THE BACK HORN、雨の中にも広がった奥深い音楽世界 5年ぶり日比谷野音での『夕焼け目撃者』

THE BACK HORN、5年ぶり日比谷野音レポ

 山田の呼びかけで、観客がスマホのライトを掲げるなかで演奏されたのは、「世界中に花束を」(配信シングル/2011年)。2011年の震災の直後に発表された楽曲だが、〈今日だけの悲しみにさよならを告げて手を振るよ〉というラインからは、2022年の世界に必要なメッセージをしっかりと感じ取ることができた。

 「心の土砂降りはまだ終わってませんよね! ……今、どういう気持ちで言ったのかわからないけど(笑)、熱さは伝わるよね。行こうぜ!」(山田)という言葉に大きな拍手が起こり、超ストレートなロックサウンドと前向きな願いを響かせる「希望を鳴らせ」(シングル『希望を鳴らせ』/2021年) からライブは後半へ。「Running Away」(ミニアルバム『情景泥棒』)、「ヒガンバナ」(アルバム『アントロギア』)と鋭利なアッパーチューンを連発し、美しい夜景とともに大きな感動へとつながっていく。本編の最後は、「コバルトブルー」(シングル/2004年)、「刃」(ベストアルバム『BEST THE BACK HORN』/2008年)。どちらもキャリアを代表するアンセムだが、メンバー全員の集中力と気合いによって、新たな息吹が吹き込まれる。目の前のライブにすべてを注ぎ込み続けてきたTHE BACK HORN。この日も4人は、その最高到達点を更新してみせた。

 「待ってるからずぶ濡れだったと思うけど、今日ここに来てくれたこと、本当にありがとうございます」「10月1日にも大阪城音楽堂でライブをやってきます。この最高の空気を持って、やってきたいと思います」(松田)と挨拶し、穏やかな旋律とアンサンブルが広がった「風の詩」(アルバム『リヴスコール』/2012年)を演奏。「忘れないよ、今日のこと。最高の時間をどうもありがとう。また生きて会おうぜ!」という山田の叫びとともに圧倒的な躍動感にあふれた「導火線」(シングル『孤独を繋いで』/2017年)、崇高にして激しいメロディ、〈忘れないで歌を〉〈花よ 花よ 今咲き誇れ〉という歌詞が真っ直ぐに届いた「太陽の花」(アルバム『カルペ・ディエム』)を放ち、ライブはエンディングを迎えた。

 “今、メンバー4人が演奏したい曲をやる”というシンプルなコンセプトを掲げた『夕焼け目撃者』。5年前に続き、今回の野音も雨に見舞われたが、THE BACK HORNにとってはそれも演出の一つ。オリジナルアルバムのツアーとも、マニアックな楽曲を披露する『マニアックヘブン』とも違う、このバンドの奥深い音楽世界にどっぷりと浸れた素晴らしいライブだった。

■公演情報
THE BACK HORN『KYO-MEI ワンマンライブ 〜第四回夕焼け目撃者〜』プレイリスト
2022年9月24日(土)東京・日比谷野外大音楽堂
10月1日(土)大阪・大阪城野外音楽堂
セットリストはこちら

<アーカイブ配信>
視聴チケット:¥3,500
配信期間:10月9日(日)23:59まで
販売期間:10月9日(日)21:00まで
販売はこちら

THE BACK HORN、ダイナミックに鳴らした“自由を掴み取る意思” 『アントロギア』ツアーが予感させるネクストフェーズ

THE BACK HORNが全国ツアー『「KYO-MEIワンマンツアー」〜アントロギア〜』の東京公演を6月10日、Zepp Di…


THE BACK HORN、1年ぶりの有観客ライブ『マニアックヘブン Vol.13』 “バンドの核”と“未来への希望”をかき鳴らした一夜に

THE BACK HORNが12月6日、東京・新木場STUDIO COASTで『マニアックヘブンVol.13』を開催した。  …

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる