THE ORAL CIGARETTES、全身全霊で届けた“自分を貫く大切さ” SKY-HI、Kamuiも駆けつけた『PARASITE DEJAVU』初日レポ

オーラル『PARASITE DEJAVU』初日レポ

 10月22日、23日の2日間にわたり、さいたまスーパーアリーナで開催されたTHE ORAL CIGARETTES主催のイベント『PARASITE DEJAVU 2022 〜2DAYS ARENA SHOW in SAITAMA〜』 。オーラルは2019年にも、大阪・泉大津で同タイトルを冠した野外イベントを開催しており、今回3年ぶりに第2回が開催される運びとなった。3年前と同じく、DAY1は「ONE MAN SHOW」として、DAY2は「OMNIBUS SHOW」として開催され、23日はMAN WITH A MISSION、凛として時雨、マキシマム ザ ホルモンをはじめとするバンドたちとの豪華共演が実現した。この2日間を通して、今自分たちが立つ現在地と次のビジョンを2つの異なる方法で高らかに示してみせた4人。今回は、「ONE MAN SHOW」として開催されたDAY1(22日)の模様をレポートしていく。

 荘厳でダークな映像演出に導かれ披露されたオープニングナンバーは、昨年リリースされた「Red Criminal」だ。容赦なく吹きつける特効の炎に彩られたステージで、山中拓也(Vo/Gt)が見せた余裕すら感じさせる不敵な笑みが忘れられない。もはや王者の風格すら漂う堂々たるパフォーマンスで満員のさいたまスーパーアリーナを制圧し、立て続けに「MACHINEGUN」へ。乱反射する緑と黄色のレーザーの光を跳ね除けるような熾烈なパフォーマンスは圧巻で、冒頭2曲を通して、過剰で過激なオーラルの最新型のロックを高らかに打ち鳴らしてみせた。

THE ORAL CIGARETTES『PARASITE DEJAVU 2022 〜2DAYS ARENA SHOW in SAITAMA〜』
山中拓也(Vo)

 この日初めてのMCで、山中はコロナで中止となってしまったアリーナツアーのリベンジ&3年ぶりの『PARASITE DEJAVU』という2つの大きな意義を宿した今回のさいたまスーパーアリーナ公演への気合いを語った。そして、かつて「いつかワンマンライブで、さいたまスーパーアリーナを埋めたい」とファンに約束したことを振り返り、満員のフロアを見ながら何度も感謝の言葉を伝えた。山中曰く、その目標を掲げた時には「オーラルができるわけない」「オーラルの勢いはもう止まっている」と嘲笑されることもあったという。しかし4人は、反骨精神を燃やしながら懸命に走り続け、そしてこの日、その約束をファンと共に実現させることができた。これまでオーラルは、群雄割拠のロックシーンにおいて幾度とない「BKW(番狂わせ)」を果たしてきたが、今回のたまアリワンマンは、バンド史上最大級の「BKW」なのだろう。メンバー4人の自信と誇りに満ちた表情に、思わず胸が熱くなる。

 前半のハイライトを担ったのは、見た者を石に変えてしまう力を持つギリシャ神話のメデューサのムービーに続けて披露された「嫌い」であった。メデューサの悲劇の物語を伝えたムービーの最後に、「※演出のため、次の1曲は動かないでください」というアナウンスが映し出され、そのまま「嫌い」のパフォーマンスに突入するが、照明が逆光となっていて4人の姿を観ることはできない。視界にあるのは、巨大ビジョンに映し出されたメデューサの瞳のみ。そしてその瞳の中には、戦慄して立ち尽くす観客たちの姿が映し出される。この世の全てを恨み尽くすようなメデューサの憎悪が、4人が届ける「嫌い」のメッセージと重なり、楽曲の持つディープな世界観が広がっていく。

 この後のMCで、山中は「嫌い」における実験的な演出について、「みんな、めっちゃ固まるやん」「あんな景色、初めて観たわ」と振り返った。筆者は、アリーナ全体を俯瞰できる後方の席からライブを観ていたが、たしかに大きな動きを見せる観客は一人もいなかった。今回の演出は、ファンへの確かな信頼があったからこそ挑戦できたものであり、その試みは見事に成功した。山中は、このコロナ禍において数多くのルールに縛られているロックシーンについて語りながら、ロックバンドはそうしたルールの中においても観客を最大限に魅了させることができると告げた。そして、シーン全体を見渡すと不明瞭なルールも多く、何に従えばいいか分からなくなることもある現状に触れながら、彼らは、ファンにしっかり自分たちのルールを提示していくことを宣言した。それは他でもなく、いつかみんなで一緒に自由なライブ空間を取り戻すためだ。「何に頼ったらいいか、従ったらいいか分からなくなったら、俺らに頼ってほしい」という山中の言葉を通して、先ほどの「動かないでください」という演出は、バンドとファンの間の信頼関係を確かめ合い、深め合うためのものであったという真意が伝わってきた。そして山中は、「最終的には、自分自身を信じてほしい」「自分に正しく、自分に正直に」と付け加えた。このメッセージは、「なりたい自分になれず苦しかった時期に作った曲」として紹介された2015年の楽曲「キエタミタイ」をはじめ、ライブ後半のMCで改めて繰り返し発信されることになる。

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 ライブもいよいよ後半戦に突入。ラッパーのKamuiをゲストに迎えて、「Ladies and Gentlemen」と、今年リリースされたコラボ曲「ENEMY feat. Kamui」を2曲続けて披露してみせた。Kamuiによる流麗でありながらエッジーなフロウは圧巻で、ヒップホップのバイブスとロックの高揚感が熾烈に混ざり合いながら、会場全体をマッドな熱狂で満たしていったあの時間は、この日のハイライトの一つだった。続けて、ステージ後方の巨大ビジョンの中央からSKY-HIが登場し、コラボ曲「カンタンナコト feat. SKY-HI」へ突入。SKY-HIのシャープなフロウによって、本来この曲が秘めていた攻撃性がどんどん増幅されていく展開に痺れる。曲の最後には、山中、SKY-HI、鈴木重伸(Gt)、あきらかにあきら(Ba)が花道の先端に設置された円形ステージへ移動し、4人で背を向け合いながら全方位の観客をアジテーションしてみせた。そして、曲を披露した後に放たれた「全ての愛を込めて、愛してるぜ!」というSKY-HIの渾身のシャウトに、会場全体から鳴り止むことのない拍手が送られた。

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