AA=、激動の世の中を反映させた新たなストーリー 苦悩と闘争を打破するためにライブで表現した“『Suite #19』の先”
「Peace!!!」が終わり、上田がマイクに向かって話し出すと、やっと場内の緊張がほぐれる。続いて演奏された「posi-JUMPER」は、これからは思いきり楽しんでくれ、というAA=からの合図だ。とはいえ単に楽しむだけでは終わらないのが、AA=の楽曲だ。抽象化された、だが示唆に富む歌詞は、このライブを貫くテーマをさまざまな角度から照射するようでもある。暴れながらも、そんなことを頭の片隅で冷静になって考えている。その感じがAA=のライブらしいのである。
そしてアンコールの最後になって「PICK UP THE PIECES」が、ようやくプレイされる。〈立ち上がれるさ/そうさ You can go that again〉という歌詞は、ここで歌われてこそ意味を持つのだった。
気象庁が「過去に類似の台風がないほど危険」だと表現する台風が接近しつつあったこの日は、「国葬」の9日前というタイミングでもあった。前回のライブ時のウクライナ侵攻といい、ただの偶然と片付けるには不穏である。この7カ月の間に起きたもうひとつの大事件は、元首相の射殺というものだった。そこから続く果てしない政治の混乱。我々を取り巻く一見平穏なように見える日常は、実は危ういバランスの上に成り立っている。それをとことん思い知らされた夜。AA=および上田剛士の音楽は、表現は、いやその存在自体が、時代のざわめきを呼び寄せ、体現しているように思えてならない。