連載「lit!」第21回:アンジュルム、CIRGO GRINCO……多彩なジャンル楽しめる最新女性アイドルソング
「アイドル戦国時代」が叫ばれ始めたのは、2010年のことでした。あれから12年、当時と比べるとブームとしては落ち着きましたが、ライブアイドルのシーンはすっかり文化として定着した感があります。その過程では様々な音楽性を提示するグループが現れ、シーンの可能性とリスナーの幅を拡張していきました。今やアイドルソングの醍醐味は、どんなジャンルでも呑み込む多様さにあると言えるでしょう。そこで今回の「lit!」では、ファンクやフュージョンなど様々なジャンルを楽しめる最新アイドルソングを特集します。
アンジュルム「悔しいわ」
まずはアンジュルムの今年2枚目となるシングルから「悔しいわ」。シングルでは6年振りに中島卓偉が提供した楽曲です。アンジュルムと中島卓偉の組み合わせと言えば、2015年リリースの代表曲「大器晩成」が思い浮かびます。スマイレージからの改名後最初にリリースしたこの曲から、現在のアンジュルムに繋がる快進撃が始まったといっても過言ではないでしょう。
「悔しいわ」も「大器晩成」同様にアッパーなファンクナンバーです。「大器晩成」は大器晩成な人生なんてひっくり返して今チャンスを掴みたい! という前のめりでギラギラした曲でしたが、今回は成功する同世代を見て焦る気持ちを〈あぁ もう!めっちゃ悔しいわ!〉とストレートに表現しています。SNSを通じて同世代の活躍やキラキラした生活が可視化されやすくなった現代を象徴する曲とも言えるでしょう。YouTubeでは公開からわずか17日で再生回数が100万回を突破するなど、まだまだ多くの共感を呼びそうです。
CIRGO GRINCO「Shooting Star」
フィロソフィーのダンスのプロデューサー・加茂啓太郎が手がける2022年結成の3人組、CIRGO GRINCO(シルゴ・グリンコ)。彼女たちは5月から毎月配信シングルをリリースしており、「Shooting Star」はその5作目となる楽曲です。作詞はコラムニストやラジオパーソナリティなど様々な肩書きを持ち、Tomato n'Pineをはじめとするアイドルソングも手がけてきたジェーン・スー。旧来的な価値観にとらわれず自分を信じて未来を切り開こうという、聴く者を鼓舞するメッセージはまさに時代が求めるものだと感じます。
一方、作編曲を手がけた山本真央樹は様々なアーティストへの楽曲提供をこなす傍ら、フュージョンバンド・DEZOLVEのドラマーとしても活動しています。彼らが参加したフィロソフィーのダンス「ドント・ストップ・ザ・ダンス with DEZOLVE」はアレンジや演奏力が高く評価され、バンドの名は一躍アイドルファンにも知れ渡ることとなりました。オリジナル曲での参加となった今回は、フュージョンらしいテクニカルなアンサンブルを聴かせつつポップスとしてのキャッチーさも同居。コアな音楽ファンからフュージョンに馴染みのないリスナーまで、幅広い層にアプローチできそうな楽曲です。