レマ、世界を席巻する“アフロレイヴ” ドレイクやリアーナも支持するアフリカ音楽界の新星が成し遂げた功績
そんな「Calm Down」が世界的に大ヒットしているレマだが、彼は自身を「Rave Lorde(レイヴ卿)」と呼び、2021年には自身の音楽スタイルを「アフロレイヴ」と命名したと発表している。彼は、アフロレイヴは「アフロビーツのサブジャンルであり、アラブやインド音楽のようなメロディも取り入れている」と説明(※4)。EP『Rema』に収録されている楽曲「Iron Man」では、特にその独特なメロディスタイルが目立っている。
「Iron Man」の制作当時、レマのチームも従来のアフリカンポップスのメロディとは違うスタイルに疑問を持っていたという。しかしレマは「やり方が違うって言われるときもあるし、“普通じゃない”と言われることもある。でもそれは自分が正しいことをやっているという意味だ」とコメントしており、その独特のメロディセンスが彼の最大の強みとなった(※2)。
デビューアルバム『Rave & Roses』でもその独特なメロディセンスを聴くことができる。タイトル通り、愛とグッドバイブスを表現したアルバムだが、アフロレイヴというサウンドを定義づける作品になったと言えるだろう。今年の4月には『Rave & Roses』のデラックス版『Rave & Roses Ultra』がリリースされ、「Calm Down」のリミックスを含んだ6曲が追加された。全22曲が収録されたデラックス版でも、世界中の音楽から影響された彼のメロディライターとしてのセンスを聴くことができる。
このように独自のスタイルを貫き、新世代のグローバルなポップスを作っているレマだが、彼はナイジェリア音楽の世界的な流行において重要な役割を担っている。フェラ・クティやトニー・アレンなどのアーティストによって確立されたアフロビートとは違い、ダンスホール・レゲエ、ヒップホップ、R&Bなどから影響された現代のポップミュージックとして世界的に流行している「アフロビーツ」であるが、彼はこの流行をさらに促進させている(ちなみにバーナ・ボーイなど、アフロビート文化とアフリカ各国の文化をリスペクトする上でアフロビーツという言葉を使うべきではないと考えているアーティストもいる)(※5)。
2010年代以降、ナイジェリア出身のアーティストが作り出すポップスの勢いは止まらない。2010年代後半には、ウィズキッド、バーナ・ボーイ、ダヴィドなど、ナイジェリアから世界的スターが生まれ、流行に敏感な欧米のアーティストとファンに大きく注目された。2016年にはドレイクが「One Dance」でウィズキッドをフィーチャリングし、昨年フューチャーが「Wait for U」でテムズとコラボ。その勢いを促進させるように、レマのような新世代が世界的に大ヒットしており、今年のNBAのオールスターゲームのハーフタイムショーにはバーナ・ボーイ、レマ、テムズが出演している。従来ヒップホップアーティストが出演することが多いNBAオールスターゲームだが、このようにナイジェリアのアーティストが起用されており、世界的トレンドになっていることがわかる。レマのようなアーティストがさらにサウンドを多様化させ、今後も世界の各地で根づいていくことは間違いないだろう。
(※1)https://www.complex.com/music/rema-interview
(※2)https://www.thefader.com/2019/06/24/rema-dumebi-interview
(※3)https://dailypost.ng/2023/05/09/rema-makes-history-on-us-billboard-hot-100-canadian-billboard-charts/
(※4)https://thenationonlineng.net/my-brand-of-music-is-afrorave-says-rema/
(※5)https://www.okayafrica.com/afrobeats-genre-name-stop-op-ed/
■リリース情報
「Calm Down」試聴/購入:https://virginmusic.lnk.to/Rema_CDwSG
デビュー・アルバムのデラックス版
『Rave & Roses Ultra』
デジタル限定配信中
アーティスト日本公式サイト:https://www.virginmusic.jp/rema/