Kroi、温故知新の1曲「風来」に注いだ音楽愛 全国ツアーの手応えからバンド結成5周年まで近況も振り返る

 Kroiが3月29日にリリースする2nd EP『MAGNET』収録曲「風来」の先行配信を開始した。

 昨年7月にメジャー2ndアルバム『telegraph』をリリース。初のホール公演(東京・LINE CUBE SHIBUYA)を含む全国ツアーを成功させるなど、バンドとしてのスケール感を確実に広げ続けている彼ら。1月リリースの「Hard Pool」に続く新曲「風来」は、1970年代のニューソウルのテイストを感じさせるミディアムチューン。生楽器の音色にこだわったサウンドメイク、「“世界”に視野を広げた」という歌詞の内容を含め、温故知新と呼ぶにふさわしい楽曲に仕上がっている。

 リアルサウンドでは、メンバーの内田怜央(Vo/Gt)、長谷部悠生(Gt)、関将典(Ba)、益田英知(Dr)、千葉大樹(Key)にインタビュー。『telegraph』を携えたツアーの手ごたえ、「風来」の制作、2023年の展望などについて語ってもらった。(森朋之)

真面目にふざける感じも出せたロングツアーに

ーー2022年7月にアルバム『telegraph』をリリースし、9月から今年1月までロングツアーを開催。ツアーの手ごたえはどうでした?

関:公演数、会場のサイズ感もこれまでのツアーで最大だったんですよ。挑む段階では「今までとは違うかもしれない」と思って少し緊張感もあったんですけど、実際にやってみたらすごくいいライブができたし、あっという間に過ぎて。初めて行く県もありましたが、どの会場にもちゃんとリスナーがいてくれたこともうれしかったです。自分たちの音楽や活動が広がっていることを実感できたツアーでした。

千葉:けっこう長いツアーで、毎週のようにライブを続けて。プレイやステージングもそうですけど、「こうやるといいな」と気付くこともあって。ツアーのなかで成長や発見があったし、次のライブに活かしたいと思ってます。

内田:例によって、アルバムの新曲がどんどんライブのための曲に変化していくのを各地で感じて。目の前のお客さんたちに届けることで、演奏のニュアンスや全員のグルーヴが変化するんですよね。

益田:アルバムの曲がライブでも通用することを確認できましたね。これまでのライブの定番曲とアルバムの新曲を入れ替えても成立したし、場所によって変幻自在の組み方ができたのかなと。

関:マイナーチェンジ程度ですけど、全公演セットリストを変えていたんですよ。何度か来てくれる人もいるし、自分たちもまったく同じライブはしたくなくて。

長谷部:自分たち自身が飽きないようにしていたいんですよね。だからこそ毎回違うことを取り入れているし、今回はファイナル公演での「WATAGUMO」の歌唱権を賭けた僕と益田さんのバトルだったり、千葉さんとのMC中のアフタヌーンティータイムだったり、俺ららしい“おふざけの延長”的な演出もあって。真面目にふざける感じも出ていたと思います。

内田怜央

長谷部悠生

関将典

ーーファイナルのLINE CUBE SHIBUYA公演では、オーディエンスが自由に楽しんでいる姿も印象的でした。

長谷部:1曲目の「Drippin' Desert」からめっちゃ盛り上がってましたね。それぞれが楽しみ方を見つけてくれているんだなと感じました。

内田:MCでもずっと「好きに楽しんでください」って言ってきましたからね。最近はちょっと煽り始めてるんですけど(笑)。

ーー自由なトークと演奏のカッコよさのコントラストもKroiのライブの魅力だと思います。

内田:オンとオフですね(笑)。

関:舞台装飾や映像を使った演出はMVでもお世話になっている新保拓人さん(映像ディレクター)に入ってもらっていますからね。ちなみに悠生が話していた『ワタグモバトル』は、ライブ当日に1時間くらいリハをやってるんですよ。サウンドチェックよりも、そっちの確認のほうが時間がかかる(笑)。

長谷部:ライブでは使わない同期の音やワイヤレスマイクも使ってるので(笑)。

ーーツアーを通して、メンバーの絆も強くなった?

千葉:これ以上強くならなくても……(笑)。

益田:俺はツアーを通して、悠生と普通にチューできるようになりました。

内田:「Hard Pool」のMVで全員銀塗りになったんですけど、この二人、めっちゃチューしてたんですよ。

益田:めっちゃ絡み合いました。

長谷部:ハハハ(苦笑)。

内田:なので関係は深まったと思います(笑)。

スティーヴィー・ワンダーから教わる実験性とポップの共存


ーー1月に新曲「Hard Pool」がリリースされましたが、アルバム『telegraph』以降も制作は続けていたんですか?

関:「Hard Pool」に着手したのが2022年の年末なんですけど、それまではツアーに集中してましたね。ツアーの終盤になって、「そろそろ次の制作を考えていこう」という感じになって。

内田:EP全体というよりも、曲単位ですね。「Hard Pool」は今までよりも少し実験的というか。常にリスナーを置いていかないようなバランスを考えるんですけど、自分としては、スティーヴィー・ワンダー的なポップさを意識していて。メロディはポップで、サウンドやアレンジではかなりエグいことをやってるっていう。実験性とポップの共存を教わっているところはかなりありますね。

関:いい意味で異質な楽曲だと思っています。メンバーそれぞれの音使い、楽曲の構成やMVも含めて、すべてのクリエイションにおいて新しい要素を盛り込めて。LINE CUBE SHIBUYA公演のアンコールで初めて演奏したんですけど、今後、ライブのなかでどう進化していくか楽しみです。初披露はちょっと発表会みたいになってしまったので(笑)。

長谷部:赤裸々だね(笑)。

千葉:個人的には「Hard Pool」はKroiっぽい曲だと思っていて。いろんな要素が入ったミクスチャー感もそうですけど、「Pixie」に近い感じがあるんですよね。人によっては「新しい」と感じるだろうし、もともと根底にあるものがしっかり出せているのもいいなと。サビも強いし、覚えてもらえる曲になると思います。

益田:サウンドのレイヤーの作り方とか楽曲の展開にはKroiらしさがあると思いますね。ドラムに関しては、セクションごとにビートが変化するんですけど、そういう構成の曲はあまりなかったのかなと。

益田英知

千葉大樹

ーードラマーとしても楽しい曲ですね?

益田:はい。疲れますけどね(笑)。

千葉:(笑)。益田さんほど、ひとつのライブでこれだけいろんなビートを叩くドラマーはいないよね。

益田:だから「俺らしさって何だろう?」って立ち止まって考えることもあります(笑)。そのことを悠生と語り合ったことがあって。

長谷部:あったね(笑)。

益田:答えは出なくて、「まあ、やりながらだな」ということになったんですけど。

内田:それで言うと、俺の“らしさ”は自分の声を持たないことだと思ってるんだよね。

益田:そういう柔軟さは大事。

内田:その一方で、メンバーには“らしさ”を持っていてほしいという思いがあるんですよね。昔のギターヒーローみたいに……。

ーー“この人といえば、この音”みたいな。

内田:そうそう。デモ音源を作っている立場としては、それをどう反映していくかもしっかり考えていかないと、と思いましたね。

ーー内田さんは、清竜人さんとの対談(※1)で、曲を作るときは、まずドラムを叩くところから始まるって言ってましたよね。

内田:はい。いろんな考え方があっていいんですけど、現代の音楽において、ビートの構築やサウンドメイクが曲のよさに直結すると思っているので。まずはそこを決めるのが大事なんですよね。

Kroi - Hard Pool [Official Video]

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