氣志團 綾小路 翔、コンサート活動の無期限休止を発表した背景 武道館公演の裏側も明かす

綾小路 翔、ライブ活動休止の背景

 綾小路 翔が、かねてからの声帯炎の治療とリハビリに専念するため、2023年1月3日の14年ぶりの日本武道館ワンマンをもって、コンサート活動を無期限で休止することを、2022年11月11日に発表した氣志團。

 その時点で7年ぶりのニューアルバム『THE YANK ROCK HEROES』を、2023年1月1日にリリースすることがアナウンスされていたので、それ以降のライブは日本武道館の一回のみ、ツアーはなし、ということになる。

 とは言え、無期限休止は「コンサート活動」に限ったことで、年が明けてアルバムがリリースされ、日本武道館を大成功に終わらせて以降の綾小路 翔は、アルバムのプロモーションでテレビや雑誌、ウェブ等の各メディアに露出したり、2022年秋からスタートしたレギュラー番組『俺達には土曜日しかない』(TBSラジオ)で、『デラべっぴん』についてしゃべりまくったりしている(1月21日放送回)。現在の容態はどんな按配なのか。「すべて休止」ではなく「ライブ活動だけ休止」にしたのはなぜか。休止時のコメントで、復帰時期について「目標はズバリ、来年の氣志團万博!」と明言していたが、大丈夫なの? などなど、今綾小路 翔に聞きたいことをぶつけた。(兵庫慎司)

喉の不調によるライブ活動休止を発表した理由

──喉の不調は、ここ最近のことではないのでは、と思ったんですけども──。

綾小路 翔(以下、團長):いや、この2年ぐらいで、ちょっとおかしくなってきて。今までも調子悪いことはあったんですけど、治らなくなったんですよ、声嗄れが。ツアー中に、リハでは気持ちよくできたのに、本番では1曲目で突然ガラガラになって。病院に行ってお薬をいただいたりしても、なんか繰り返すなあと思っていたら、日常の声も嗄れてきてしまって。それで、2021年の秋に初めて手術をしたんですね。でも、「あれ? 言うほど回復しないなあ」ということになって、だんだん慌てだして。セカンドオピニオンやサードオピニオンも欲しくて、東京の有名な病院を幾つか回ったんですけど、どの先生の見解も、最初に診て頂いた僕の主治医の先生と同じで。ただ、どの先生に相談しても、「まずは休んだ方がいいね」と。で、どうしようかなあと思いながら、去年もう一回手術をしたんです。でもやっぱり、言うほど変わらないし、レコーディングなんかした日には、もうひどいことになっちゃって。そうこうしながら『(氣志團)万博』が近づいてきて。出演者の皆様からもステージでのセッションに誘って頂いて、それはもう本来願ったり叶ったりなんですけど、今回は初めて怖かったですね。人様のステージで声が出ないとか、めちゃくちゃな歌唱で「ジャイアンリサイタル」をやるわけにはいかないし。で、『万博』はなんとかどうにか乗り切れたんですけど、いよいよこれはもうダメだなと思って、「来年のスケジュールを一回考え直したい」という話をしました。

ーーその頃にはきっと元日リリースのニューアルバムのツアーのスケジュールも、もう切っていましたよね。

團長:はい。でも、それも難しいっていうことになって、ライブ活動を休むことを去年の11月に発表したんですね。その時点では、具体的な治療法がなくて。でも、たくさんのミュージシャンの方々が心配してくれて、「どこの病院に行ってるの?」「先生を紹介するよ」みたいな。本当にビッグアーティストの方々も連絡をくれて、「自分の経験はこうだった」って。みなさんも、他人事じゃなかったんでしょうね。僕が思っていた以上に、シンガー達は皆壮絶な苦労や努力をしながら活動を続けていることを知った。ギャラと同じで、商売道具のあれこれはお互いに詮索しないのがマナーですから。世間には公表せずに、サラッと3カ月ぐらいスケジュールを空けて、その間に手術して復帰している人もたくさんいるそうで。僕もやっぱり不安があったので、いろんな方から連絡をいただいて精神的にすごく助かりました。

──團長も、発表はしないで休みを作って手術する、というのは考えなかったですか?

