9mm Parabellum Bullet 菅原卓郎&滝善充、『TIGHTROPE』全曲解説 アルバムに反映された3年間の心の動き

 9mm Parabellum Bullet(以下、9mm)の3年ぶり9枚目となるオリジナルアルバム『TIGHTROPE』が完成した。全10曲、35分。どの角度から捉えても9mmらしさ全開で、まるでベスト盤のような感触さえある。コロナ以降の世界と向き合いながら、彼らの比肩なき魅力が凝縮された本作はどのように完成したのか。菅原卓郎(Vo/Gt)と滝善充(Gt)の2人に全曲を紐解いてもらいながら『TIGHTROPE』の核心に迫った。(三宅正一)

ベスト盤かな? と思うくらいの作品

ーー全10曲、35分。バラエティに富みながらどの角度から捉えても9mmらしさ全開で、ベスト盤のような聴き応えさえあるなと思いました。

菅原卓郎(以下、菅原):そうですね。自分も感じています。1曲ずつ時間をかけて作ったから、やっぱり曲のキャラクターも際立ってると思うし、アルバム自体の尺も「いいタイム出たぞ」という感じですね。あと、この3年間の心の動きがそのまま反映されていると思います。最近の「バンドが元気よくいけるようになってきたぞ」という空気感が「One More Time」とか「All We Need Is Summer Day」に反映されていると思うし、一方で、「泡沫」とか「煙の街」とかダークな曲には、その時の抜け出せない気持ちというか、「そういう気分ってあったよね」というモードが反映されていると思いますね。

ーーコロナの世界になってから以降のモードもリアルに反映されてもいる。

菅原:リスナーと自分たちの置かれてる状況が、全く一緒であることはなかなかないので。しかも世界中で。そこに対して、かっこつけて覆い隠したり、前向きなメッセージを発するのではなく、「ちゃんと自分たちはこれをやろう」って決めながらやってきたことを、アルバムに込められたのはよかったなって思います。

ーー滝さんの率直な手応えはどうでしょう? 

滝善充(以下、滝):コロナ禍に入って活動がしづらい中で「どうしようかな」と考えながらも配信リリースをしたり、CDプレスしたシングルを出したり。あとは、新日本プロレスの「G1 CLIMAX 30」のテーマソングとして「Blazing Souls」というインスト曲もシングルカットしました。そうやって、シングルカット前提で書かれた曲が6曲くらいあるんですよ。「Hourglass」と「All We Need Is Summer Day」もそういうマインドで作ってたので。だから、かなり粒よりというか、僕も軽くベスト盤かな? と思うくらいの作品になったと思います。

ーーここからは1曲ずつ話を聞かせてください。怒涛の展開、メタル節やワルツ調なメロディなど9mmの旨味が凝縮された「Hourglass」からアルバムが走り出します。

滝:オケは、携帯に吹き込んであったいつぞやのメモを聴いて「なんだこの曲、めちゃくちゃ暗いな」と思って(笑)。でも、メモを聴いて寝た後に次の日まで覚えている曲だったのでこれは玉石混合の「玉」だと思って、「やるぞ」っていうモードに入りました。どんどん速くして変調までしちゃって(笑)。もう入れられるだけ音符を入れました。メロディはヨーロッパとかアジア的な、民謡のような……ユーラシア感のようなところに帰結することはありますね。

ーー歌詞に関しては、あの世から地上を見下ろすのではなく、見上げているような趣があって。そして、生命を肯定していたいという意思も感じる。卓郎さんの死生観がリアルに出ているのかなと思いました。

菅原:これは、ギターを録ってる時にうちの父親が亡くなって。

ーーそうだったんですね……。

菅原:年の初めから入院してたんですけど。コロナの影響で病院に入れないし、お見舞いにも行けなくて。今年の3月くらいには、もう会えないかもなっていうのがだんだん分かってきていて。その感じを思い返したら、砂時計の中にいるみたいだなというふうに感じたんです。実際、いざ父が亡くなったときは、歌詞を書いたりはできなかったんですけど、これくらいダークな曲だから、タイミング的にも、ここの気持ちはちゃんと忘れないように取っておいて、書くしかないって思って。

ーー卓郎さんのノンフィクションな感情を乗せたという。

菅原:そうですね。ただ、9mmの持ってる死生観としてはフィットすると思うし、今まで9mmでやってきたこととズレてないとも思う。あと、この曲に希望みたいなものが同時にあるのは、火葬した後に、うちの田舎では「また会えるようになるから」という意味を込めて五穀の種を蒔く風習があって、それが曲にも反映されているというか。特に、2番のコーラスとか2番のBメロのギターソロ終わりの部分とかですね。だからこの曲は、砂時計の中にいて、それをぶっ壊すみたいな歌じゃなくて、俺たちはみんな砂時計の中で、いろんなふうに砂が落ちていく場所で生きているんだなというイメージで。それは絶望的なわけじゃなくて、そこに花が咲くことでもある。1番のサビの〈凍えているよ〉というのも、パッと聴くと、ダークな曲にふさわしいフレーズだなという印象があると思うんですけど、実は逆説的に「〈この微かな温もりも 許されないのが この世界〉だとしたら、凍えているけど、そうじゃないよ」「土に還ったからって、微かな温もりも許されないわけじゃないんだよ」というイメージを裏に込めているので、希望があるように感じてもらえるんじゃないかなって思います。

ーー今の話を聞くとより命が繋がっていく曲としてのストーリー性が迫ってくるなと。

菅原:だから一言でレクイエムとは言いたくはないんだけど、でも人によってはコロナ禍で別れがあったかもしれないし、自分もその中の1人として、こういうふうに書けたことにすごく助けられました。個人的なところだけに留まってないと思うんですよ。この曲にふさわしい表現ができたと思うので。

ーー話してくれてありがとうございます。2曲目「One More Time」。先ほどの話にも出ましたが、コロナ禍初期の反動でできたアッパーでキャッチーな曲でもあると。このアルバムに入れることができたという安堵感もあると思いますが。

滝:そうですね。本当にアルバムに入れることができて良かった。この曲を形にできるかがコロナ禍における一番の勝負だったところもあったので、いい形にできてよかったです。あと何よりも、先行でリリースされた「白夜の日々」と「泡沫」と「One More Time」でキャラが被ってなくてパワーバランスがいいから、3兄弟で走らせることができて良かったです。最初に作った時はもうちょっとメロウなサビが乗ってたんですけど。今の方が「元気だよ」「面白いよ」みたいな姿勢がちゃんと表現できていると思ってますね。

ーー歌詞は、閉塞感に満ちた世界の中で、それでも守りに入らない気持ちの動きであるとか、七転び八起き的な歌にも聴こえる。

菅原:とにかく言葉遊びをしました。Aメロだったら〈ちょっと〉とか〈もっと〉とか同じように韻を踏んだり、サビも同じメロディの繰り返しになるから、同じ形を作ってキャッチーにしたりして。そうやっているうちに「あ、これ繰り返してるなぁ」「もう一回、もう一回って曲だなぁ」ってなって、「じゃあ『One More Time』だな」とイメージが固まっていきました。

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