Saucy Dog、ハルカミライと生み出した“優しさという名の熱量” 愛とリスペクトで称え合った『対バンツアー2022』ファイナル
この日初めてのMCでせとは、付き合いの長い友人であるハルカミライについて「同世代で一番かっけえなと思ってるバンドです」と語った。そしてその上で、「ずっと音楽を一緒にやりたいと思うけど、負けたくないとも思うので、違う手札で戦っていけたらな」と剥き出しのライバル心を明かした。対バンとは、文字通り両バンドの“対決”であり、先行のハルカミライのステージが圧巻だったからこそ、サウシーの3人も相当な気合いが入っていたのだろう。MC明けの「雀ノ欠伸」における、爽やかさの中に並々ならぬ熱量が滲む歌と演奏を観て、3人の今回の対バンのステージにかける熱い想いを改めて感じ取った。
中盤のハイライトを担ったのは、いまや2020年代を代表するロックアンセムの一つとなった「シンデレラボーイ」だ。一つひとつの音と言葉をじっくりと心に染み渡らせるように聴き入る観客たちの姿が印象的で、そうした光景を観て、この曲が一人ひとりのリスナーの人生における大切なピースとなっていることを強く感じた。続けて、渾身のロックバラード「東京」が披露される。原曲とは異なり、石原は裏返りそうになる寸前まで声を昂らせて歌い上げていて、この曲に秘められているエモーショナルさが何倍にも増幅されていく展開に痺れた。なお、この後のMCで、この日の朝に医者からがなり声で歌う許可が出たことが明かされた。石原がまるでリミッターが外れたように高らかに歌っていた理由はまさにそれで、大きな喜びと開放感に満ちた石原の歌は、クライマックスに向けてますます熱を帯びていくことになる。
終盤のハイライトを担ったのは、剥き出しのバンドサウンドが鮮烈なインパクトを与える問答無用のロックチューン「雷に打たれて」だ。曲名の通り、快楽中枢を直接刺激するようなロックサウンドが痛快で、フロアにはこの日一番の熱狂が生まれていた。その熱量を引き継ぎながら、メンバー自身が特に強い思い入れを持つ「ノンフィクション」へ。先ほど生まれたばかりのこの日一番の熱狂をすかさず更新していく展開は、圧巻だった。
石原は、先ほどの橋本のMCについて「学、言ってたよな。音楽は優しさやって。本当にその通りやと思う」と共感の想いを語った。そして、サウシーの優しいロックの真骨頂の一つである「優しさに溢れた世界で」を披露してみせた。ハルカミライとSaucy Dogは音楽性が全く異なるように思えるが、両バンドとも、お互いに深いところで共鳴し合っていることが伝わるようなパフォーマンスだった。
この日ラストのMCパートで石原は、改めてハルカミライへの愛とリスペクトを語り、そして日々彼らから勇気をもらっていることを明かした上で、深い感謝の気持ちをステージ裏の4人に告げた。そして、同じように、日々一人ひとりのリスナーからも大きな勇気をもらっていることへの感謝を語り、「みんなの生活の一部に入り込めるような存在になりたい」「これからも、みんなと一緒に成長していきたい」と胸の内を明かした。ラストは、バンドにとって大切な初期ナンバー「いつか」、そして「これからも、自分らしく生きていきましょう」という言葉と共に披露された「Be yourself」で、この日のライブは大団円を迎えた。
総じて、今回のライブは、ハルカミライとの熾烈なぶつかり合いでありながら、最後には両バンドの温かい優しさで胸がいっぱいになるような対バンだった。サウシーは今回の対バンツアーを経て、年末には『紅白』という大舞台へ挑む。そして、そこから幕を開ける2023年も、リスナーと一緒に懸命に走り続けていくはず。今以上に成長・進化を重ねたサウシーとまたこうしてライブハウスで再会できる日が、今からとても楽しみだ。
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