TWICEメンバー分析 第8回:チェヨン、自分らしいありのままの姿で切り開く新しい道
2022年7月、メンバー全員が所属事務所との契約更新を行なったことが発表されたTWICE。2015年のデビュー以来、韓国国内はもちろん日本をはじめ世界中の人々の心を掴み、K-POPシーンを代表するビッググループに成長した彼女たち一人ひとりの魅力を、改めて捉えたい。本稿では、TWICEにおける“ラップ担当”の一人、チェヨンに焦点を当てる。
今年まで開催されていたワールドツアー『TWICE 4TH WORLD TOUR “III”』で披露された楽曲「ICON」中盤、暗転したステージに一人スポットライトを浴びるチェヨンが、約26秒間にわたる長尺のラップパートを繰り広げる一幕が印象的だった。
せり上がるステージに乗った彼女がラップをしながら会場を見渡すその速度、客席を指差す、髪をかきあげる、目をくるりと回すといった各動作のタイミング、その全てからは“チェヨンのペース”が圧倒的なまでに感じられ、その瞬間、広大なステージと会場が丸ごと彼女のペースに巻き込まれていくのを実感した。
その時チェヨンが口にしていたリリックは〈I know that you wanna/Get into the middle of my ocean(君が望んでいることは知ってる/私の海の中に入って来て)〉というものだったのだが、筆者は「スターとは、受け手に“この人の海が生み出す波に身を任せたい”と望ませるような存在のことを言うのかもしれない」と思ったのだった。
グループの中でもラップを得意とするチェヨン。しかしその魅力は、ボーカルの側面からも感じ取ることができる。彼女のボーカルで特筆すべき点は、楽曲の歌いだし、ブリッジ、サビ、落ちサビ、どんな箇所を歌っても、“チェヨンの歌声”として自然にフィットするところだろう。
例えば「The Feels」ではイントロ部分、「Feel Special」では歌いだし、「YES or YES」ではサビ部分、「CRY FOR ME」では楽曲の締めくくりと、非常に多様なパートを担当している彼女。その上、「FANCY」サビ終わりの〈FANCY,ohh〉というパートではキュートでアイコニックな声色、「LOVE FOOLISH」サビでは憂いのあるアンニュイなボーカル、また「Dance The Night Away」のラストでは透き通ったクリアな声と、その表現もバラエティに富んでいながら、そのどれもが一聴して“チェヨンの歌声”と認識することのできる不思議な個性がある。