かの香織、手塩にかけた音楽と日本酒でもてなす極上の一夜 親密な空間の中で行われたスペシャルイベントに潜入

かの香織、スペシャルイベントレポ

 昨年12月にベストアルバム『CAOLI CANO COLLECTION ~BEAUTIFUL DAYS~』をリリースした かの香織が2月3日、購入者を対象としたスペシャルイベントを東京・紀尾井町サロンホールで開催。その模様がYouTubeにて5月10日に公開された。

かの香織[CAOLI CANO  SPECIAL LIVE ーdigest editionー]

 同公演では、アンコールを含めた7曲とトークで来場者を楽しませたほか、2002年より「はさまや酒造店」12代目として日本酒造りに携わっていることから、「はさまや酒造店」とのコラボ企画で金粉入りの新酒を振る舞い来場者をもてなした。ハスキーさがありながら甘く華やかな香りを放つ彼女の歌声を聴き、日本酒をたしなむ。来場者たちは、極上の大人のひと時を楽しんだ。

 かの香織は、大学生の時に結成したバンド ショコラータのボーカリストとして、1985年にシングル『いつか見た青空』とアルバム『Cioccolata』でデビュー。当時原宿にオープンしたばかりだった日本初のクラブ「ピテカントロプス・エレクトス」でライブ活動を中心に活動し、イタリア語やオペラ/歌劇の歌い方を取り入れた独自の音楽スタイルや、ファッションやアートを取り入れたビジュアルも話題となった。

 イベントは、1993年にリリースしたミニアルバムの表題曲「Familia」からスタート。目を閉じて音を聴きながら、ハスキーな歌声を披露した彼女。声のかすれ具合を例えるなら、LPレコードのノイズのような味わいで、決して歌を邪魔することなくむしろそれが心地よい。髪をかき上げ、身振り手振りを交えながら優しく歌い上げた彼女。〈まるで昨日のことのようね〉という歌詞のフレーズが、30年以上の年月を一気に巻き戻してくれた。

 「お久しぶり」と挨拶を終え、来場者と乾杯を交わした かの。この日提供した日本酒の説明をする姿はしっかり12代目で、「お酒の話になると長くなるので」と軽く笑いを取る。続いて1994年にリリースしたシングル曲「青い地球はてのひら」を披露し、フェイクを交えた歌声で観客を酔わせた。飛行機の窓から観た青い地球の美しさを歌ったこの曲は、歌詞に〈上海 サンフランシスコ ブラジル ミラノ チュニジア〉などさまざまな国名が登場する。コロナ禍も収束しつつあり海外渡航も可能になった現在、「今度はどこに行こうかな」と、まだ観ぬ遠い国に思いを馳せながら歌声に耳を傾けた人も多かっただろう。

里アンナ、かの香織

 かの香織は1991年にソロデビューして以降、自身の活動と並行してアーティストへの楽曲提供も積極的に行っており、近年は坂本真綾、牧野由依、安野希世乃など声優アーティストへの提供も目立つ。3曲目には、2005年に公開されたアニメ映画『劇場版ツバサ・クロニクル 鳥カゴの国の姫君』のエンディング主題歌として、主人公・サクラの声優を務めた牧野由依が歌った楽曲のセルフカバー「AMRITA」を披露した。曲名の「アムリタ」はインドの神話に出てくる不老不死の与える神秘の飲料のことで、MCでは学生時代に北インドに行った話や、最近南インドに行って帰ったら、すぐにベストアルバムの新録曲3曲の収録があって「怒濤の毎日だった」と話す。さらに「今後はアジアっぽい曲も増やしていきたい」と展望を語る場面もあった。

 同曲はアルバムで新録され、奄美大島出身の島唄歌手・里アンナのコーラスが加わったものが収録されている。もともと里による多重録音の島唄に感銘を受け、ぜひコラボしたいと声をかけたのだそう。この日はゲストとしてレコーディングに参加した里アンナも登壇し、ギターとピアノ、そして里のコーラスをバックに歌ったかの。島唄独特の節回しによるコーラスが実に神秘的で、目を閉じて耳を傾けながらゆっくり体を揺らした来場者。インドと奄美大島、そしてかの香織の歌声が、不思議な融合を果たした。歌い終え、「緊張した~」と里。かのも「初の試みだったけど感動した」と、口々に喜ぶ姿が印象的だ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる