたもの
櫻坂46の全国ツアー『櫻坂46 3rd TOUR 2023』が6月1日、大阪城ホールにて千秋楽を迎えた。改名後初の東京ドーム公演を含む昨年秋のツアー以来、通算3度目となる今回のツアーは松田里奈の新キャプテン就任および三期生加入以降初めて行われるもの。4月12日の東京公演を皮切りに、全国5会場で合計11公演が開催された。残念ながら体調不良により遠藤光莉が欠席となってしまったが、この約2カ月間のツアー期間を通じてグループとしての充実ぶりや明るい未来をしっかり提示できたのではないだろうか。
筆者はツアー11公演のうち、初日の国立代々木競技場 第一体育館、5月25日のぴあアリーナMM、そして千秋楽の大阪城ホールの3公演を各会場で観覧しているが、そのどれもがグループにおけるターニングポイントとなるタイミングだったと認識している。例えば、初日は三期生が合流して初のグループ全体ライブであり、ぴあアリーナMM公演は4月30日の福岡国際センター公演を最後にグループを離れた二期生・関有美子のいない最初のステージであると同時に、筆者が観覧した5月25日公演では「BAN」において初めて一期生&二期生に三期生が合流した奇跡のパフォーマンスを披露したからだ。この短い期間にさまざまな変革期を迎えた櫻坂46だが、その都度グループの絆を盤石なものへと昇華させ続けてきた。そういった成長期間のひとつの結果を打ち出したのが大阪城ホールでのツアー千秋楽だったと、筆者は会場で実感した。
まず最初に、今回のツアーにおける大きな変化の要因としてひとつ挙げられるのが、今年2月にリリースされた5枚目シングル『桜月』の存在だ。同作では表題曲のセンターを二期生の守屋麗奈が務め、カップリング曲「Cool」では同じく二期生の大園玲、「無念」ではキャプテンの松田とこれまでオリジナル曲でのセンター経験のないメンバーが抜擢。さらに、谷口愛季がセンターを担当する三期生楽曲「夏の近道」まで収録されているのだから、同作がグループ第2章の幕開けを飾る作品だと言われるのも納得がいく。ツアー自体もそうした楽曲群を軸にして進行するのだから、ステージとしても昨年までのライブとは異なるのは当然だ。
過去2回のツアーは晩夏〜秋に開催されてきたが、今年はグループ名にちなんでなのか、桜の季節である春先からスタート。ほかの坂道グループが夏から秋にかけてツアーを行うことが多く、ちょうど『桜月』という象徴的なシングルを発表したタイミングでもあるので、差別化という意味でもこれは正解ではないだろうか。ここからは6月1日の千秋楽公演を軸に、特徴的な要素を紹介しながら本ツアーを振り返ってみたい。
今ツアーにおける特徴的なポイントは、ライブ本編を大園が中心に立つ「Cool」からスタートさせ、守屋をセンターに据えた「桜月」で終了させること、そして三期生が「夏の近道」以外の楽曲でも単独パフォーマンスをするチャンスが与えられたことだろう。森田ひかるや山﨑天、藤吉夏鈴、田村保乃といったメンバーを中心に展開されることが多かった過去のライブだが、センターを務めるメンバーが増えたことで見せ方に多様性が生じたこと、また三期生が加入したことでグループ全体により彩り豊かさを与えたことは、過去2回のツアーとは大きく異なるポイントではないだろうか。
また、昨年11月をもって初代キャプテンの菅井友香が卒業したこと、初めての後輩ができたことで、二期生の意識の変化がパフォーマンスや公演中の表情からも伝わった気がしたのも、今ツアーの大きな収穫だった。一期生が次々と卒業しているという事実も大きく作用しているのだろう、「今こそ自分たちがグループを引っ張っていくんだ」という強い意志はライブ中に放たれる一人ひとりのオーラにも表れており、新たにセンターポジションに立ったことで自信を付けた守屋や大園はもちろんのこと、ダンス面でグループを牽引する場面の多い武元唯衣、表現力の幅を広げつつある大沼晶保、存在感をどんどん強めている幸阪茉里乃や増本綺良など、確実に以前よりも目を奪われる機会が増えている。もちろん、それは新キャプテンの松田にも言えることで、本人はMCにて「メンバーに不甲斐ない姿を何度も見せてしまった」と口にしたが、その言葉の一つひとつに以前より説得力や重みが増し始めているのも事実だ。菅井という偉大な存在の後任だけに重責も感じているだろうが、三期生が加わった新生櫻坂46らしい独自の“らしさ”をどんどん確立していってほしい。
そして、加入から半年にも満たない三期生が、すでにグループにとって大きな戦力になっていることが証明されたのも、このツアーの収穫だろう。現時点で、三期生のオリジナル楽曲は「夏の近道」のみ。しかし、今回のツアーでは「Dead end」を村井優センターで披露したほか、「Buddies」や「櫻坂の詩」にも一期生、二期生とともに参加している。さらに、先にも触れたように5月25日の神奈川公演、および5月31日と6月1日の大阪公演では「BAN」にも参加し、一期生や二期生の圧倒的な存在感に喰らいつくように、“1曲入魂”と言わんばかりのパフォーマンスを見せ、観る者を驚かせた。
「夏の近道」はセンターの谷口を筆頭に、全体のパフォーマンス力や表現力が公演を重ねるごとに向上していることにも気づかされる。その気迫に引っ張られるように、客席のBuddies(櫻坂46ファン)の熱気もどんどん上昇するなど、この曲が本ツアーにおけるハイライトのひとつだったことは誰もが認めるところだろう。そして「Dead end」では、村井のオールマイティ感を随所から感じ取ることができ、もとからこの曲のセンターだったのではと錯覚するほどだった。もちろん、それはほかのメンバーも同様で、「先輩の曲を踊らせてもらっている」という姿勢はまったく感じられなかった。さらに、石森璃花をセンターに据えた「BAN」も、3月の『おもてなし会』で観たとき以上の完成度の高さを誇り、一期生や二期生が途中から加わっても実力の差を大きく感じることはなかった。曲が終盤に進むにつれて体力面などでの差が出てしまう場面も少なからずあったものの、そこに関しては経験を重ねていく中で解消されるはず。そういった意味でも、このツアーはグループにとって大きなターニングポイントになるのではないだろうか。