かの香織、手塩にかけた音楽と日本酒でもてなす極上の一夜 親密な空間の中で行われたスペシャルイベントに潜入

かの香織、スペシャルイベントレポ

 4曲目には、その里アンナが、ソロのアカペラで「長朝花」という島唄を披露した。奄美ではお祝いの席で歌われる曲とのことで、「今日という素晴らしい日が、いつまでも続きますように。お祝いの気持ちを込めて歌わせていただきます」と里。かののアーティスト活動40年と、ベストアルバムリリース記念イベントの開催に華を添えた。会場に響き渡った里の歌声はモンゴルのホーミーのように独特のエキゾチックな響きがあり、厳かで神聖な雰囲気に背筋がピッと伸びるような感覚があった。

 MCではこれまでの多彩な活動を振り返りながら、「音楽にもお酒にも命がある。どちらもすごく似ている」との持論を展開したかの。確かにお酒はその日の気温や天候によって仕込み方も変わり、人が手を加えてあげればあげるほど美味しくなるそう。音楽も、制作に時間をかけて愛情を込めれば、愛した分だけいい曲になる。また、日によって聴こえ方や感じ方も変われば、この日のようにピアノとギターのみのアレンジなど、アレンジ一つで雰囲気もがらりと変わることから、音楽も生き物と言うことができるだろう。1996年のヒット曲「午前2時のエンジェル」を歌った後は、装いを新たにベストアルバムに新録した「BEAUTIFUL DAYS」と、アンコールで「ばら色の人生(PIANO VERSION)」を披露した。

 「BEAUTIFUL DAYS」は〈3つの時の写真のワタシ〉と歌詞にあることから、「夜空の星ばかり見ている子供で、いとこから心配されていた」と、子供の頃のエピソードも披露。しっとりとしたギターのアルペジオをバックに、はにかむような表情で可愛い歌声を聴かせていた。

 最後に歌った「ばら色の人生(PIANO VERSION)」は、愛する相手と過ごした日々を思い出しながら、それを大切にそっと抱きしめるような歌詞が秀逸。「当時は無意識で書いたのに、今はすごく胸に響いちゃってます」と かの。「年を取ると分かることもある」と、同じ時代を共に生きてきた来場者に同曲を贈った。

 人生を半分以上生きてくると、それぞれ事情や悩みを抱えるようになるもの。さまざまな別れや再出発もたくさん経験してきただろう。そんな人生に寄り添い、文句一つ言わずずっと傍らに居続けてくれた音楽。それをまだ現役で作り続けてくれることの喜び。それをイベントという形で共有できることの素晴らしさ。40年間、変わらぬやわらかい雰囲気としゃべり口調、そして可愛らしさ。こうしてまた会えた喜びが、希望を与えてくれるのである。

●かの香織[Ave Maria]Music Video

■リリース情報
『CAOLI CANO COLLECTION~BEAUTIFUL DAYS~』
発売中
Blu-spec CD2×2枚+BD1枚
価格:8,800円(税込)

『CAOLI CANO COLLECTION』
発売中
Blu-spec CD2 (Disc-1のみ)
価格:2,800円(税込)

詳細:https://www.110107.com/s/oto/page/CaoliCano?ima=0409

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