“特別なステージ=東京ドーム”に立つバンドには何が求められる? 歴代アーティスト&King Gnuのドーム公演成功から考える
しかしそんな中でもドームに果敢に挑戦し続け、成功を収めているバンドはいる。B’zは1997年以降、かなりの高頻度でドーム公演を続け、現在までに実に23回ステージに立っているし、GLAYも10周年、20周年という節目のライブをドームのステージで迎えている(通算でのドームライブは13回)。GLAYと同時代に人気を分け合ってきたL'Arc-en-Cielも同様で、今年5月には30周年の記念ライブを成功させたが、これが18回目の東京ドーム公演だった。通算で10回以上開催しているバンドということでいうと、L'Arc-en-Cielを超える19回のMr.Children、そして10回のサザンオールスターズもいる。サザンオールスターズの場合は桑田佳祐がソロでもドームに立っているので、それも合わせれば14回を数える(さらに桑田は今年12月に2デイズの東京ドーム公演を控えている)。さて、今名前を並べただけでもわかるとおり、どれも文字通り「国民的」バンドである。親子2代、場合によっては3代にわたって愛されるような存在であり、日本人なら誰でもその代表曲を口ずさめる、そういうレベルのバンドだ。裏を返せばそうやって長い間愛され続け、第一線で活躍し続けることが、今ドームバンドとしてあのステージに立つための必要条件だということだろう。
では、King Gnuはどうなのか。そういう存在になってきているのか。答えはイエスでもありノーでもあると思っている。実際にドームの客席には親子連れと思しき観客の姿も見えたし、「白日」や「カメレオン」のような楽曲はまさにお茶の間レベルで彼らの名前を知らしめた立役者だといえる。しかし同時に思うのは、それ「だけ」ではないやり方で彼らはドームの舞台を勝ち取ったということだ。当たり前に緊張感や高揚感はあったにせよ、東京ドームの巨大なステージに立つ彼らはいい意味で「いつも通り」に見えた。ドームだからといって特別な演出やサービスはせず、むしろストイックに彼らはライブをやった。ライブ中に井口理(Vo/Key)が振り返っていたように、ライブハウスで友達とスタッフしか客がいないような状況から、長い時間をかけて歩んできた道のりーーそのまっすぐな延長線上で、彼らはドームライブを完遂したのだ。その意味で、彼らがドームスケールのバンドになったということは革命的なことだと思うし、ここから先進んでいく道もまた、この時代にロックバンドの新しい物語を示すものになるはずだ。
King Gnuだけではない。今年9月、コロナ禍を経て念願のドーム公演『Du Gara Di Du』を成功させたSEKAI NO OWARI、そして2018年に続いて来年2度目のドームツアーを行うback numberやONE OK ROCK。ようやく、新たな世代のバンドが当たり前にドームのスケールで活躍する時代がやってきたのかもしれないと思うとワクワクする。それぞれがそれぞれのやり方で紡いできた歴史の到達点として、そしてその先への通過点として、あの巨大な空間をどう「自分たちのもの」にしていくのか。これからの未来に期待したい。
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