Weezer『SZNZ』シリーズは壮大な最終章へ Queenからエリオット・スミスまで取り込む“混沌としたパワー”

Weezer『SZNZ』最終章の混沌としたパワー

 1994年のデビュー以来、パワーポップやエモの担い手として今日に至るまで第一線で活躍し続ける米国ロサンゼルス出身のロックバンド Weezer。「四季」をテーマに、節目に合わせた4枚のEPシリーズ『SZNZ(シーズンズ)』を丸1年かけて制作していた彼らが、その「最終章」となる『SZNZ: Winter』の国内盤を2月8日にリリースする(配信リリースは2022年12月21日)。

 来年でデビュー30周年を迎える彼らはもはや大御所の域に達しているが、その制作ペースは衰えることを知らない。コロナ禍でも2021年にはガーシュウィンやバッハ、ベートーヴェンなどクラシック音楽を参照し、アビーロード・スタジオにてストリングスを大胆に導入したThe Beach Boys『Pet Sounds』へのオマージュ的作品『OK Human』と、Judas PriestやIron Maiden、Metallicaなど、リヴァース・クオモ(Vo/Gt)が愛してやまない1980年代HR/HMへのリスペクトをふんだんに詰め込んだハードポップ作品『Van Weezer』という、全く色合いの違う2枚のアルバムを立て続けにリリースしているのだ。

 そんな彼らによる新たなプロジェクトは、2021年1月に行われたクオモへのインタビューで初めて明らかにされ、翌年2月にGoogleスプレッドシートをファンと共有(※1)。そこには『SZNZ』EPのそれぞれのリリース日や、予定されているプロデューサー、作品ごとの精神性やジャンル、時代設定などが明記されていた。

 『SZNZ: Winter』について触れる前に、まずはこれまでリリースされた3枚のEPを順に聴いていこう。言うまでもなく本プロジェクトは、バロック時代の作曲家 アントニオ・ヴィヴァルディによるバイオリン協奏曲「四季」からインスピレーションを受けているが、昨年3月20日の春分の日にリリースされた『SZNZ: Spring』の冒頭を飾る楽曲「Opening Night」は、まさにその「四季」の「春」第一楽章の主旋律を大胆にオマージュしつつ、Weezer流のバロックポップに仕上げている。

 前述のスプレッドシートのジャンル欄には「“Island In The Sun” meets OK HUMAN」と記載されていたように、『SZNZ: Spring』は、彼らの代表曲「Island In The Sun」(2001年のアルバム『Weezer (Green Album)』収録)の持つオプティミスティックな雰囲気と、『OK Human』のチェンバーポップ的なアレンジを融合したような内容だ。なお、プロデューサーには『OK Human』も手がけたジェイク・シンクレアをはじめ、イーサン・グルスカ(The Belle Brigade)やスージー・シンが名を連ねている。

Weezer - A Little Bit of Love (Lyric Video)

 夏至に合わせて2022年6月21日にリリースされた『SZNZ: Summer』は、ロボポップことダニエル・オメリオによるプロデュース作。ロサンゼルスを拠点に活動するプロデューサー兼ソングライターのオメリオは、これまでにMaroon 5やチャーリーXCX、ラナ・デル・レイなどのシングルをヒットさせてきた才人である。前EP同様、ヴィヴァルディの「四季」から拝借したメロディ(しかも「夏」のEPなのに、「冬」第2楽章 ラルゴ)に導かれ、『Van Weezer』ばりのヘヴィなギターサウンドが炸裂する本EPは、他にも「Blue Like Jazz」や「The Opposite Of Me」など、HR/HMファンが血湧き肉躍ること必至のサウンドが散りばめられている。まさに燃えたぎる夏にふさわしいサウンドだ。

Weezer - Records (Lyric Video)

 スプレッドシートのジャンル欄に、「Franz Ferdinand (Take me out), Strokes」と記載され、クオモによれば「シンセを多用した『ダンスロック』になる」と予告されていたのが、9月22日の秋分の日にリリースされた『SZNZ: Autumn』だ。

 確かに、4つ打ちのキックに導かれた冒頭曲「Can't Dance, Don't Ask Me」の、エッジの効いたカッティングギターはThe Strokesを彷彿させるし、本シリーズの他のEPに比べるとシンセサウンドが占める割合も大きい。だが、クオモが1997年から温めていたという「Francesca」のような美しいメロディや、往年のThe PoliceやWham!をも彷彿とさせるポップチューン「Should She Stay or Should She Go」、そしてヴィヴァルディに最も接近した「Tastes Like Pain」など、アレンジの振り幅でいえば4作中最も“振り切った”作品ともいえるだろう。

Weezer - Can't Dance, Don't Ask Me

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