9mm Parabellum Bulletは人間の生命力を叩き起こす 無駄なものを徹底的にそぎ落とした熱狂のステージ

9mm『カオスの百年 vol.14』レポート

 前回、6月に開催したアルバム『BABEL』の完遂と、インディーズ時代の2作『Gjallarhorn』と『Phantomime』を再現する2部構成ライブの初日にも感じたことだが、現在の9mm Parabellum Bulletはその曲数と比較して、実質的なライブの時間がグッと凝縮されている。2021年9月9日、いわゆる“9mmの日”に地元・横浜で開催した『カオスの百年 vol.14』も、削ぎ落とせるアウトロやMCは徹底的に削ぎ落とし、この日ならではの驚きのセットリストと趣向で、いま標榜するライブを実現していた。

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 今回はゲストアクトに9mmのサポートギターを務める爲川裕也のバンドfolcaが登場。9mmのファンにfolcaをナマで見て欲しいという想いを発端に実現した。数年ぶりに体感したそれは想像以上にポストパンク的なビートと、爲川と山下英将(Vo/Gt)の緻密なギターアレンジが際立ったものに成長。冗長なソロよりもユニークなサウンドで緩急をつける爲川のギターセンスを理解できたことも楽しい。9mmのライブでは最多でギター4本のアンサンブルが聴けるが、各々の個性を因数分解できた機会でもあったのだ。オリジナルはもちろん、ハイライトは9mmファンの人気投票でも上位を誇る「光の雨が降る夜に」のカバー。folcaの演者としてのプライドと9mmファンとしての心理が混ざった、リスペクトの気持ちを演奏に滲ませていた。

9mm Parabellum Bullet

 前回のコンセプチュアルで緊張感に満ちたツアーから一転、ある種、年に一度の祭りにも似たムードが醸し出される中、9mmのオープナーはインストの「Blazing Souls」。HEREの武田将幸(Gt)を含む5人編成の出音の圧とソリッドさ、フロアを満たす音の容積に身体が対抗していることを自覚する。最初のブロックで早々に「光の雨が降る夜に」を本家が披露。滝善充(Gt)の身体性とソロの連動に独自のフレージングやエフェクター使いの謎を垣間見て、改めて9mmの井戸の深さを知る。音の容積の圧は確かにあるのだが、例えばギター3本のリフやカッティングを緻密に積み上げた躍動感は年々、進化している。

 緻密さに圧倒される中、菅原卓郎(Vo/Gt)お馴染みの「行けるかー!」の一声とともになだれ込んだのは「Endless Game」。トリプルギターの激烈なカッティングが空気を鋭く切り刻んでいく。続く「DEEP BLUE」も喝を入れられるような痛快さ。ジャジーな「キャンドルの灯を」もBPM200超えの凄まじさで、中村和彦(Ba)のアップライトベースも小気味よく響く。こんな曲だったっけ? と半ば呆然としながら、ばっさり切り落とすようなエンディングに何故か笑いがこみ上げてしまった。

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