CYNHN、新体制初シングル『キリグニア』で明確になった“歌”への想い お互いが考える声の魅力も明かす
青色をコンセプトに活動するヴォーカルユニット CYNHN(スウィーニー)が、新たに広瀬みのりをメンバーに迎え、10作目のシングル『キリグニア』を8月31日にリリースする。聴き手に伝えたいことをしっかり届けようとする真摯な姿勢は、新体制で臨んだ今回の新曲でより鮮明になったようだ。コロナ禍でもぶれることなく走り続けてきたユニットの最終地点はどこにあるのか。それを探るべく、メンバーたちに「これまで」と「いま」、そして「これから」を語ってもらった。(まつもとたくお)
新メンバー 広瀬みのりの印象の声ににじみ出る協調性
――コロナ禍の日々が続きますが、改めてこの2年はどのような気持ちで過ごしていましたか?
百瀬怜(以下、百瀬):最初の頃は何でこんなにうまくいかないんだろうって思ってました。でも2年の間に配信ライブを通してパフォーマンスの見せ方を学んだり、ファンの方が増えてくださったりとプラスの面もあり、今はまた気持ちが上がっている感じがしています。
月雲ねる(以下、月雲):新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた時期は、私たちがシングル『水生』を出すタイミングだったんです。「水生」は個人的にもすごく好きな曲だったので「これはいけるぞ」と思っていたら、コロナ禍になったので悔しかったですね。一方で配信ライブが増えて、カメラに向かって歌って踊るスキルが身についた気がするので、その点は今の自分たちに生かされているのかなって思います。
――そして今年6月には広瀬みのりさんが加入しました。CYNHNに参加するまでの経緯を教えてください。
広瀬みのり(以下、広瀬):私は元々アイドルをやっていたんですけど、何よりも歌うことが好きだったので、これからも続けたいと思って、ディアステージとパーフェクトミュージック合同のヴォーカリストオーディションを受けました。審査が進んでいくうちに、合格したらCYNHNに加入することがわかったんです。私もこのユニットで歌えば音楽をもっと好きになれそうだって思ったので、合格できて本当に嬉しかったです。
――メンバー4人に初めて会ったときの印象はいかがでしたか?
広瀬:とてもギャップが激しかったです(笑)。カリスマ性があって、かっこいいっていうイメージだったので……。
百瀬:えー、なんかごめんね(笑)。
広瀬:でも初めて会ったときから笑顔で受け入れてくれたんです! 自分の名前を言ったら拍手してくださって。それが印象に残っています。愛のある方々だなって思いました。
――他のみなさんは、広瀬さんと会ったときの印象はいかがでしたか。
青柳透(以下、青柳):何かを話し始める前に、一度じっくり考えられる人だと思いました。こういうことをしゃべったら相手がどう感じるんだろうみたいなことを意識しながら話してくれるので、一緒にやっていけそうな気がしました。
――先ほどの話し方でもそういう感じがありましたよね。
綾瀬志希(以下、綾瀬):実は直接会う前に「どんな子なんだろう?」とネットで調べたんですよ(笑)。すぐに“歌ってみた”風の動画を発見して、彼女の声を聴いてみたら、素直そうでまっすぐ響くし、協調性や内面的な美しさもにじみ出ていていたんです。だから「うまくやっていけそうだな」と思ったのが第一印象でした。
――広瀬さん、褒められて良かったですね。
広瀬:はーい(照笑)。
月雲:私、人見知りというか、人と仲良くなるのが得意じゃないんですけど、それを踏まえて話しかけてくれるから、優しい人だなって思いました(笑)。
――今回5人体制になって初めてのシングル『キリグニア』ですが、表題曲は抽象的な表現があって、音の区切り方も独特です。歌うのが大変だったのではないでしょうか。
月雲:歌割りをもらったとき、私と志希ちゃんのパート(Dメロ)で〈ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ〉と交互に畳みかけるように歌うところがあるんですが、初めのうちはめっちゃ混乱しました。「今どっちだ?」みたいな(笑)。
百瀬:途中でおかしなことになっちゃってたよね。
月雲:ひっかけ問題みたい(笑)。
――そもそもCYNHNって歌うのが難しそうな曲が多いですよね。
百瀬:それでもこの曲は特に難しかったです。最初に聴いたとき、とにかくリズムが早いし、グルーヴ感も必要だし、「これはヤバい」と思いました。
――曲を出すたびに難易度が上がっていく感じはありますか?
全員:めっちゃ思います。難しいです!
青柳:曲の内容を完璧に理解したつもりでレコーディングしてみたら、「何か違うかも」と思うときもあります。
――「キリグニア」は前向きな雰囲気がありますよね。みなさんもいつもより明るめに歌うことを意識されたりしたのでしょうか。
綾瀬:明るいというよりも、今までと違う色合いの曲だなと思いました。これまでにない表現が入った歌詞が印象的で、例えば〈目の覚める色〉とか。私たちは淡い感じの色を表現することが多かったので、新鮮さを覚えましたね。
――この曲を初めて聴いたときの感想はいかがでしたか?
月雲:私は今まで「水生」がお気に入りだったんですけど、それを超えるかもしれないっていうぐらい好きな曲です。自分にはもっと落ち着いた曲調のほうが似合っていると思うんですが、サウンド的にはこういう勢いのある曲が好きです。
――カップリング曲の「ソルベ」は疾走感のあるサウンドが心地よいですね。作詞は以前、「夜間飛行」(EP『#0F4C81』収録)の歌詞も担当された蒼山幸子(ex-ねごと)さんです。
綾瀬:蒼山さんが書く歌詞って、情景がすぐに思い浮かぶし、女性のことをわかっているなって痛感するフレーズもたくさん出てくるんです。過ぎていく時間の中でのもどかしさとか、色彩や温度なども伝わるような歌詞なので、そのあたりを聴いてほしいなと思います。サウンドも夏の終わりにぴったりですしね。
――この曲も広瀬さんの新加入を祝うかのようにポジティブなオーラを放っているように思いました。
広瀬:「キリグニア」も「ソルベ」も「この曲で私のCYNHNとしての人生が始まるんだ!」って思いながらレコーディングに参加しました。同時に歌い方とか表現方法で挑戦したいことも出てきたので、今後はそうしたところをファンの方々に届けられるように頑張っていきたいです。
――どちらの新曲もリスナーに曲の世界観をしっかり届けているような気がしました。そのあたりは意識しましたか。
綾瀬:この曲に限らず、綾瀬志希という人間がどうやって言葉を伝えるかっていうのは大切にしています。それはデビューした頃から一貫していることで、今も変わってません。私、レコーディングする前に歌詞のひと言ひと言をどういう意味なのか考えるタイプなんですよ。新曲はその点で満足できる仕上がりになったので嬉しいです。
――プロとして積み重ねてきた経験も表現方法の幅を広げる大きな要因になっているんでしょうね。
綾瀬:そうだと嬉しいです。
月雲:私の場合、他のアーティストの楽曲を聴いたり、好きなアイドルのステージを観たりしているうちに、心を込めて歌うことの素晴らしさを再認識したんです。だから自分もそうやって歌えるようになりたいなという気持ちで歌っています。
青柳:昔の私って、とげとげしかったんですよ。自分が良いと思うものを単純にぶつけるというか、自分の気持ちをあまり込められていないときもあったんです。でも今は違います。歌っている自分を俯瞰的にとらえることもありますし。でもそればっかりでは良くないとも思っています。少しだけ大人になったのかもしれませんね(笑)。