IVE、「Kitsch」で示す自信と自己愛 デビューから一貫したコンセプトの打ち出し方
そして、今回の新曲「Kitsch」は、彼女たちがこれまで描いてきた世界観をさらに突き詰めた新境地が開かれているように思う。「安っぽいもの、通俗的なもの」という意味を持ち、文化批評用語としても用いられている単語がタイトルとなった同楽曲。「誰かの評価に振り回されたりしない。私は自分らしく、自分の人生を生きる」というメッセージ性が随所に散りばめられている。
例えば、WONYOUNGが魅惑的な表情で歌う〈It’s our time 우린 달라 특별한 게 좋아 Oh what a good time(私たちの時間よ 特別な物が好きだから みんなと違うの なんていい時間)〉や、YUJIN(ユジン)が大人びた表情で歌う〈난 절대 끌리지 않는 것에 끌려가지 않아 That’s my style(惹かれないものには絶対に振り回されない これが私のスタイル)〉、REI(レイ)が挑戦的な表情で歌う〈내가 좋아하는 것만 하면 뭐 어때 Huh This ain’t your life 쓸데없는 생각 따위 Go away(好きなことだけしてもいいでしょ あなたの人生じゃない 余計な考えは捨てて)〉など、各メンバーの個性と魅力を活かしながら、歌詞に込められたメッセージが表現されている。
また、今回の楽曲は過去3枚のシングルのタイトル曲とは異なり、歌詞の中に「君」が不在であることも特徴のひとつとして挙げられるだろう。「ROYAL」と同じく、「Kitsch」は誰かに恋愛的な意味での好意を向けられることがなくとも、自分を愛せる少女の姿を描いているのだ。IVEのファン層に多いMZ世代(1980年代半ばから1990年代初頭に生まれた世代)はもちろん、私たちが「できることならこうありたい」と思う、自信と美しさ、可愛らしさ、かっこよさ、強さを兼ね備え、人生を自分らしく楽しむ女性像が色鮮やかに表現されているからこそ、同楽曲は先行リリース直後から多くのファンの心をつかみ、韓国の音楽チャートや日本のYouTubeチャートで早々に存在感を示しているのだと考えられる。
このようにIVEは、各メンバーの魅力を存分に引き出しながら、楽曲の中で10代の少女の持つ瑞々しく可憐な美しさと、自分を愛して自信を持ち、堂々と自分らしくある姿を描き出してきた。そのようなコンセプトの打ち出し方は、「強くかっこいい女性」を表現してきた近年のガールクラッシュと近い場所にありながらも、新しい角度からのコンセプトとして、IVEならではの独自の表現を可能にしていると言えよう。
『I've IVE』には、先行公開された「Kitsch」のほかに、タイトル曲「I AM」を含む全11曲が収録される。彼女たちはアルバムの中でコンセプトをどう突き詰め、新たな表現へと昇華させているのだろうか。
※1:https://ive-official.jp/mob/pageShw.php?site=DIVE&ima=0254&aff=ROBO004&cd=profile
※2:『AERA』2023年1月30日号 No.4(朝日新聞出版)
※3:各楽曲の韓国語歌詞は筆者訳
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