南極を目指す4人の少女の物語 舞台『宇宙よりも遠い場所』ゲネプロ取材会レポート
舞台『宇宙よりも遠い場所』のゲネプロ取材会が5月17日、渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホールで行われた。原作となるのは、“よりもい”の略称で知られる2018年放送の同名テレビアニメ作品。その舞台化となる今公演では、民間の南極観測隊に同行して南極を目指す4人の少女を堀内まり菜、石井陽菜、岸みゆ(#ババババンビ)、北澤早紀(AKB48)が演じるほか、田口華、清司麗菜(NGT48)、緒月遠麻、石丸奈菜美、安藤瞳、桑原裕子、中村まことがキャストに名を連ねる。作・演出は土田英生、共同脚本に鈴木智晴が担当している。
何かを始めたいと思いながら、なかなか一歩踏み出すことができず、何もないまま高校2年生を迎えた“キマリ”こと玉木マリ(堀内まり菜)と、南極行きを志して奔走し、周囲から遠巻きに変人扱いされている小淵沢報瀬(石井陽菜)が出会ったことから、物語は動き出す。キマリと報瀬は、高校に行かずアルバイトをしながら高卒認定を取得し大学受験を目指す三宅日向(岸みゆ)、幼少から芸能活動を続けてきた白石結月(北澤早紀)と出会い、4人で日本から1万4千キロ離れた南極へと旅立つ。
石井が演じる報瀬は、南極観測隊員だった小淵沢貴子(安藤瞳)を母にもつ。母の古くからの友人で、観測隊の隊長である藤堂吟(桑原裕子)との間に複雑な思いをめぐらせながら、南極行きを共にする。かたくななまでの意志の強さを見せる一方、観測隊のレポートでは極度のあがり症が顔を出す報瀬のキャラクターを、石井は時に凛とした佇まいで、また時にコミカルに演じながら、物語の中核を担っていく。
かつて通っていた高校での苦い記憶を抱えながら南極行きに参加し、道中のとあるトラブルの主役にもなる日向を演じる岸は、堀内、石井、北澤とのかけあいをテンポよく繋ぐ役割を果たし、4人の会話パートに勢いをもたらす。結月を演じた北澤は、結月のマネージャーでもある母・白石民子(緒月遠麻)との切実なやりとりを通じて、芸能活動がもたらす葛藤を浮かび上がらせる。4人で関係性を育んでいくなかで、そんな日向と結月にも大きな変化がもたらされる。そして堀内が演じるキマリは、報瀬と出会い、南極行きという目標を見つけたことで一気に人生を動かし始める。南極行きへの期待と高揚を朗らかに表現する堀内のキマリは、4人が築いてゆく絆を象徴するキャラクターになっている。
キマリの幼なじみの高橋めぐみ(田口華)と、キマリの妹・玉木リン(清司麗菜)は、いわばキマリの南極行きを見送る側のキャラクターたちである。また同時に、目標を見つける以前からのキマリという人物を描き出す、重要な人々でもある。2人が登場するシーンでは、いくぶんテレビアニメ版を補完するような趣もみせつつ、キマリの人物像や関係性も立体的になっていく。また、田口と清司はそれぞれ二役で観測隊のメンバーも務め、大きく性格の異なる人物を演じ分けている。
桑原演じる藤堂とともに、かつて報瀬の母と南極での日々を過ごした前川かなえ(石丸奈菜美)や、舞台版独特の味わいをもたらしている観測船の船長・迎千秋(中村まこと)らが、観測隊パートを支えながら4人の旅を見守る。とりわけ、幼い頃からの報瀬を知る藤堂を演じる桑原は、やはり観測隊チームの最重要人物であり、たびたび場面を引き締める役割を果たしている。
それぞれに異なる動機やバックグラウンドを持って南極へと向かい、4人がかけがえのない関係性を築いてゆく道のりが大きな魅力の舞台『宇宙よりも遠い場所』。その旅の先に4人は何を見るのか、ぜひそのクライマックスを見届けてほしい。公演は渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホールにて、5月21日まで行なわれる。
舞台『宇宙よりも遠い場所』オフィシャルサイト
https://yorimoi-stage.com/