でんぱ組.inc~ディアステージ~秋葉原の過去と現在 古川未鈴&相沢梨紗&小鳩りあが吉田豪と語り合う

でんぱ組.incが語り継ぐ秋葉原の歴史

 でんぱ組.incが5曲入りEP『でんぱぁかしっくれこーど』をリリースした。本作は、グループ名の由来である“電波ソング”をテーマにしたコンセプトEP。Aiobahn×畑 亜貴によるタイトル曲「でんぱぁかしっくれこーど」をはじめ、2000年代に秋葉原で活動した2人組パフォーマー・FICEの楽曲「接吻〜らぶらぶ🖤ちゅ〜」をヒャダインアレンジによりカバー、さらにIOSYS・ARMとMOSAIC.WAVの共同制作曲「オーギュメンテッドおじいちゃん」、まふまふ書き下ろし曲「我ら令和のかえるちゃん!」を収録。Wienners・玉屋2060%編曲のデジタルシングル「でんぱっていこーぜ!!」も含め、電波ソングとともにあったグループのこれまでの歩みと最新の姿が詰め込まれた、聴き応え十分の作品に仕上がっている。

 今回リアルサウンドでは、古川未鈴、相沢梨紗、小鳩りあにインタビュー。グループ誕生の地・秋葉原ディアステージで“ディアガール”として働いていた経験のある3人が、でんぱ組.inc〜ディアステージ〜秋葉原の過去と現在、そしてそれぞれへのたっぷりの愛と思い入れを語り合った。聞き手はプロインタビュアーの吉田豪氏。(編集部)

10年前は想像していなかった未来

古川未鈴
古川未鈴

――10年以上の付き合いでもある未鈴ちゃんがいま目の前で子供(現在1歳)を抱きかかえている姿を見るのも感慨深いですけど、そもそも相手が子供を抱きながらの取材も初体験ですよ。

相沢梨紗(以下、相沢):なかなかないですよね(笑)。

古川未鈴(以下、古川):あんまり仕事場に連れてこないんで。これで2回目かな?

――どうしても予定がつかないときはしょうがないですからね。

古川:保育園がやってない日は難しいですよね。

相沢:休日だもんね(取材日は日曜日)。

古川:今日は社会科見学みたいな感じで。

相沢:(子供を見て)いいね、知らないところに来てビックリしてるよ。

――人生いろいろすぎますよ。Negiccoのこういう姿も見たことないですからね。

古川:今回、子供を連れて仕事場に行くことになって、迷惑かけちゃいそうだなと思って予定を見たらインタビュアーが「吉田豪」って書いてあって、それなら大丈夫だなって(笑)。

――なんの問題もないです! でもホント、未鈴ちゃんにこういう人生があるとは思わなかったですよ。

古川:10年前は想像していなかった未来というか。まだアイドルをやってるんだな、みたいなところがけっこう大きいかも。

相沢:未鈴ちゃんは最初、「26歳ぐらいで死ぬ」とか、ロッカーみたいなこと言ってたから。

――「アイドルをやれなかったら私は死ぬしかない」とか真顔でふつうに言う人でしたからね。

相沢:私と(夢眠)ねむがそれを真に受けて、「え、未鈴が死んじゃうー!」とか言って泣いて(笑)。

古川:当時はそういう気持ちでいたし、ふたりのことも「心配してんなー」くらいに思ってたんですけど、大人になって子供ができて、死ぬとか簡単に言っちゃいけないんだ、あのときの私、ごめんなさいと思って(笑)。

――その感覚がようやく芽生えた(笑)。相沢さんも含めて、ふたりには頑張ってほしいってすごく思ってるんですよ。それこそNegiccoもそうだし、ももいろクローバーZもそうだし、最近はアイドルの歴史が変わってきて既婚者でも活動ができるようになってきた感じがあるとか言われてますけど、そうやってメンバー増員もなくファンと一緒に成長していくグループもあり、メンバーを一新してリセットするグループもありで、そういう意味ででんぱ組.incは画期的だと思うんですよ。増員しつつ、ベテランも既婚者になってもそのまま続けるという。