團長:はい。なんで発表したかっていうと、いろいろお声がけいただくと、僕、全部に出たくなっちゃうんですよ。で、「次のそれまでは出よう」「あ、これも」とかやっている間に、『氣志團万博』になっちゃうな、と。で、12月に主治医の先生のところに検査に行って。「もう一回調べてもらえませんか? 僕、ガンじゃないかなと思って」と。先生も「僕も実は心配してた、うちの病院に来なくなったから」って、診てくれたんですけど、結果、ガンに関してはなんの心配もないと。その先生が「ちょっと試したい治療がある」と言ってくれて、その手術は今月(2月)の予定なんですけど。武道館が終わったら歌唱を控えて、検査をもう一回やって日取りを決めよう、という。だから今は、喉に関して不安がないわけではないですけど……もっと不安なのは、残された氣志團のメンバーたちの生活(笑)。「翔やん休みってことは、僕たちもお休みってことかな?」ってなっちゃいそうだから(笑)。

──過去には、今回に匹敵するほどの大きなピンチというのはなかったですか?

團長:いちばんのピンチは10年ちょっと前の、新年一発目のさいたまスーパーアリーナ(2011年1月2・3日)。初日の本番中に突然声が出なくなって。「あー」って言ってるはずなのに、「ボー」って出るんですよ。僕もパニックになって、思い出すだけでゾッとしますけど。正月だから病院も開いてなくて、でもギグは翌日にもう1本ある。自分から中止にするとは言えない、でもスタッフも誰も言ってくんない(笑)。で、夜中に「ひとりだけ先生が見つかった」と。その先生のところに行ったら、「ああ、声帯出血してますね。これはダメです」と。「2日もらえれば、なんとかできるんですけどねえ。明日ですよね?」「マネージャーさん、口パクの用意はありますか?」と(笑)。

──まあ、それはそう言いますよね。

團長:でも「えっ?えっ? すみません、口パクの用意はないんです。普通のバンドなんで。ってか、よそはそんな用意、あるもんなんですか?」ってなって(笑)。とりあえず薬をもらって、一切声を出さないで、翌日もう一回診せに来てくれ、と言われて。なのに当時のマネージャーさん、翌朝普通に電話してきましたからね(笑)。で、その電話で初めて声を出したら全然ダメで、これは終わったなあ……って。DVDの撮影も入ってるし、頼むから誰かやめろって言ってくれよ! みたいな。でも、病院に行って診てもらったら、「あれ? だいぶ良くなってますよ」って。僕、めちゃくちゃめんどくさがりで、普段薬とかほとんど飲んだことがなかったんですよ。それで、効きすぎたんじゃないかって。

──ああ、野良犬に傷薬を塗ると、驚異的な速さで治るのと同じ(笑)。

團長:そうそう、ほんとに。それで、劇薬みたいな強い薬を処方してもらって、あ、もちろん合法のやつね(笑)。で、何とか歌いきれて。ただ、MCで45分間ノンストップでしゃべり続けたらしいんですけど、あとで映像で観たら言ってることも表情も完全にラリってるんですよ(笑)。効きすぎましたね(笑)。それが最大のピンチだったかな。でも、本当に困った時にはそういう方法がある、ってわかったから。その後はツアーのたびに強いお薬をもらってたんですけど、やっぱり一時期は依存してしまって。でも内臓にも悪いし、顔もパンパンになるし。やめようと決意しましたね。お守りとして財布の中に入れて、本当にヤバい時だけ使おう、という方向に切り替えて。ってか、これ完全にジャンキーの思考(笑)。でもおかげで体のケアをしっかりすることによって、頼らずにすむようになったんです。ちなみに今回、その一番ヤバかった時ほどは酷くないんです。ただ、ずっと治らないことがとにかくつらくて。ずっと声枯れしている、声が伸びない、高音も低音もこのキーになると声が突然ぶつぎれになっちゃう、という感じ。でも、この1年半で出ない声以外でがんばるテクニックは身について。「クラリネットをこわしちゃった」状態というか、出る音だけでがんばろう、という。あ、でもあの曲はドとレとミとファとソとラとシの音が出ないんだった。そりゃ無理ゲーか(笑)。

