ナナヲアカリ、新たな旅へ飛び出す大切さ 和ぬか&100回嘔吐とのコラボ曲が高める『江戸前エルフ』への共感性
ナナヲアカリが6thシングル『奇縁ロマンス』を5月10日にリリースした。表題曲は4月より放送されているTVアニメ『江戸前エルフ』(TBS系)のオープニングテーマに起用されており、TikTokで大ヒットとなった「ヨワネハキ feat. 和ぬか, asmi」をはじめ、SixTONESのユニット曲「真っ赤な嘘」やAimerが参加したMAISONdes「いつのまに feat. Aimer, 和ぬか」でも話題の大学生シンガーソングライター・和ぬかによる書き下ろし。ナナヲアカリによる歌声と和ぬか特有のメロディ、そして編曲を担当した100回嘔吐によるサウンドがアニメの世界観ともリンクした楽曲となっている。
『江戸前エルフ』は、異世界から召喚されたエルフが江戸時代より続く東京の神社でオタク趣味を謳歌しているというストーリーで、歴史的な知識からVRなどの最新テクノロジーまで、時代を横断したトピックが数々登場する。この伝統文化と現代文明とが同居したユニークな世界観に、和なテイストを得意とする和ぬかの作風が合っている。しかも、舞台となっている現代の東京・月島の景色が緻密に再現されたリアリティあるアニメーションのため、太鼓などの伝統的なサウンドを取り入れつつも、あくまでポップミュージックとしてまとめ上げる100回嘔吐の手腕とも親和性が高い。伝統的でありながら現代的であるという、絶妙なバランスが楽曲でもしっかりと保たれているのである。
また、ナナヲアカリのボーカルも主題歌としてうまくハマっている。同アニメの登場キャラクターはほぼ全員女性。特に主人公の小金井小糸は16歳の女子高生で、高級ブランドのバッグを買ったり、代官山に憧れていたり、好きなお菓子はマカロンだったりと、俗っぽい感覚を持っている。等身大の魅力を持つナナヲの歌声がオープニングに飛び出すことで、そうした女性キャラクターたちに、視聴者が感情移入しやすくなっていると感じる。加えて、共感を促すという面では、ナナヲをはじめとした本曲に関わるアーティストがネットシーンで支持される存在であるという点も一役買っていると言えるだろう。
“ダメ天使”とも称される個性的なキャラクターで人気のナナヲアカリは、近年ボカロPを中心に数多くのクリエイターの楽曲を歌ってきた。最も印象的だったのは、ナユタン星人が作詞作曲した、TVアニメ『理系が恋に落ちたので証明してみた。』(TOKYO MXほか)エンディングテーマ「チューリングラブ feat.Sou」である。男女ボーカルによる激しい掛け合いが繰り広げられる同曲では、ナナヲの少女のような可愛らしさとエネルギッシュなボーカル表現が随所に発揮されており、当時のネット音楽シーンに鮮烈なインパクトを残した。SNSではこの曲の「歌ってみた」や「踊ってみた」が多数投稿され、YouTubeでのMV再生数は現在8,000万回を突破(2023年5月上旬現在)。以降、ナナヲは、煮ル果実が書き下ろした「ヒステリーショッパー」や「ランダーワンド」、みきとPが制作した「逆走少女」、DECO*27による「んなわけないけど」や「魔法」、すりぃがプロデュースした「ヤンキーダンス」など様々なボカロPによる楽曲を発表し、ネットの音楽シーンを代表する歌い手としてその地位を確立してきた。こうした活動によって醸成された彼女の親しみ易いイメージは、アニメに登場する一般感覚と近いキャラクターたちともリンクする。
一方で、和ぬかもまたネット上の音楽シーンを代表する存在だ。2021年に発表した自身初のオリジナル曲「寄り酔い」でいきなりヒットを飛ばすと、程なくして「ヨワネハキ」がSNS上で一大ムーブメントを巻き起こす。シンガーソングライターのasmiとコラボした同曲は、和ぬかのキャッチーなメロディセンスとasmiのキュートな歌声が話題を呼び、ストリーミングの累計再生数は昨年の段階ですでに1億回を超えた(※1)。その後もnatsumiやSou、Aimerといった様々な歌い手と手を組み、ネット発の次世代アーティストとしてその作曲力を存分に発揮している。