古川:でんぱはやりたいこと全部やってると思うんで。もちろん卒業もいいことというか、意思があるのはいいことなので、卒業したい人はするし、私はアイドルしかないので子供を産んでもやりますみたいな感じだし、相沢さんは年々かわいくなっていくし(笑)。

相沢:ファンの人も懐が深いというか。私はメイドカフェ時代も入れると15年くらいアキバにいるんですけど、当時からいまだに来てくれる人がいるんですよ。あの頃とはきっと違うだろうけど、それでも好きって言ってくれる、自分の気持ちとか考えも変化して受け入れてくれるのってすごいことだなって思う。

――若いメンバーと同じ土俵でやり続けなければいけない楽しさもしんどさもあるかもしれないけど、だからこそふたりにはギリギリまでやり抜いてほしいんですよね。

古川:そんなにしんどくはないですけどね。意外と体力はあんまり差がなくない?

相沢:そうだね、まだ大丈夫。でも10年後は無理かもしれないですね。私これだけ長いことアイドルをやると思ってなかったので、最近余計に思うのが、周りに対してライバルとかあんまり考えたことなかったけど、過去の自分がライバルになることがあるんだなって。

赤ん坊:アーアー!

――インタビューに参加してきましたよ(笑)。

古川:フフフフ、大丈夫です、まだ宇宙語を話してるだけなので(笑)。

相沢:この間久々に、それこそ9年ぶりに日比谷野音でライブをやって。新規加入組のりあぴ(小鳩りあ)とかは初めてだったんですけど、あの頃の日比谷でやった景色って異常に印象的で、特にあの頃観てた人にはあのときの思い出のでんぱ組.incがすごく刻まれてるだろうから。いままであんまり思ったことがなかったけど、あの頃の自分に勝たなきゃいけないんだって突然思いました。あの景色とあのときの自分にいまの私は勝てるんだろうかって。

――思い出は美化されがちだから。

相沢:そうですね。私自身、あの頃やってるときの記憶は一切ないんですけど。

――え!?

相沢:ほぼほぼない。あの頃は全部のことが初めてすぎて、とにかく今日のことをやらなきゃ、みたいな。

――キャパオーバーだったんでしょうね。

相沢:よく踊って歌ってたなーぐらいの感覚だけど、よかったっていう印象はあるから、あれができるのかなって珍しく不安になりました。

――ボクのスマホにも、まだあのときの終演後挨拶の画像とか入ってますよ。

相沢:ヒィーッ!! 記憶がないです。誰々が何を言ってたとかはまったく出てこない。

古川:がむしゃらすぎたかもね、あのときは。

――小鳩さん、新メンバーとしてはどうだったんですか?

小鳩りあ(以下、小鳩):今回の野音の前に期間限定で当時の野音の映像がYouTubeに上がったんですよ。台風のなか歌ってる映像なんですけど、コメントとかにも「この時代のでんぱってやっぱり最高だ」みたいなことが書かれていて。私も当時すごくファンだったし、やっぱりでんぱ組.incってすごいなと思って観てて。私は勝たなきゃいけないという気持ちよりは、この歴史をどうやっていまのでんぱ組.incは受け継いでいけるんだろうかっていう不安のほうが大きくて悩んでたんです。でもいざ当日を迎えてやってみたら、「いまのでんぱ組.incすごい最高じゃん」と思えるライブになって、お客さんからも「どの時代のでんぱ組.incもやっぱり最高だよ」とか「好きだ」っていう声がいっぱい届いたから、勝つとか超えるとかそういうことでもなく、新しい歴史を紡いでいけたらいいな、いま私ができることはそれなのかなと思ってやってます。

一緒にいる時間が増えて変わったメンバーとの関係性

相沢梨紗
相沢梨紗

――でんぱは、この1年ぐらいで大きな変化がありましたよね。

古川:そうですね、私が本格的にライブに復帰したのが今年からだったので。えいたそ(成瀬瑛美)の卒業と新メンバーが入ってきましたっていう日から私もしばらくお休みに入ったので、じつはみんなと一緒にいる時間ってほぼほぼなかったというか。けっこう外から見てる感じで。

――出産前後は、自分のことでいっぱいいっぱいの時期ですもんね。

古川:そうですね。私は自分のことに集中しようっていう期間でもあったので。そこからの復帰が、体力面というよりは馴染めるかなっていうところがけっこう不安で。グループってメンバーが替われば空気感も変わるじゃないですか。そこに私が、こんな性格なんでまた1からではないですけど。

相沢:転校みたいな感覚で。

――「知らない学校に来ちゃった!」って(笑)。

古川:そんな感覚のところがあって。昔のでんぱのときの私って、いまの私よりもうちょっとぶっきらぼうだったと思うんですよ。でも、休み明けで戻ってきたとき、休んでた負い目もあるし明るくせねばと思って。何カ月かたぶんめちゃくちゃしゃべってたし、めちゃくちゃ明るかったんですよ。「おはよう! 気分はどう?」みたいな、そういう人になってて。やっと最近いつもの感じになれたかなっていう。若干、昔の私ってどんなんだっけ? みたいなところもあるんですけど。でも無茶苦茶明るくなったような気がしてる。口数が増えたなって。

――いまになって社交性が身についてきた(笑)。

古川:仲良くやろうという気持ちがすごく前面に出てる(笑)。

――前まではなんだったんですか!

古川:たしかになんだったんだって感じですけど(笑)。結成からいたので仲良くやろうっていうよりかは一緒に売れていこうぜ、みたいな感じで。でも、いまは若い子が増えて、シャイな子もいるし、私のぶっきらぼうな感じが、私のひと言があの子を傷つけたらどうしようみたいなことがけっこうあって。もし怖がられてたらどうしよう、一応先輩だし、そこは気を遣うべきところなんだろうなと思って。

相沢:珍しく気を遣ってるんだなって感じてた(笑)。優しくなったよね、未鈴ちゃん。

小鳩:じつは私も「え、未鈴さんってこんなにしゃべってくれるんだ!」ってすごくビックリした記憶があります。いまはメンバーみんなで仲良くっていう感じが心地よいですね。うれしいです。

――相沢さんも気を遣ったりしてるんですか?

相沢:あんまり変わってないかもしれないですね。これまでも私はあんまり怒ったりしてきてないし、「うーん……どうかな?」みたいなことがあっても、いったん見ておこうか、みたいな姿勢はあんまり変わってなくて。

――基本、距離を置いて眺めているイメージです。

相沢:そうですね。人見知りを直す気もそこまでないというか。もともと人見知りだし、それを矯正して変にやっても、でんぱ組は敏感な子が多いんでわかっちゃうだろうから。無理して話してくれてるんだっていうのが伝わるよりは、私は私の時間を過ごさせていただきます、みたいなところが多くて。でも、長いこといればいるほどボロが出てきて、服にご飯粒をつけたままいて、みんなに驚かれたり。

――クールを気取ってるかと思えば(笑)。

相沢:クールというよりはぼんやりしてるだけなんだけど、一緒にいる時間が増えてどんどんバレて、そこからみんなもイジッてくれるようになって、ちょっと関係性が変わったというか。ひなちゃん(高咲陽菜)にすごくイジられますね。

古川:最年少が。

小鳩:いちばん遠慮がない(笑)。

相沢:もともとはねむとかワッと言える子がいてそれでイジられてたけど、いまは率先してイジる子がいない代わりに私がみんなと一緒にいる時にうっかり案件を発動して、それにみんなが笑ってくれるっていうことがよくあって。そんな私を受け入れてくれる心が広いメンバーが集まってくれたので、救われてる感じがしますね。

――一気に人数を入れたのもよかったと思いますね。ひとりふたりだとプレッシャーがしんどかっただろうし。

相沢:たしかに。ねむが抜けて、ねも(根本凪)ちゃんとぺろりん(鹿目凛)が入ってくれることになったとき、後輩を入れる経験がなかったからいろいろサポートできなかったなって先輩メンバーとスタッフのみなさんの間では感じていたので、次はどうしようかとけっこう悩みましたね。入れるべきなのかっていうことすら悩んでたけど、いい子たちが5人見つかって、一気に入れようっていうのはそういうことも影響していると思います。まあ、5人ぐらいいないとえいたそには勝てないというのもある(笑)。

古川:パワーが(笑)。

――5人で同じうるささぐらいの。

古川:いや、まだえいたそのほうがうるさいと思う(笑)。ひなちゃんがいい線いってるけどね。

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