蒼井翔太、観客と愛と感謝を伝え合ったライブツアー『WONDER lab. Garden』 これからの飛躍も誓った公演に

蒼井翔太『WONDER lab. Garden』レポ

 今年でアーティストデビュー10周年を迎える蒼井翔太が、2月18日に東京・両国国技館で全国ライブツアー『蒼井翔太 LIVE 2023 WONDER lab. Garden』のファイナルを迎えた。国技館でのワンマンライブは2017年の『WONDER lab. Ø(ゼロ)』以来5年ぶりで、本公演のチケットはソールドアウトしていた。

 2021年12月から2022年2月にかけて行われた全国ツアー『蒼井翔太 LIVE 2021-2022 WONDER lab. coRe』からはちょうど1年ぶり。地元である福井での凱旋公演を皮切りに、愛知、兵庫、東京と全国4都市をめぐるライブツアーのコンセプトは“Garden”となっており、ステージ上には花が一輪も咲いていない巨大な木が置かれていた。のちのMCで「皆さんの持ってるペンライトでいろんな色をこの会場に咲かせていただけたらと思います。皆さんがいなくては、このGardenは成立しない形になっています」と語っていた通り、観客が掲げるペンライトがGardenの一部となっており、ライブを思い切り楽しみ、一緒に作り上げることがテーマとなっていた。

 開演時間になると場内が暗転し、ステージ上の巨木にブルーのラインが浮かび上がった。根から吸い上げたエネルギーが枝葉まで届けられると、巨木の前にピンスポットが当たり、蒼井翔太が庭園の妖精のように現れて、伸びやかなロングトーンを場内いっぱいに響かせた。オープニングナンバーは1stシングル曲「Virginal」。6人のダンサーを従えて踊りながら、物語の始まりを告げるとともに、“君”と“僕”で〈劇的な一体感 シンクロニズム〉を味わおうというライブのテーマを提示。低音からファルセットまでダイナミックに展開する「Stay With Me!!」でクラップが湧き上がると、高速のエレクトロニックロック「INVERTED」では、「声が出せない分、手をあげて僕に光をください」とリクエスト。オーディエンスがペンライトを真っ赤に照らすと、蒼井は全ての光を受け取って、満面の笑顔を見せた。

 「ありがとうをたくさん込めた曲です」と語った、自身が作詞作曲した「ずっと…」からはバイオリンをフィーチャー。「知ってる人は心の中で歌って」と呼びかけたが、続くハードロックナンバー「秘密のクチヅケ」で、〈I Love You〉というフレーズに合わせてハートを描くシーンや、人差し指を口の前に立てる仕草に、思わず歓声をあげ、名前を叫びたくなる瞬間もあった。そして、東京公演のみの披露となったトランシーな「UNLIMITED」でフロアを盛り上げると、バイオリンソロからダンサーコーナーを経て、シースルーのガウンに着替えた蒼井翔太が巨木の上に登場。「哀唄」では凛とした強さと切なさを表現し、「HEAVEN!」ではガウンを翻し、〈「ヤレるもんなら ヤッてごらん」〉とワイルドに挑発。「Melodia」では風に吹かれながら〈生まれた愛の華を 枯らさないように〉と約束すると、場内は若葉色に萌え上がった。

 MCでは、ツアーのコンセプトに関して、「本当はみんなへの感謝を込めた歌の花束をお渡しするという意味でBouquetを考えていたんですが、Bouquetじゃ足りないなということで、Gardenになりました」と明かした。そして、観客にペンライトで自分の好きな色を掲げてもらい、場内にたくさんの花を咲かせた上で、「この世界を大きな木に例えて、僕はその大きな木に蒼井翔太という個性的な花を咲かせたいと思って活動しています」と決意を表明。続けて、「皆さんに好きな色をつけてもらいましたが、僕は好きな色が2つあります。1つはどんな色も柔らかくできる、どんな色ものせられる“白”。もう1つは、強い“赤”と優しい“青”を混ぜ込んだ“紫”。僕の声を表している“紫”をもっともっと濃くして皆さんに届けられるように自分自身も強くなっていきたい」と宣言。和楽器をフィーチャーしたロックナンバーで、民謡的な節回しや日本舞踊のようなしなやかな動きに加え、「君以外見えない」というセリフもある「MURASAKI」。「参りましょう!」という掛け声の後に天にも登るようなハイトーンを響かせる「零」。この2曲は、強さや激しさと優しさや包容力を併せ持つ蒼井翔太の歌声の魅力を存分に味わえる時間だった。

 『ポプテピピック TVアニメ―ション作品第二シリーズ』のOPテーマ「PSYCHO:LOGY」ではオペラのような歌唱法を見せると、東京公演ではポプ子とピピ美が登場して観客を沸かせた。そして、「BAD END」で場内をさらに熱く燃え上がらせ、「Existence」ではハードなEDMに合わせてクラップを煽った後、ムードは一転。動から静へと移行し、真っ白い光の線を一身に受けた蒼井翔太は、一人立ち尽くしたステージで「I am」を力強く歌い上げた。アウトロで、今は孤独ではない自分を確かめるかのように観客一人一人の顔をゆっくりと見回す姿も印象に残っている。

 ここで、2022年にたくさんの出会いがあったことを振り返り、「皆さんが蒼井翔太にもっともっと羽ばたいてほしいと応援してくださっているおがけです。本当にいつもありがとうございます。自分の翼だけでは乗り越えられなかったこともいっぱいありました。みなさんがいつも僕の大きな翼になってくれているおかげです。皆さんと一緒なら、どんなに強い風でも、どんなに高い壁でも高く飛んで乗り越えられる気がします」と感謝の気持ちを伝えた。そして、自身が出演したドラマ『REAL⇔FAKE Final Stage』のEDテーマで、今年1月にデジタルリリースしたばかりの「Key to My Heart」で前に進む姿勢を体現。「最後にこの曲をみなさんに送ります」と語り、「flower」で会場全体を花園のようにカラフルに染め上げて本編を締めくくった。

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