氣志團 綾小路 翔、コンサート活動の無期限休止を発表した背景 武道館公演の裏側も明かす

綾小路 翔、ライブ活動休止の背景

「パフォーマーとしての僕が死ぬ日」は少しずつ近づいてきている

──そして1月3日の日本武道館ですけど──。

團長:今回の武道館は「雑魚曲」ってワードが出たんですけど。氣志團にはアルバムの曲で、埋もれていて世間的には誰も知らないけど、テコ入れしたら絶対におもしろいものになるはずだ、という曲がいくつもあって。それで『BreakingDown』のパロディ映像で、いろんな曲を擬人化して、闘って、勝った曲が演奏されるというのを考えたら、楽しくなってきたんです。

──その映像と、アンコール前の亜樹良さんが語る「街録ch」のパロディ映像、あの2本で尺をとったことによって、演奏される曲がさらに減りましたよね。

團長:(笑)。僕の友達の席の後ろに、プロKISSES(氣志團ファン)がいて、ずっと「これに時間使うなら、もっといっぱい曲をやれよ」って言ってたらしいです(笑)。まさにおっしゃる通りで(笑)。でも久々に楽しかったんです。シリアスな雰囲気を見せておいて、バカやって、最後は「なんのこっちゃ?」で終われるのが、ウチらしくていいなあって。

──僕も、あの映像がなければもっと曲をやれたのに、と一瞬思ったんですけど、「待てよ」と。DJ OZMAの活動を終えて氣志團が復活した時の日本武道館2デイズ(2009年4月25・26日)は、ストイックでまじめな、遊びがないライブをやったじゃないですか。

團長:はい、はい。

──あの時、僕は「あれ?」ってなったんですね。会場の雰囲気もそうだった。それを思い出して、「そうか、じゃあ今日のこれが正解なんだな」と思って。

團長:そうなんです(笑)。武道館にはいろんなトラウマがあって。今回も最初は、みんなの意見を合わせていたら、ストイックなものになりかけてたんですよ。でも途中で「このままやったら俺、絶対に後悔する」って気がついて。休止するからって、お涙ちょうだいみたいになるのがイヤで。あと、もうひとつ大きかったのが、「今回こそ口パクの用意をしておいた方がいいんじゃない?喉の調子のいい日に、少しでも録っておこうよ」って、言われてたんですよ。

──まあ、それは言いますよね。

團長:でも、それはダセえなあと思って。だったら「ジャイアンリサイタル」の方が、みんなに「ごめん、こういうわけで、休ましてもらうね」って言える。だから本番は、当たって砕けろではあったんですけど、その分スカッとしたし。でも、やってみていちばん思ったのが「これは早く帰って来なくてはいけないな」「自分が耐えられないな」って。

──ライブで客前に出ないことに、ですよね。お客さんに向かってそう言ってましたよね。

團長:そうですね。実は、他にやることが多すぎて、MCでしゃべることをなんにも考えてなくて。本番で「あっ、ここ、MCだった……」と思って。だからとにかく言いたいこと、俺の方が待てない、だから全力で治すぞ、と伝えました。みんなの笑顔の中毒者だって気づいたんです。しかも末期の。マッキー症状。もう声なんて気にしないなんて言わないよ絶対……です(笑)。そこは本当に、KISSESに会えたおかげで、腹が決まったというか。なんとしても、ここに帰って来なくてはならない。このまま本気で裏方をやるのはどうだろう? とちょっと考えたりした時期もあったんで。でも、そういう気持ちは消えましたね、あのライブで、アドレナリンを久しぶりに感じて、「これだ、この時にしか出ないもの」と思い出して。正直、『万博』の時には出せなかったんですよ。

──『万博』は、プロデューサー業務の方が膨大ですもんね。

團長:ライブに集中しきれなかったな、っていう反省がものすごくあって。メンバーを仕切れない部分もあったし、自分が詰めきれなかったこともあったし、自分の体調も難しい時期だったし。でも、この武道館の準備と当日で、ようやく出口が見えて来たし、やっと本当の意味で前向きになれたかな。

──はい。ただ、休止の声明文の「さっさと帰って来るよ。目標はズバリ、氣志團万博!」っていうのを読んで、言っちゃって大丈夫? と思ったんですけども。

團長:いやいや、そうするつもりなんですけど、こればっかりは……。ただ、準備は今からしておかないと。

──体調を鑑みての、やるやらないの最終決定は、いつの時期までひっぱれるのかですよね。

團長:そうなんですよね。ただ、こないだDragon AshのKjに、「翔やんさあ、がんばってもどうにもなんなかったらさ、そのままの翔やんで帰って来てよ。それでも、新しい氣志團、やれんじゃん」って言われて。その言葉はすごく僕を救ってくれた。もし声が戻らなくても、その声が新しい声なんだと。そうなったら、僕もライブで、ついに、永遠の十七のしゃがれたブルースを歌うかと。あの頃いちばん憧れていたSIONや憂歌団を目指して(笑)。

──あ、SION好きだったんですか?

團長:はい。ああなりたいけどなれないな、って、最初にあきらめたリストのひとりです(笑)。ただ、最近は、「まだ早いよ」って言われるんですけど、“死”みたいなものを感じるようになって。自分が死ぬ予感がするってことではないですけど、「死はもうそんな遠くないな」とも思っていて。たとえば、それこそ(山下)達郎さんみたいに、歳を重ねても、あのまんまの声で歌い続ける超人もいるけど……ボイトレもしないって言ってましたからね。その達郎さんが、「(歌い続けられる)秘訣は?」っていう質問に対して、「僕はラッキーだったんだと思う」って答えていて。そっか、あの達郎さんをしても、今も歌えているのはラッキーって言うのかと思ったら、少なくとも今の自分がやりたいパフォーマンスができる期間は限られているのかなと。肉体的なピークはとっくに終わっていると思いますし。サラシを巻いて横隔膜が閉じ込められた状態で大声を張り上げることが、いつまでできるのか。腰まで落とした演舞をいつまでやり続けられるのか。歌だっていつまで歌えるかもわからないし、音楽を誰も求めてくれなくなる日も来るかもしれないし。パフォーマーとしての僕が死ぬ日は、少しずつ近づいている気はしてるんですよね。晩年のジャイアント馬場の16文キックみたいに、歳をとって、一拍ぐらい遅れて振付をやり続ける氣志團すらもみんなが観たい、ってなればいいけど(笑)。だからやりたいことを、しっかり順番をつけてやっていかないといけないなとは思ってるんですよね。

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