ビヨンセ初カテゴリでの受賞&アデルは3作連続受賞なるか 開催迫る『第65回グラミー賞』主要4部門のポイント総括

 2023年2月6日に開催される『第65回グラミー賞』のノミネートが発表され、1月5日に全ての投票が終了した(ともに日本時間)。ここ数年で大きな変化を遂げているグラミー賞であるが、今年の主要4部門の予想をしていく前に近年のグラミー賞についておさらいしたい。

 特に近年、グラミー賞は多くのアーティストに批判されており、ザ・ウィークエンドがグラミー賞をボイコットしたことは特に大きな話題になった。ザ・ウィークエンドは大ヒットアルバム『After Hours』(2020年)とビルボード最長チャートイン記録を更新した歴史的メガヒット曲「Blinding Lights」(2019年)がどの部門にもノミネートされなかったことからグラミー賞を批判しており、「透明性を示すべき」とツイートしていた(※1)。また、ザ・ウィークエンドと同郷の世界的スーパースターであるドレイクも、2022年に自身のノミネートを取り消すようにグラミーに依頼し、2023年も2年連続でノミネートをボイコットしたと報じられている。2020年にはグラミー賞を主催するレコーディング・アカデミーの元最高経営責任者 デボラ・デューガン氏がグラミー賞における不正を告発され、会長の役職を更迭されるなど、世界で最も注目が集まる音楽賞として、名誉を保つためにもグラミー賞は変化を余儀なくされた。

 2021年まで、レコーディング・アカデミー内の20人前後の“秘密委員会”が主要4部門の最終選考を行っていたが、2022年の『第64回グラミー賞』の選考からは、その秘密委員会が解体され、1万人を超える音楽業界に従事する会員による投票でノミネートアーティストが選出された。さらにレコーディング・アカデミーは、昨年9月に新たに約2000人の新会員を迎えたと発表しており、2019年から女性の会員数が19%増、さらに有色人種の会員数が38%増えたと報告している(全会員でアジア系は4%ほど)。発表に伴い、レコーディング・アカデミーは、今回の増員に関して「進化をし続ける音楽において、さらに多様性を重視したメンバー」になったという旨をコメントしている(※2)。また、主要4部門のノミネート枠はもともと5アーティスト/作品であったものの、2019年に8枠、2021年には10枠に増えている。

 批判を受けながらも、時代とともに変化し続けるグラミー賞であるが、改めて今年の主要4部門をおさらいしたい。

最優秀レコード賞

・ABBA「Don’t Shut Me Down」
・アデル「Easy On Me」
・ビヨンセ「Break My Soul」
・メアリー・J. ブライジ「Good Morning Gorgeous」
・ブランディ・カーライル「You and Me on the Rock feat. Lucius」
・ドージャ・キャット「Woman」
・スティーヴ・レイシー「Bad Habit」
・ケンドリック・ラマー「The Heart Part 5」
・リゾ「About Damn Time」
・ハリー・スタイルズ「As It Was」

 アーティストや作曲者だけでなく、リリースされた楽曲に携わった全員に対して贈られる最優秀レコード賞。ビヨンセにとって最優秀レコード賞は8度目のノミネート(フィーチャリング含む)となり、アデルにとって4度目のノミネートとなる。アデルはそのうちすでに2度受賞しているが、他のノミネートアーティストは過去には当カテゴリを受賞しておらず、特に8度目のノミネートとなったビヨンセにファンの期待が高まる。どちらもBillboard Hot 100にて1位を獲得しており、グラミー賞が投票制になったことによりどちらが受賞するかに注目が集まっている。レコーディング・アカデミー会員の年齢層を考えると、Weezerなどを彷彿とさせるスティーヴ・レイシー「Bad Habit」のサウンドを評価する人も多いと予想できるが、個人的にはビヨンセが最優秀アルバムを受賞し、リゾかハリー・スタイルズが最優秀レコード賞を受賞すると予想。

Adele - Easy On Me (Official Video)
Beyoncé - BREAK MY SOUL (Official Lyric Video)
Steve Lacy - Bad Habit (Official Video)

最優秀アルバム賞

・ABBA『Voyage』
・アデル『30』
・バッド・バニー『Un Verano Sin Ti』
・ビヨンセ『RENAISSANCE』
・ブランディ・カーライル 『In These Silent Days』
・Coldplay『Music Of the Spheres』
・ハリー・スタイルズ『Harry’s House』
・ケンドリック・ラマー『Mr. Morale & the Big Steppers』
・リゾ『Special』
・メアリー・J. ブライジ『Good Morning Gorgeous』

 最優秀アルバム賞においては、アデル以外のアーティストは受賞したことがなく、もしアデルが今回も受賞した場合、アルバム3枚連続で受賞することになる。投票制になった今、4度ノミネートされているが、受賞はしたことがないビヨンセが手にする可能性が高いと感じる。ビヨンセの『RENAISSANCE』は、コンセプトとしてもダンスミュージックを通してブラック/クィアカルチャーを讃えているアルバムであり、メッセージの重要性も含めて各メディアに高く評価されている。また、バッド・バニーの『Un Verano Sin Ti』は最優秀アルバム賞にノミネートされた初のスペイン語アルバムであり、受賞した場合は歴史的快挙となる。

Bad Bunny - Tití Me Preguntó (Video Oficial) | Un Verano Sin Ti

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