ポルノグラフィティ、充実感と喜びにあふれた『暁』ツアー最終日レポ 随所で感じられた観客への信頼

「みんなきっと汗かいたじゃろ? 手拍子しすぎて手が痛くなったじゃろ? 声出せんけど、心の中で叫んだじゃろ? きっとここに来る前よりわしらにも、みんなにも光が射しているはず。暁とは、夜明け前の時間のことを言います。もっと強い光が射してくることを願って、信じて、あと1曲お届けしたいと思います。今日はありがとう!」(岡野)

 本編ラストに選ばれたのは、アルバムを象徴する楽曲「暁」。岡野がその場に跪く衝撃の歌い出しから最後の一音が鳴り止む瞬間まで、バンドの演奏には“余力など残してたまるか”と言わんばかりの迫力があった。アンコールで再登場した時に岡野が思わず「結構限界近くまでやったけど、まだ行く?」と言っていたのも頷ける。しかしアンコールには新曲が用意されていた。新藤のギターが前面に出たロックソング「OLD VILLAGER」。“予定調和をぶち壊していけ”というメッセージが音からも言葉からも感じられる曲だ。完全燃焼の本編の直後、さらに限界を突破するように始まった新曲というシチュエーションも相まって、〈我こそこのムラの生ける伝説 OLD VILLAGER〉という歌詞が堂々たる佇まいを見せる。

 彼らのバイタリティはどこから湧いてくるのか。その答えは随所から感じられたが、ラストのMCで改めてはっきりと語られた。新人マネージャーに「なんでポルノグラフィティが24年続いたんだと思う?」と聞いてみたところ「人柄ですかね」と返ってきた――というエピソードを紹介した新藤は、「人柄だけじゃありません」と笑いながら「みなさんの顔が見られるから24年続けてこられた。みなさんの心に僕らの曲の置き場所を作ってもらえるような、それにふさわしい曲をこれからも作りたいと思います」と語る。対して「みなさんをイメージすると制作欲が湧く」という岡野は、シーンの大海原に自分たちの音楽を投げ込むような、漠然としたイメージを持っていた若い頃とは違い、今は届ける場所がはっきりしているから迷いがないのだと語る。「(ファンとは)すごくいい関係だと思ってます。これからも共に進んでいけたらと思いますので、ぜひわしらについてきてくれたら嬉しい。今日は本当にありがとう!」と岡野。「全て出しきって帰る覚悟はいいか!?」と観客に投げかけるとともにラストスパートをかけた。

 全曲演奏後にハイタッチしていた岡野と新藤は、大きな充実感と喜びを感じていたことだろう。そして、会場に足を運んだり、配信視聴やライブビューイングなどで遠くから参加したり、参加できずともツアーが無事に終わることを願っていたりした人々=ツアーをともに作ったファンとは、彼らにとって喜びを分かち合いたい仲間だ。最後に手渡したのは「あんたらが最高じゃけえここまで来れた。あんたらは最高。だからこそ胸張っていけ! 自信持っていけ!」(岡野)という言葉。きっと多くの人が明日を生きる活力を受け取ったことだろう。

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