──今回、ライブは休むけど、それ以外の仕事はする、という発表だったじゃないですか。いい機会だから全部休めばいいのに、と思ってしまったのですが……。

團長:もしかしたら、「やっぱり一切声出しちゃダメ」ってなって全部やめなきゃいけなくなる可能性もあるとは思ってるんですけど。でもとりあえず、アルバムを出して、本来ツアーでCDを売らなきゃいけないのに、そのツアーを飛ばしちゃったんで。その分は責任とります、と今あちこちキャンペーンに行ったりしてます。だから1月2月いっぱいはゴリゴリ動くけど、3月からは裏方に回ろうかな、みたいな。武道館をやって思ったんです。「俺が出なくても、おもしろいことできるな」と。

──ああ、演出家として。

團長:正直言うと、僕、2023年はソロをやりたかったんですよ。それで、やりたいことを自分ですっごい組み込んで組み込んで、ようやくできあがった!って、10年ぶりぐらいに思って。「これはおもろいのできるぞ、よし、また一発だけ当てよう。一発屋も三回当てたら本物だろう」と燃えてたんですよ。で、実を言うとドラムの(叶)亜樹良が身体を痛めていて、しっかり治療をしたいっていう話をここ何年かされていたんです。だから僕がソロをやってる間、亜樹良は休ませられるな、と思ってたんですけど、結局自分の方が休まなきゃいけなくなっちゃって。そうしたら、誠実で実直な亜樹良はその間にもしっかり治療に取り組んでいて(笑)。あの子はえらいね(笑)。だから、今はやりたいことがいっぱいあるんですよ。正直、休みたい気持ちは全然なくて。いずれ世の中から本当に必要とされなくなる時が来るんで、その時はしっかり休もうと思ってます。

──昔からそうおっしゃってますけど。

團長:いやあ、でもわかんないですよ? そうなるのも、そんなに先じゃない気もしてますし。だから今は、ずっとやりたいけどやれなかった、制作とか演出とかに集中してみたいんです。ウチのメンバー、めちゃくちゃいいミュージシャンなんですけど、ほっとくとただのめちゃくちゃいいミュージシャンなんですよ(笑)。あいつらのおもしろさを引き出せるのは、世の中に僕しかいないと自負しているので。久々に武道館公演をやって、あのサイズの会場で演出を考えるのって楽しいな、と思ったんですよね。いつも心のどこかでは「別に(前に出るのは)俺じゃなくていいんだよな」って思っていて。だからこの機会に、メンバーの力を前面に押し出して氣志團の底上げをできないもんかなあ、と。ただメンバーに丸投げは無責任かな、っていうことだけは……(笑)。

──DJ OZMAをやっている間のソロ活動ですね。

團長:はい。彼らに好きな音楽を好きに楽しんでもらいたいと思って自由にやってもらったんですけど、正直意外にうまくいかなかったんで、今回は僕がしゃしゃるぞ、って。僕が休むって決まったらすぐ事務所に呼び出されて、「その間どうするつもりだ?」って詰められてるんですよ(笑)。だからこれからはみんなに前に出てもらいたいと思い、その先駆けとして取材に参加してもらったんです。「みんなで行こうぜ、アルバムのインタビューだしさ!」って全員呼んだら、おそろしいくらいしゃべれなかった。僕が「これは彼の曲です」とか振っても「あ、楽しかったです……」とか、「あ、がんばりました……」とかしか言わなくて「過保護にしすぎたぁ」と思いました(笑)。

──でもニューアルバム、それぞれのメンバーの曲、どれもとても良かったですよね。

團長:ありがとうございます。最初、みんなで話した時に、「最近の新曲が過去曲を超えてない感じがするのは、作る時にステージでのパフォーマンスを考えてないからじゃないか?」っていう話になって。タイアップをいただいたりして、いい歌モノみたいな曲はそれなりにあるんですけど、結局ステージでやらなくなることも多くて。だから今回のアルバムは、新しい僕たちのステージのフォーマットを作ろうじゃないかというのがテーマでした。肩肘張って作るんじゃなくて、ちょっとだけ肩の力を抜いて、楽しんでみようか、という感じになったのがよかったのかもしれないです。

20230211-kishidan-08
20230211-kishidan-06
20230211-kishidan-05
20230211-kishidan-03
previous arrow
next arrow
 
20230211-kishidan-08
20230211-kishidan-06
20230211-kishidan-05
20230211-kishidan-03
previous arrow
next arrow

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる