BROCKHAMPTON、多様なルーツを持つ“ボーイバンド”として掴んだスターダム ラストアルバムに至るまでの歩みを振り返る

 今年の1月に無期限の活動休止を発表し、11月17日に7thアルバム『The Family』、そしてその翌日に8thアルバム『TM』をリリースしたヒップホップ・コレクティブ、BROCKHAMPTON。この2作はグループにとって最後のアルバムになると明かされており、11月19日に行われたロサンゼルス公演を最後にBROCKHAMPTONは解散をした。

 BROCKHAMPTONは、テキサス出身のケビン・アブストラクトを中心に結成されたヒップホップ・コレクティブ。彼は14歳のとき、カニエ・ウェストのファンフォーラム KanyeToTheでメンバーを募集し、そのときに応募したメンバーと、自身の学校の友人たちでAlive Since Foreverというグループを2010年に結成する。Alive Since Foreverには30人以上のメンバーが在籍していたが、2014年にはグループ解散。新たにBROCKHAMPTONという名でグループのリブランディングを行った。

 数回のメンバーチェンジを経て、主に十数名のメンバーで活動してきたBROCKHAMPTONは、ヒューストン市内のシェアハウスで共同生活をし、2016年にミックステープ『All-American Trash』をリリース。2017年にはロサンゼルスに移住し、3部作としてリリースした『Saturation』シリーズは多くのメディアから高く評価された。

GOLD - BROCKHAMPTON
GUMMY - BROCKHAMPTON

 2018年には<RCA Records>とメジャー契約。BROCKHAMPTONはアルバム6枚で1500万ドル(約20億円)の契約をしたとBillboardは報じており、大きな話題になった(※1)。同年に4枚目のアルバム『Iridescence』をリリースし、同作はBillboard 200で1位を獲得。『Iridescence』の大ヒットで一躍スターダムを駆け上った彼らは、2019年に5枚目のアルバム『Ginger』をリリースし、同年の『SUMMER SONIC』にも出演した。

SUGAR - BROCKHAMPTON

 成り立ちや共同生活していたということの興味深さはさることながら、自身を「ボーイバンド」と呼んでいることもBROCKHAMPTONの特徴である。ボーイバンドは、*NSYNCやBackstreet Boysのような男性グループのことを指すが、彼らはボーイバンドという言葉のイメージを変えたいという思いで、自身を「One Direction以来最高のボーイバンド」と呼んでいた(※2)。2010年代には、タイラー・ザ・クリエイター率いるOdd Futureや、ジョーイ・バッドアス率いるPro Eraなどのヒップホップ・コレクティブが多数出現したが、そういった文脈に“ボーイバンド”という要素を足したことで、BROCKHAMPTONは唯一無二の存在になった。ライブではおそろいのジャンプスーツを着用し、一人ひとりにスポットライトが当たるような演出で、ヒップホップファンだけではなく、ポップスファンまで魅了した。

 BROCKHAMPTONのユニークさのひとつは、メンバーの役割である。バンドやグループの場合、ボーカリストや演奏陣など、音楽を奏でる人たちが“メンバー”として扱われることが一般的であるが、BROCKHAMPTONにはグラフィックデザイナー、ウェブデザイナー、フォトグラファー、そしてマネージャーなどもグループのメンバーとして在籍している。様々なバックグラウンド、人種、セクシュアリティ、そしてスキルを持ったメンバーが集まり、多様性のあるサウンドとスタイルを生み出した。

MAN ON THE MOON - BROCKHAMPTON

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