小林柊矢、観客との一体感あふれたワンマンライブ『ねぇほら笑ってよ』 隣に並び一緒に歩んでくれる楽曲の数々

 MCでは2月にリリースした1stフルアルバム『柊』についてトークを展開した。「親がつけてくれた大切な名前の一文字をつけることができてうれしい」と語った小林。また柊の葉っぱにはトゲがあることから、魔除けや厄除けとして使われることが多く、クリスマスリースなどに柊が使われるのは、そういった意味もあってのことだそう。柊矢という名前には、両親の愛情がたっぷり込められているのだろう。それを踏まえて小林は、「みんなを悲しみからそっと守ってあげられるようなアルバムになったらいいなと思って『柊』と付けました」とコメント。親から小林へ、小林からファンへ、そしてファンから――大切な相手を守りたいと思う気持ちの輪を、どんどん広げていきたいという、小林の思いが『柊』という一文字に表されていることを感じた。そんなアルバム『柊』からは、前述の「白いワンピース」や「スペシャル」に加え、「名残熱」「愛がなきゃ」「死ぬまで君を知ろう」など多くの楽曲が披露された。

 このライブの特別な演出である弾き語りコーナーは、小林のエモーションが込められた歌い回しで、彼の持つ歌心を感じさせた。最近はよくピアノで曲を作ると話した小林。人生で初めてピアノで作ったという「茶色のセーター」では別れたいけど別れたくない、好きだけど嫌い、そんな心の葛藤を描いた歌詞と優しい声が、繊細なピアノとマッチ。観客は目を閉じて静かに聴き入った。また、アルバム『柊』のボーナストラックに収録された「小田急線」、2020年8月にデジタルリリースされた「ドライヤー」の2曲を、アコースティックギターの弾き語りで聴かせた。大切な人とのありふれた日常を描いた歌詞が醸し出す、大切でかけがえのない思い。愛おしい日々と、それとは背中合わせにある別れ。悲しみを携えた小林の歌声が心の琴線に触れ、会場には今にも泣き出しそうな人もいたように思えた。

 「せっかくのワンマンライブなので、僕の弱いところを少し聞いてほしい」と、MCで胸の奥にしまっていた思いを吐き出した。「メジャーデビュー後、絶対に売れなきゃというプレッシャーがのしかかって、今でも不安な日々がずっと続いています。まだまだ未熟だけど応援してくれるファンやチームのスタッフなど、たくさんの人の愛でやってこられた。今日はそのことをすごく実感している。神様がそういう機会を与えてくれたのだなと思って、愛をかみ締めています。時代と共に僕の音楽は変わっていくかもしれないけど、皆さんへの愛の気持ちは絶対変わらない。これからもぜひ一緒に泣いて笑って、一緒に歩んでください」。その言葉に観客は大きな拍手と声援で応えた。終盤、タオルを回して会場が一体になった「私なりの」。コーラスを観客が歌い、それに応えるように歌う小林。コール&レスポンスとはまさしくこのこと。客席からは「柊矢、ありがとう」という声も聞こえ、小林も「こちらこそ」だよと答えた。

 アンコールでは、ドラマ『なにわの晩さん!~美味しい美味しい走り飯~』(朝日放送テレビ)主題歌として、小林の名を広めた「笑おう」を披露。同曲のMVに出ていたキッズダンサーも登場し、振り付けと共に同曲を披露した小林は、客席に向かって「マスクしていても分かるくらい、今日イチの笑顔で笑いましょう」と呼びかける。会場には、どんな大きなライブ会場にも負けない「ラララ」と歌う声が響き渡った。

 「ついてこい」でも背中を押すでもなく、一緒に。小林柊矢の楽曲は、隣に並んで一緒に歩んでくれる。そのことを体現したライブだった。弱さを隠すことなく、それでも元気で明るくて熱い。小林柊矢のライブは、なんだか元気をもらえる。

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