生田絵梨花、音楽番組や作品に重宝される理由 藤井風「何なんw」カバーでより注目集めるアーティストの一面

 生田が驚異的なのは、ピアノ演奏だけではなく歌唱力も抜群であるところだ。

 2022年11月におこなわれた『映画かいけつゾロリ ラララ♪スターたんじょう』の完成披露舞台挨拶の場で、原作者・原ゆたかは、歌手を目指す女の子・ヒポポを演じた生田絵梨花について「生田さんしか思いつかなかった」「ヒポポちゃんの成長がはっきりと伝わる歌い方をしてくださったんです!」とコメント。ゾロリ役の山寺宏一も「セリフも歌も本当に素晴らしくて、びっくりしました」と生田の実力に舌を巻いたほど。

 さらに原は、「まず曲のリハーサルをしたのですが、『ヒポポちゃんの気持ちがわからないからアフレコをしたい』とおっしゃって、アフレコを録って気持ちがわかった状態でレコーディングをしてもらった」と、予定を変更して「演技」から取り組んでいったという。(※2)

 私たちはなぜ、生田の歌にここまで気持ちを揺さぶられるのか。それは、このエピソードにヒントが隠されていた気がした。生田は歌唱するとき、作品のキャラクターや歌詞のなかに出てくる人物のきっちり心情をとらえて歌にしているからではないだろうか。

 生田はなにかの作品に参加しているときは、その役が抜けきらないタイプだとも明かしている。雑誌『AERA』(2019年12月2日増大号)のなかで、「舞台で強い女性を演じている時は、グループでかわいい歌を歌う時も強くなってしまったり、その時の役の歌い方の癖が出てしまうことがありました」と語っていた。役に入りこみすぎて支障があったということだが、逆に言えば生田はそれだけキャラクターの芯を捉えられる歌い手でもあるのだ。だからこそ、口先だけではなく真意をもって歌を表現することができるのではないか。

 そんな彼女のバックボーンはミュージカルである。幼少期から『アニー』『レ・ミゼラブル』などに親しみを持っていた。ミュージカルはまさに、登場人物の気持ちが歌となってあらわれるものだ。なぜそういった言葉を口にするのか、どうしてそういう行動をとるのか。それらを理解したうえで歌へと昇華させていく。生田の歌唱からは確かに、ミュージカル的な奥深さが感じられる。

 生田は2017年と2019年に『レ・ミゼラブル』のコゼット役、2021年にはエポニーヌ役を射止めた。『レ・ミゼラブル』は実力主義で、公演を監修するキャメロン・マッキントッシュの最終審査を通らないと出演は叶わない。エグゼグティブ・プロデューサーの田口豪孝は『Quick Japan vol.130』のインタビューのなかで、「並の歌唱力では受からない舞台です。役にはまる人を見つけるために、何回もコールバック(再オーディション)をします。審査が進むと、課題が出されて審査のためにトレーニングをして、コールバックをして、その繰り返し。歌唱指導も演技指導もあれば、演出家が細かく指示を出してくる厳しい内容なのに、受かるとは限りません。なので「出たい」という気持ちを持ってないと稽古は続かないですよ。生田さんはそれに相当耐え、かなり練習してきました」と、生田がコゼット役に抜擢されたときのことを振り返っている。

 コゼット役はソプラノの音域が出ないと務めることが難しいが、生田はその課題もクリア。キャメロン・マッキントッシュから“非常に花がある”とその歌声に太鼓判が押されたという。ただそれもピアノ同様、努力の積み重ねと、折れない気持ちの強さがあったからだろう。

 誰もが認める生田の音楽的な部分。しかしそれは「才能」の一言では片づけられない。ピアノ、歌へのアプローチの仕方、そして並々ならぬ努力から成り立っている。それが認められて、さまざまなシーンで活躍できているのだろう。

※1 https://news.dwango.jp/idol/8649-1504
※2 https://natalie.mu/eiga/news/502367

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